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5-9 第二階層、完全制覇

「ぐうおーっ!」


 絶叫が轟いた。俺の剣は、クローラークイーンの喉笛を貫き通している。エンリルはドラゴンの杖を振り回し、炎で周囲のクローラー共を牽制している。


 明滅する炎で、剣に貫かれたクローラークイーンの頭が暗闇に浮かぶ。頭だけで直径一メートルはある。左右に開いた牙が、なんとか俺を食い千切ろうと、左右にカチカチ動いている。


「マナに還れっ!」


 俺の体重を重しにして、短剣でぐりっとえぐる。鈍い手応えと共に、喉の奥の器官をぶち切ったのがわかった。


「おおーっ……おっ」


 叫びが途切れると、ふっと体が軽くなる。猛々しく起こされたクイーンの体が、倒れ込みつつある。


「ご主人様、跳んでっ!」


 レナが胸を叩く。


「体に潰されちゃうっ」

「やっ!」


 剣を杖代わりに、懸垂するようにして離れた。剣は手放している。


「平ボスっ」


 落下した俺の体は、タマに抱き取られた。すぐ脇にクイーン胴体が倒れ込む。地面が揺れ、轟音が響いた。


「気を抜くなっ!」


 叫ぶと、野郎の喉からバスカヴィル家の魔剣を引き抜く。


「まだ雑魚がてんこ盛りだっ」

「ボス、吉野ボスのところに戻ろう。守らないと」

「わかってる」


 俺達は駆け出した。


「だがどうやら、もう余や平の勝ちのようだのう」


 周囲の雑魚を燃やしながら、エンリルが大声を上げた。


「見よっ。敵は総崩れだ」


 たしかに。司令塔を失ったせいか、先程までのような組織的攻撃が消えている。ただただでたらめに突っ込んできては、吉野さんたちに個別撃破されている。興奮しているせいか同士討ち……というかクローラー同士で噛み合っている奴までいる。


「行くぞっ。掃討戦だ」

「おう」

「任せよ、平」


 吉野さんたちを取り囲む多数の敵に向かい、ときの声を上げながら、俺達は突っ込んだ。


          ●


「よし」


 最後の一匹の頭に、俺は剣を突き刺した。もう地面に横たわり、動きもしない。モンスターがマナに還る虹色の光に周囲は包まれ、神々しいくらい。タマとエンリルはハイタッチをしている。


「暗くて見えない。自己申告しろ。誰か怪我したか。毒液は大丈夫か」

「平さん、少し毒を浴びました」


 エリーナの声だ。


「でも胴体で防具の上です。わずかに痛むだけ」

「あたしもだ、ボス」

「俺達を守るため、タマは最前線で肉体攻撃してたもんな」

「すぐに治療するね」


 バッグから吉野さんがポーションを取り出した。キングーやキラリンが、手際よく負傷者を治療していく。このあたりももう、すっかりシステム化……というか手慣れた作業になった。


「あたしも手伝うね。とっておきの治療薬持参してきたし」


「まっくらくん」をバッグにしまうと、マリリン博士はなにか取り出した。


「ついでに少し、皮膚のサンプルもらうけど。ぐふっ」


 まあいいや、そのくらいなら。俺の嫁の卵子取るとか言われたら嫌だけど。


「治療しながら聞いてくれ」


 暗闇を、俺は睨んだ。


「今日のうちに、第二階層を制覇する。敵が消えたからな。次階層の入り口……というか下り階段だか道を見つけ、第三階層まで下りる。第三階層入り口に着いたらキラリン、マーカーを打て。それで今日は撤収だ。第三階層は見て様子を探るだけ。先には進まない。一日か二日、要するに疲れが取れるまでは休養。それから第三階層攻略に挑む」

「いいわね、平くん」

「よい戦略じゃのう」

「平ボスの命令なら、なんでも従う」

「お兄ちゃん、マーカーなら任せて」


 口々に皆、賛同してくれる。


 こうして俺達は第三階層に進んだ。ここでとんでもないことが起こるとも知らず……。

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