始まりの日
「すいません!!!!!!」
驚きを隠せない。まさか隣の部屋との壁が抜けてしまうなんて。15年生きててもそんな経験ないしそんな話も聞いた事が無い。とりあえずどうしてこうなったのか聞いてみるか。
「で、どうしてこうなったの」
「えーっとですね、端的に説明するとつまづいて壁に思いっきりぶつかったら壁ごと倒れちゃいました……」
「そんな事ってあるんかいな……」
これが相撲取りとかならまだ理解できるけど155〜160位の華奢な女の子が1人で?それこそ有り得ない話だ。なんか裏がありそう……。
「あのぉ……やっぱり怒ってますか?」
ずっと俺が思案顔していたからか不安気に聞いてくる。
「あぁいや、考え事してただけだよ。あとこの事は一応大家さんに言っておかないと」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「どうした?」
「こ、この事大家さんに言っちゃうんですか?」
「そうするしか無いだろう」
そうでもしないとこの壁問題は解決しない。
「お願いです!この事は大家さんには言わないで下さい!」
「どうしてだ?」
「だ、だってこの事大家さんに言っちゃったら弁償ルート確定ですよね?私両親から最低限の仕送りしかしてもらってないのでとてもこの壁を治すことの出来るお金はだす事が出来ないです……たぶん……」
まぁたしかに壁を治すとなるとかなりのお金はかかることだろうしなぁ……。
「お、お願いします!なんでも!なんでもしますから!」
ん?
「あのさぁ……あんまりなんでもする〜とか言っちゃダメだぞ?世の中にはよからぬ事を考える奴だって居るんだ。自分の体は大切にしなよ。あと壁の件だけど……」
彼女がゴクリ……とする。
「大家さんには内緒にしとくよ」
そう言った瞬間、彼女の顔がパァァ……と明るくなっていく。か、かわいいなコイツ。
「あ、ありがとうございます!!!」
「壁は君の部屋に置いといてね」
彼女がブンブンブンと首を縦に振る。んな大袈裟な。ていうかコイツの名前聞いてねぇな……。俺も言ってないか。
「取り敢えずさ、自己紹介しない?俺の名前は灰田樹生。明日からあそこの山岸高校の生徒だよ」
「え、同じじゃないですか!というか同い年でしたか。タメで話しても良いですかね?」
「ああもちろん」
「ありがとう!えーっと、私の名前は長嶋水樹です。明日から宜しくね!樹生くん!」
い、いきなり名前呼びですか……。まぁこんな美少女に名前で呼んで貰えるなら願ったり叶ったりだけどね!
「で、この抜けちゃった壁どうするの?カーテンかなんか買ってきて仕切り作るか?」
そして2人でうーーんと考え、長嶋がこんな事を言い始めた。
「それならさ、いっその事二人暮らしってのはどう?部屋の広さは2倍になるし食費も折半で済むでしょ?」
「お、お前それ本気で言ってんのか?年頃の野郎と二人暮らしするって言ってるんだぞ?」
俺が女なら絶対にこんな事提案しないけどなぁ……。
「大丈夫!樹生くんがそういうやましい気持ちを私に抱いてる感じはしないし君なら信用出来るよ!それに私がなんでもするって言った時も大して反応してなかったしね」
うーーーーーん……。
俺がうんうん言ってると、
「ねぇ、だめ?」
と、上目遣いで聞いてくる。そ、それはズルいだろぉ……。
「仕方ねぇな……食費、光熱費は折半!一応仕切りは付けるぞ。着替えとか困るし」
「やったぁ!早速カーテンを買いに行こー!」
こうして、厄介な隣人との同棲(?)生活が始まったのだった。
……これからどうなんの?俺。