3-9 怨念素
「それはつまり……邪神が吸い取ったということですか」
タマゴ亭さんが眉を寄せた。
「……自らの力とするために」
「そうであろう」
頷いた。
「きやつは収集した怨念を熟成し、自らの身体と配下を錬成しておるのだ」
「邪神を倒すということは、怨念を討滅するということですよ、平」
ペルセポネーが補足してくれた。
「つまり死人の無念を晴らすということ」
「……だからなんだよ」
「要するに、死人を成仏させろというわけか」
サタンが唸った。
「怨念は本来、冥界で時間を掛けて消えていくものなのです」
ペルセポネーは、溜息を漏らした。
「なるほど。それでこそ『成仏』だもんな」
「しかし短時間、いえ瞬時に怨念を分解する方法があります」
「そんなことが……」
「怨念は渦巻くものですが、その本質は素粒子です」
「素粒子……ってニュートリノとか、光子とか、そういう……奴か? 物質を構成する微細な基本要素みたいな」
唐突に物理学上の概念が出てきて戸惑った。冥王や冥界の女王の口からだからな、これ。
「怨念素です」
「怨念……素……」
「それを対消滅させなさい、平。その……」
ペルセポネーが手を伸ばすと、俺の懐が輝き始めた。
「以前渡した私の心の一部、そのペルセポネーの珠で」
★今回、短くてすみません。
どうしてもここで切るのがちょうど良かったもので。。。