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左遷の鬼──異世界に追いやられたモブ社畜最強説──社内のカスどもを俺は蹴散らすぜ  作者: 猫目少将@「即死モブ転生」書籍化
2 第二の使い魔、または第三の使い魔

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2-4 課長のマンションにお泊まり

「ハイエルフを召喚するっていうの、ご主人様」

「ああそうさ」


 レナは上を向いてなにか考え始めた」


「いいかレナ。ハイエルフは、俺に残された最後の使い魔候補。自然を読む力はトップクラスだろ。そいつに本当に安全な方角を決めさせて、回り道しながらでもにじるように遺跡に進めばいい」

「でも平くん。ハイエルフは高レベルモンスターだから、召喚主の言うことを聞かないって言ってたでしょ。場合によっては小間使い扱いとか」


 たしかに吉野さんの言う通りだ。だからこそこれまで避けてきたわけで。


「レナ、どう思う」

「うーん」


 レナは唸った。


「……ご主人様のレベルなら、そろそろ呼んでもなんとかなるかもしれない。ちょうどどっちか迷うくらいというか」

「ならやってみようや。ドラゴンロードんときみたいに、お眼鏡にかなわなくても、いきなり殺されるとかはないだろうしさ」

「たしかに」


 タマが言い切った。


「ハイエルフは高貴な種族だ。召喚主にはある程度、礼儀を持って接してくれるはず。……ただまあ、バカにされたりはしそうだが」


 なんかしらんが、楽しそうに含み笑いしてるな。嫌な使い魔だ。


「ハイエルフがモンスターのいない方向を教えてくれて、そのまま行けちゃったらそれでもいいし。それでいよいよ駄目となったら戻っても、今度こそ言い訳が立つわね」

「そうです吉野さん、ハイエルフまで用いて道を探って駄目だったら、王だって納得でしょ」

「まあね」


 上を向いて、吉野さんはなにか考えていた。それから急に俺に視線を戻した。


「ところで今晩泊まっていく? 平くん」

「えっ……」


 絶句した。


「そうですね」


 晩飯に誘われたときから、考えんでもなかった。というか先程から実は迷っていた。


 俺はレナを見た。レナは、使い手の俺にだけわかる微かな表情で、やめておけと伝えてきている。どうする……、俺。


「泊めてもらおうかな」


 レナが目を剥いた。黙ってはいるが。


「朝早く、一度自分の家に戻ります」

「そう」


 なんとなくうれしそうだ。


「じゃあ後でお風呂ね」

「ええ」


 泊まると決めたからか、その後の飯はあんまり覚えていない。とにかくみんなで楽しく食事を終えて、俺は風呂に誘われた。


「ご主人様、どうするのさ」

「わからん」


 いつもどおりくっついてきていっしょに風呂をもらっているレナが、口を尖らせた。


「ご主人様の初めては、ボクの予約済みだからね」

「うるさいなあ、お前。成り行きだ、気にすんな」

「でも……」


 長ーく続くレナの愚痴を聞き流しながら、俺は風呂場を見回した。分譲マンションだからか、バスルームは立派だった。


 なんての、モニターとかあって、いろいろ調節したり動画観られたりするわけよ。こんな部屋に住んでたら、俺毎日風呂場で深夜まで妄想に耽りそうだ。エロいビデオだって多分観られるだろうしさ。


 吉野さんが裸で乱入してきたらどうしようかと思ってたけど、残念なことにそれはなかった。


 俺達の後でタマと風呂を使った吉野さんは、気楽なルームウェアに着替えている。パジャマというのとは微妙に違うが、多分これ、そのまま寝るやつだ。


「化粧落としててごめんね」

「いえ」


 きれいですと言いそうになって、口をつぐんだ。なんかきっかけになりそうだったから。


「さて、あたしはどうする。一緒に寝てもいいのか」


 タマが口にした。


「いいのよタマちゃん。みんなで寝ましょ」

「そうか。こっちの世界はどうにも馴染めなくてな。でもパーティー仲間全員いるなら、野営と同じだ。むしろ寛げる」


 珍しく、笑みを浮かべている。そういや、タマはあんまりこの世界には現れないと聞いている。


 ――良かったのか、悪かったのか。


 俺は心の中で溜息を漏らした。四人で雑魚寝となれば、おそらくだがエッチな展開はない。残念な気もするが、まあいいや。多分吉野さんは、いつでも俺の彼女になってくれる。なら焦る必要はないさ。

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