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3-1 「魔の海」攻略の作戦会議

「どうしようか、平くん」


 吉野さんは、首を傾げて俺を見ている。


「そうっすねー……」


 海竜島旅籠かいりゅうじまはたごの一室。歓迎の宴がすべて終わった深夜、俺のパーティーはテーブルを囲んでいた。全員、俺の言葉を待っている。


 その晩は、泊まりの出張扱いにしたわけよ。島一番の宿で歓待すると島長ヴァンに言われては、逃げるように現実に帰るわけにはいかないからな。それに連中の目の前で消えたり出たりすると、あらぬ誤解を受ける危険性もあるし。


「モンスターなら戦えばいいんだけど、海藻はなー……。タマ、潜って大元から切り離すとか、できると思うか」

「浅い海なら、なんとかなるだろう。あたしとケルクスなら息も持つ。……だが話では、深海から伸びているということだった。つまり無理だな」


 あっさり言い切る。変に忖度そんたくしないのは、獣人タマのいいところだ。頼りになる。


「婿殿、それに相手はただの海藻ではないだろう。潜って切ろうとすれば、おそらく絡みつかれる」

「モンスターだってのか、ケルクス」

「一種のモンスターと思って間違いないだろう」

「ご主人様、樹木でもね、長く生きるうちにマナが蓄積するから、意識を得てモンスター化することがあるよ」


 レナが言うなら、間違いはなさそうだ。


「エリーナ、お前の水中バンシースクリームでどうよ」

ひるませるのはできると思います。……でも多分そこまで。枯らすとかは……」

「キングーの天使力とか、サタンの魔王力とかでも無理か」

「甥っ子甲よ、海面まで広がった部分については、地獄の業火で焼き払ってやる」


 サタンは意気軒昂だ。小さな胸を張っている。


「だから根っこの真上まで近づくことは可能だろう」

「問題は、そこからどうやって深海の大元を叩くかですね」


 キングーは眉を寄せている。


「母上に訊いてみましょうか、平さん」

「天使なあ……」


 また天界に上り、キングーの母親に尋ねるってのは、たしかにひとつの手ではある。退治してはくれないだろうが、倒すヒントくらいなら、なんか知ってそうだし。


「ねえ平くん」


 テーブル上の俺の手を、吉野さんがそっと握ってきた。


「あちこちで情報集めしてみたらどうかな。図書館長のヴェーダさんとか、エルフやダークエルフの国王とか」

「久しぶりに例のドワーフの穴に行って、族長とか冥王ハーデスにも会ってみるか……」


 あとは向こうの大陸でドラゴンを呼び出すとかな。


「でもどうかな、ご主人様。みんな、こっちの大陸についてはあんまり詳しくはなさそうだよ」


 レナは、俺の肩にとまっている。


「だよなー。この大陸まで俯瞰ふかんできそうなのは、天使と冥王くらいか……」

「ねえお兄ちゃん」


 テーブルのクッキーを、キラリンが口に放り込んだ。


「もぐもぐ……。ママはどう? 頼りになるよ、こういうとき」

「そうよ平くん。マリリン博士なら、なにか装置を作ってくれるかもしれないわ」

「なるほど……」

「実際、女神ペレ船に、転送ポイントを作製してくれたしな」


 タマも頷いている。


「いい考えやもしれん」

「というか、他に名案もなさそうだ」

「そうだねー」


 なんだ。みんな割と前向きだな。しかしなあ……。


「アレ博士だからなー……」


 マリリン・ガヌー・ヨシダ博士か……。天才ではある。だが行けばまたぞろ、どうせ俺で怪しい実験したがるだろうし。貞操帯巻いてても抜かれたからなあ……。


「そんなこと言ってる場合じゃないよ、ご主人様」


 珍しく、レナが強く言い張った。


「トリムを助けたいんでしょ。トリムはご主人様のために命を捨てた。ご主人様、トリムの使い手じゃん。責任があるよ。それに……ボクだって、早くトリムの笑顔を見たいよっ」

「そうか……そうだな。悪かった、レナ」


 たしかに。トリムのためだ。俺ひとりの悲劇(笑)くらい、どうでもいいわ。


 見回した。全員、レナに同意の表情。……これはもうやるっきゃないか。


 まあいいや。一度抜かれるくらいで死ぬわけじゃなし。俺が我慢すればいいだけだよな(泣)


 それに、抜かれると決まったわけじゃない。吉野さんを同行させれば、いくらなんでも目の前で俺のパンツ脱がしてしごくとか、するわけないし。


 ……するわけないよな。


 俺の脳裏に、不安の渦が広がった。

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