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3-3 マリリン博士、異世界初上陸

「いやだ。マジこれ!?」


 海竜島に転送されたマリリン博士は、俺のパーティーを見て大喜びだ。


「話には聞いてたけどさあ、天使とのハーフに魔王サタン、それに獣人とダークエルフ、バンシーとか、奇跡のメンバーじゃない」


 意気揚々と、全員の髪の毛を抜いてサンプル袋に収めてゆく。この程度なら許せる。全員の卵子を採取するとかじゃないからな。おひきずり白衣のマリリン博士がサンプル袋を大切にしまっていくのを、見て見ぬふりをした。まあいいだろ。


 島長ヴァンを始めとする海竜島の面々は、ドン引き気味だ。だがまあ連中には意味もわからんだろうし、まあいいや。


「はあー……。あたしのホムンクルス作製がはかどるわー」


 博士はもう大喜びだ。


「毛髪からDNAを抽出して培養し、平くんの冷凍精子で受精させないと」

「ホムンクルス関係は禁止です」


 一応止めておかないとな。でないと俺、いずれたくさんの嫡子を認定する羽目に追い込まれそうだし。


「遺伝子分析までに留めて下さい。いやマジで」

「ええーっ。それじゃつまらない」


 知らんわ。アホくさ。


「平殿」


 島長ヴァンは呆れ気味だ。


「この御方が、魔の海攻略の切り札ということですかな」

「ええそうです。彼女の発明品を使い、巨大海藻を俺が根絶やしにします」

「どのような発明品で」

「『オキシジェン・デストロイヤー』よ、うふっ」


 遺伝子サンプルを大量入手して、博士はうきうき声だ。


「『沖資源でトロ嫌』ですか。おいしい部位なんですがね」


 なんか勘違いしてるな。


「まあわしら田舎者にはわかりそうもないですな。お任せします」


 投げた。まあそりゃそうか。


「では行きましょう、マリリン博士」

「神様にもらったとかいう船でしょ。謎の動力で動く。楽しみだわ-。センサー設置するからね、動力解明用の」

「好きにして下さい」


 もうこの人は放し飼いしかないよな。


          ●


「どう、平くん」

「はあ……」


 マリリン博士は俺の間抜けな姿を見つめている。得意満面だ。


「なんか、体が動きません」


 女神ペレ号の甲板上。博士自慢の大気圧潜水服を、俺は着させられている。いや着るというより潜り込んだ感じだが……。まあ、よく言ってドラえもん体型。悪く言えば呪いの藁人形がアレルギーでむくんだ姿だ。


「あーそりゃ、総金属製で重いからね。深海の水圧に耐えるためだから、仕方ないんだわ」


 博士は豪快に笑っている。


「海に入れば大丈夫。アルキメデスの法則に従って、体感重量は減るから。ちゃんと動けるよ」

「ならまあいいっすけど」

「でも博士、なんで平くん、素っ裸なんですか」


 吉野さんは不安顔だ。


「パンツくらい穿かせてあげても……」

「この潜水服は、海上からの酸素供給が不要なタイプだからね。その代わり、平くんの生命エネルギーが必要なわけよ」

「はあ……」


 困惑してるな。まあ吉野さん文系だし、科学関係はあんまり詳しくない。つっても、理系の俺でもマリリン博士の戯言ざれごとはさっぱわからんのだが……。


「なかなか似合うのう、甥っ子甲よ」


 小さな胸を張って、サタンはごきげんだ。魔王ならではの魔力でここまで海上の藻類を焼きながら進んできた。自分の力で事態を解決できたのが嬉しいんだろう。魔力継承に失敗して母親を失った、暗い過去があるし。


「ここはもう、魔の海の謎海藻が生えておる真上だ。そろそろ始めてはどうだ」

「平さん、僕もここで母に祈っておきます。平さんが無事大願成就するようにと」


 天使ハーフであるキング-は、真剣な瞳だ。まあこいつは真面目だからな。


「エリーナ、準備はいいか」

「はい平さん」

「成否はお前の働きにかかっている。頼んだぞ」

「わかっています」


 顔を引き締めた。


「大恩人平さんのご期待に、必ずや応えてみせます」


 作戦はこうだ。俺が船上からクレーンで吊るされて海中に入る。海底まで約三十分。岩に固着する大海藻の根の直近で、俺が「オキシジェン・デストロイヤー」を起動。海藻細胞を破壊し尽くして帰還する。


 だがこいつは海藻といっても意識を持っていると思われる。なんせ迷い込んだ船を全部引き込み動けないようにして船員を死なすからな。当然、俺を絡め取って殺そうとするだろう。


 そこでエリーナだ。水中でもバンシースクリームが効くのは確認済み。「ゾディアック」と呼ばれる海上の小型ゴムボートに待機したエリーナは、俺が海底の定位置に到着するまで、海に顔を突っ込んではバンシースクリームを放つ手筈になっている。それで海藻の動きを封じるわけさ。


「ボクもついていきたいな、ご主人様に……」


 吉野さんの肩に留まって、レナはさみしげだ。


「ボクならその服の中に入れるのに」

「気にするなレナ。俺ひとりで充分さ」


 なにかあったときに、レナまで巻き込むのは嫌だからな。これなら最悪、死ぬのは俺だけで済む。


「平ボス、クレーン操作は任せておけ」


 愛おしげに、タマが俺の手を撫でた。つってもソフトボールのような金属球体だけど。


「頼むぞ、タマ」

「あたしも見ている」

「おう、ケルクス」

「お兄ちゃん、あたしもタマを補助するからね。機械のことは全部検索したし」

「キラリン」

「あーもう」


 マリリン博士は手を腰に当てた。


「あんたらいつまでいちゃついてるのさ。あたしまで発情しそうだわ」


 呆れたように、片方の眉を上げてみせた。


「とっとと始めるよっ」



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