表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
346/444

pr-1 夜明け

 マンションの小寝室には、情事後の淀んだ空気が漂っていた。


 横たわる俺に絡むようにして、裸の女が四人、荒い息をついている。汗まみれで。等身大になったレナに吉野さん、それにタマとケルクスも。明け方まで激しく交接を繰り返し、すでにカーテンからは夜明けの太陽が遠慮がちに顔を覗かせている。


「平くん……激しかった」


 裸の胸に、吉野さんがちゅっと唇を着けた。


「それに黙ったままで……怖かった」

「……すみません」

「気が晴れた?」

「……」


 俺は答えなかった。暗い夜が辛すぎる。トリムが居なくなった欠落感で、心が押し潰されそうになるから。四人に頼んで同衾してもらったが、最中はともかく、こうして終わってみると魂の大穴に変化はない。


「ご主人様、泣いちゃダメだよ。トリムだって、そんなご主人様を望んでない」

「泣いてなんかいないさ」


 実際、ちゃんと晩飯だって食べているし、風呂で体だって洗ってる。


「泣いてるよ、心が。ボクわかるもの」

「婿殿、あたしも感じるぞ」

「あたしもだ」


 ケルクスとタマが、俺の体に浮かぶ汗を舐め始めた。


「きれいにしてやろう」


 ふたり両側から舐め続ける。


「トリム……」


 枕元、「トリムの珠」を手に取ると、撫でてみた。


「必ず復活させてやるからな、お前を」

「そうよ平くん、それでいいの。辛さを忘れるのよ。たとえいっときのことでもいい。人間は、そうやって立ち直っていくのよ」

「吉野さん……」

「平くん。今日も休むの、会社を」

「ええ。仕事する気力が無くて。とてもじゃないけど……。それに……エンリルに呼び出しを受けてるから」


 エンリルに呼び出されるなんて、初めてのことだ。いつもはこっちが呼び出しても、ドラゴンロードのプライドがどうのこうので、なかなか言うこと聞いてくれないのに。


「あら、異世界行くなら出社ってことにすればいいのに」

「なんかそういう気分じゃないんです。今日は、エンリルの用事だけ済ませて帰ります」

「そうね。出社して異世界転送装置のお世話にならなくても、キラリンちゃんの力で異世界に飛べばいいものね」


 よしよしと、俺の頭を撫でてくれる。


「なら私も異世界に行こうかな。私はレナちゃんと一緒に、図書館詣でね」

「そうだね吉野さん。ヴェーダさんから、トリム復活の魔法について、もっと詳しく聞いておかないと」

「ではあたしは、ダークエルフ国王のブラスファロン様と魔道士フィーリー様に、別大陸の情報がないか尋ねておこう」

「それならあたしは、キングーやエリーナと共に、ハイエルフの里で情報集めだ」

「キラリン、大忙しだな」

「そうね。異世界に飛んだら、そこからみんな次々に送ってもらいましょう」

「俺は浜辺ですね。エンリルが例の海辺に迎えに来てくれるって言ってたし」

「そろそろ起きるか」


 タマが体を起こす気配がした。


「みんなの朝飯を作らないと。徹夜で眠いが、後で昼寝すればいい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ