カレー
少し短いです
帰宅後。
俺は手に持つカゴを長嶋の前に叩きつける。
「さて」
「ふぇ?どしたの突然」
「いやな?少し聞きたいことがあっただけなんだが」
「な、なに?」
少し警戒の色を滲ませて聞き返してくる長嶋。
「洗濯をしようと思うんだが。下着は分けるべきか?」
「あーいいよ別に。私そういうの気にしないタイプだし。ていうか君なら何も聞かずに洗濯機にぶち込みそうだけど」
俺そんな風に思われてんのか……。
「昔父さんの下着と妹の下着一緒に洗濯しちまった事があってな……。それはもう凄まじい怒り様でな。一応聞いておこうと思って」
「あぁそういう事ね。さっきも言ったけど一緒に洗ってくれていいよ。乾かすのは私の部屋でいいよ」
「助かる」
と言うのも、コインランドリーが開くのは朝の10時なので朝から洗濯をするという選択肢は取れないのだ。
と、思っていたのだが。
「乾燥機あるやん……」
しかもタダで使えてしまうとか。この辺のサービス良すぎやしないか?
「ただいま」
「おかえりぃ」
「そう言えばコインランドリーに乾燥機あったぞ」
「マジか。でも余計お金かからない?」
「それがなんとタダだったんだよなぁ」
そう言うと長嶋はビックリした顔で、
「おぉ……この辺のものはタダが多くてありがたいけどなんか裏がありそうで怖い」
そうやって無闇にフラグ立てるなよ……。
「さて」
と、洗濯物を畳むために腰を下ろしたのだが、
「ちょ、ちょっとまって」
「なんだよ」
「これ、全部君が畳むの?」
何を言ってるんだこいつは。
「そんなの当たり前だろう」
「私がやるよ!うん!君には任しておけない!」
「なんでだよ」
すると長嶋は少し顔を朱色に染め、
「君が、私の下着で何をするか分かったもんじゃないしね」
あぁそういう事か……。信用ないのな、俺……。
「じゃあよろしく頼むわ」
(でもそうするとアイツが俺のパンツ畳むことになるんだよな……)
そう考えると少し恥ずかしくなってきてしまう俺だった。
その日の夕方。突然長嶋がこんな事を言い始めた。
「樹生君!今日は私もご飯作るの手伝うよ!」
「……え?本気で言ってる?」
「本気も本気!大真面目に言ってるよ!で、今日は何を作るの?」
「カレーだ」
まぁコイツでも作れないこともないな……。
「だ、大丈夫?私でも作れるかな……」
「作れなくもないぞ」
「やったー!まずは何をすればいいの?」
「まずはだな……」
こうして始まった2人での料理なのだが中々上手くいかない。野菜を切る時の手付きは危なっかしいわどこから取り出してきたのかチョコレートをぶち込もうとするわ、挙句の果てによく分からない調味料まで入れようとしてきた。
「……あのなぁ、お前料理のコツ知ってるか?」
「わ、分かんないけど」
「ならば教えてやろう。レシピ通りに作る事だよ……!」
「うっ……」
目を><にして痛いところを突かれたと言った顔をする長嶋。
「なんか色々入れた方が美味しそうじゃん?」
「闇鍋じゃねぇんだから……。とにかくレシピ通りに作る事!今回はレシピが無いから俺の言う通りに作る事!良いですか?」
「は、はい分かりました……」
そうしてなんとかしてカレーが出来上がった。しかし1つ忘れている物がある事に気付いた。
「……やべぇ米炊いてねぇ」
長嶋に掛かりっきりでその存在を忘れていた。
「はいはーい!私が炊きまーす!米を研いだことならあるから任してよ!」
なら任せるとするか。
1時間後、炊飯器の炊きあがりの音で目が覚めた。どうやら疲れて寝てしまっていた様だ。
「お目覚めですかな?」
「……あぁ、おはよう」
「ご飯も炊けたし、早速食べようか!」
「そうだな」
「いただきます」
「いっただっきまーす」
いつもより弾んだ声の長嶋。よっぽどちゃんとした料理が出来たのが嬉しかったのだろうか。
「ん!おいしい!」
「美味いな」
「えへへ〜頑張った甲斐がありますね〜」
トロンとふやけたような笑みでこちらを見てくるのだが正直可愛くてめを逸らしてしまう。
「ま、まぁ俺も手伝ったしこれくらいは出来て当然だな」
「なによそれぇ〜。素直に褒められないんですか〜?」
……なんか今日はグイグイ来るな……。
「ん、よく頑張りました!」
「えへへ〜ありがと」
その日以来、毎日飯を作るのを手伝ってくれる長嶋だった。
しばらく忙しくて2日に1回投稿になりそうです。