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左遷の鬼──異世界に追いやられたモブ社畜最強説──社内のカスどもを俺は蹴散らすぜ  作者: 猫目少将@「即死モブ転生」書籍化
7 シュヴァラ王女の秘められた冒険

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7-8 吉野さん、本当にいいんですか。レナと。

「もうご主人様とエッチできるよ、ボク。今晩!」


 いやそんなこと言ったってなレナ。今晩ってのはアレだろ。お前タイミング最悪だ。今俺の後ろには、レナ言うところの「恋愛指数ヒャクパー超え」状態の吉野さんが立ってるんだぞ。


「レナちゃん、成長したのね」

「そうだよ吉野さん。もうボクご主人様とエッチなことできるよ」

「黙れレナ」


 本当に、こいつTPOってのわからんのか。普段は頭いいくせに。いくら成長が嬉しいからって、誰彼構わずエッチエッチ叫ぶなっての。


「そう……」


 誰にともなく呟くと、吉野さんは、ベッドの縁に腰を掛けた。


「平くんも座ったら」

「は、はい」


 促され、俺は吉野さんの隣に座ったよ。まあくっつくのもアレなんで、ちょっと離れてだけど。興奮してるせいだろうが、レナは立ったままだったがな。不思議そうに、自分の体を撫で回したりしてる。


「不思議よね。半年前までは私、平くんのこと知りもしなかったし、もちろん自分が異世界に行くなんて夢にも思わなかった」

「そうですね吉野さん。俺もです」


 四月の定期人事異動で俺と吉野さんは「三木本Iリサーチ社」――つまり本社ビルからも追い出された「ボロ雑居ビル」一室にあるトンデモ異世界子会社――に左遷された。事実上、たったふたりの社員としてな。


 それからふたりで冒険を重ね、もう梅雨が明けて盆前だ。なんか人生で一番いろいろあった数か月だった気がするわ。


「異動が打診され平くんの人事資料を初めて見たとき、こんな破天荒な子が部下で、うまくやっていけるんだろうかって悩んだのよ。私」


 そういや、初めて会ったとき、眼鏡もせずに俺の前で虚勢を張ってる雰囲気だった。こういう理由だったのか。


 まあ俺は、やりたいことをやり通し、妄想タイム確保のため残業休出極力拒否だった。そのせいであらゆる上司からの評価ボロカス。どこでも煙たがられて定例人事の度に追い出され、たらい回し状態だった。異動の季節じゃないのに叩き出されたりもしたからな。


 その社内履歴を読めば、誰だってドン引きしただろうけどw 多分社内ダントツの低評価だし。


「それなのに私、今ではこんなに……」


 言葉が途切れた。


 不思議な雰囲気がこの部屋を包んでいた。なにか話すとそれが壊れちゃいそうで、俺は黙っていた。あのお調子者のレナでさえ、静かにしてたくらい。あいつも感じてたんだろうさ。


「レナちゃんがサキュバスなのは、仕方ないしね」


 突然口を開いた。


「使い魔と主人の関係に口を挟む気はないわ。だってそういうものだし。私だってタマちゃんとの間には、強い心の繋がりがあるもの。平くんとレナちゃんだって同じでしょ。……ましてサキュバスだし。でも……」


 すっと体を寄せてくると、俺の手に自分の手を重ねてきた。


「でも私だって同じ。平くんと強く心が繋がってるもの。そうでしょ、平くん」

「ええ……」

「なら私も、平くんともっと強く繋がりたいと思ってもいいよね」

「それって……」

「心だけじゃなくて、もっと強く」


 くたっと力が抜けたように、俺に体を預けてきた。風呂上がりのいい香り。ちょっと火照った顔で、唇が俺を待っている。


 ちらりと見ると、レナは黙ったまま俺達を見ていた。もう瞳がNGとは言ってない。俺を見て、かすかに頷いて。


 もう辛抱堪らなくなった俺は、吉野さんを抱き寄せた。そのままキスをする。柔らかな唇が、俺を受け入れた。


 どのくらいだったんだろうか。とにかく長いような短いような不思議な時間が過ぎ、俺は唇を離した。


 吉野さんの唇がわななくと、熱い吐息が漏れた。


「平……くん」

「ご主人様」


 レナが反対側に座ってきた。


「ほら。ボクも」


 俺の顔を自分のほうに向けさすと、口を着けてきた。


「んっ……」


 レナらしい、元気なキスを受けている間、吉野さんは俺の体に手を回してじっとしていた。


「ご主人様、大好き」


 唇を離すと、レナが呟いた。嬉しそうな声だ。


「ボクの服、脱がしてもいいよ。等身大のボクの裸を見るの、初めてだよね」

「あ、ああ……」


 本当にもう、雰囲気もへったくれもない奴だな。しっぽりした吉野さんと大違いじゃん。


 それになんだ。あーもう知らん。なるようになれだ。


「平くん……」


 レナの服に手を掛けると、吉野さんが俺をいっそう強く抱いてきた。


「私も……脱がせて」


 おいおい。


 なんだこれ。俺どうなるんだ。まさか今晩俺は童貞捨てるのか。


 それももしかして、俺のことを好きな女、ふたり相手に……。

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