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4-2 ミスリルの胸当て

「では、ミスリルの胸当てを作ればいいのだな」


 ウルク砂漠、秘密の地下宮殿。ドワーフ族長ナブーは、俺を見た。アールヴの里、そして邪の火山探索のため、まずは装備を整えようということだ。全員分の装備はあるが、ケルクスの分がまだない。


「そうだ。毎度頼んで悪いが……」

「なんの」


 俺を見上げて、握手の手を差し出してきた。


「平には、冥王ハーデスの軍勢を退けてもらった恩義があるでな」


 俺の手を、ぐっと握る。長年の鉱物採掘でごつごつした小さな手だが、温かい。


「パーティーの他の連中のように、ミスリルの鎖帷子くさりかたびらでなくていいのか」

「いや、あたしが胸当てに装備をコンバートする」


 タマが付け加えた。


「あたしは体術中心の前衛。チェインメイルは蹴りの威力を殺してしまうんだ」

「重くはないが、たしかに腿にまとわりつくのう」


 ナブーは、しばらくタマの体をじっと眺めていた。


「そして、タマ殿のチェインメイルを、このダークエルフ用に仕立て直せばいいのだな」

「そうだ」


 ケルクスは頷いた。


「よろしく頼む。ナブー殿」

「ハイエルフに続き、ダークエルフにも鎧を仕立てるとか……」


 ナブーは苦笑いを浮かべた。


「亡き王が見たら、目を丸くするだろう。時代は変わるとな」


 ドワーフはエルフとの仲が微妙だしな。


「すまん」

「頭を下げんでいい。ただの冗談だ」


 ケルクスの腰を、ポンポンと叩いた。普通なら肩でも叩くところだろうが、ドワーフは小さいからな。


「体を測らんでいいのか。……あたしはタマと体型が違う」

「ドワーフの技を甘く見るでない。ひと目見れば、体のサイズなどわかる]

「そうなのか。……まあ婿殿もあたしの体を見て知っているし、男はそういうものなのかもしれないが」


 際どい台詞を口にする。いやケルクス、この場には吉野さんもパーティーも、全員いるんだが。……「裸を見て知っている」と言わなかっただけマシか。


「たとえば、そうだのう……」


 俺達を見回すと、ナブーは、端に立つキングーを指差した。


「キングーはまた胸が大きくなった。緩い服で隠していても、そのくらいはすぐわかる」


「それは……」


 恥ずかしそうに、キングーが猫背になって胸を隠した。吉野さん選びのスポーティーなブラと着圧シャツで胸を締めているんだが、それでもわかったか。


「わしらと暮らしておった頃は、どう見ても男だったのに。……まっこと、天使の亜人とは不思議なものだて」

「そのくらいで許してやってくれ」

「おう。すまんすまん。ドワーフは豪胆でのう。細やかな恥じらいなど、あんまりわからんでな」


 タマが、自分のチェインメイルの入ったバッグを、ナブーに手渡した。


「これがあたしのだ」

「確かに預かった。……次の満月に取りに来い。それまでに仕立て直し、ブレストプレートも仕上げておいてやる。プレートの細工は楽しみでな」


 頬を緩めた。顔を覆うぼうぼうの髭の下だからよく表情がわからんが、瞳は笑っている。


「複雑な文様を彫り込める。鎖を編んで作るチェインメイルでは不可能だからな。ドワーフの彫金技術の見せ所だわ」

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