第九回
遅くなったので寝ます。また書きますので応援の方よろしくお願いいたします。
第九回
六月下旬、図書室の改装工事が行われた。
さかのぼること二日前の放課後。
図書室に来客があった。肩まで長い黒髪のきちんと制服を着こなしている女子だった。
「どうも、わたくし生徒会副会長の峰永杏樹と言います。今日はちょっと図書委員会の活動内容を記録したくて来たんですけど……」
いきなりサッカーボールが杏樹の顔面にドバンとヒットした。
「ブッ!!!!」
「あっ、すみません!」と、かなこ。
いきなり最悪だった。
梨子はかなこに「ちゃんと謝れ!ってか図書室でリフティングすなや」と、叱る。
「本当に申し訳ありませんでした」
「いえ、まさかこの図書室で突然サッカーボールが顔面にヒットするとは……。貴重な体験過ぎて、今回は大目に見ましょう」
「えっ、マジで?いいのかそれで?」
「あ、ありがとうございます」
「急に何ですが、一応様子を見学させていただいても?」と、杏樹は梨子に訊いた。
「委員長に訊いてくれ。わたしは責任者じゃない」と、梨子が言う。
「えっ、そうなんですか?」
その時、たまき先生が司書室からサッカーボールを持って出てきて、
「沖田さん、ボールが司書室に飛び込んできて、わたしの大事な喜器窯の花瓶、大破しちゃいましたよ」
「ええっ?!」と、かなこ。
・被害額9000円
マギーがやって来た。
「もうジューンだな、学生ども!」
「マギー、学校教育上では、高校生は『学生』じゃなく『生徒』だぞ」と、梨子が言う。
マギーは杏樹を見た。
「オッ、見たことアル顔ダナ。ツラ貸せやコラ!」
「どうも、わたくし生徒会の者です」
「生徒会室って、確か図書室の裏ニあるんじゃナカッタッケ?」
と、言って、マギーは反対側を指さした。
「裏はこっちです!ってか委員長は誰なんです?!」
杏樹は気持ちが高まった。
「すぐ来るから大声出すな」梨子が冷静に言った。
うおおおおおおおおお!!!!という叫び声とともに、ゆりえが居合刀を手に図書室に飛び込んできて、抜刀して振り回した。
たちまち六冊の本がバラバラになってしまう。
納刀したゆりえは、「すみません、テストの点が悪くて取り乱しちゃいました」
「おおおいっ!その本全部、神保町で買った超激レア本ばかりだぞ!」
梨子が取り乱した。
・被害額1260000円
杏樹は図書室を見回した。「居合刀にサッカーボール、それにキンパツ。ここは一体……」
「図書室です」と、かなこ。
* * *
いつの間にか図書室にいた関口と田嶋。
「なぁ、田嶋。ちょっと俺、夏美のことで相談があるんだが」
「いいぞー、三つ質問で二千円な」
「俺の相談に金取ろうってのか?」
「ああ、その通り」
「しかも高くないか、それ?」
「ちょっと高めにしてるけど、相場ぐらいだよ」
ちょっと沈黙のあと、
「んで、三つ目の質問は?」
「え?面白くねーよそれ!」
「それは質問じゃないね」
・精神的被害額52000円
* * *
「こんにちはー」と、つぼみ先輩も来た。
「今度こそ責任者?」と、杏樹。
マギーがつぼみ先輩のうしろに回り、
「今日は胸デカデー!ラッキーな日デスヨ先輩」
「ひゃっ!」
マギーの手がつぼみ先輩の胸に当たる。
梨子の蹴りが図書室の柱に炸裂する。柱にひび割れが走る。
「キンパツ、つぼみ先輩に失礼な態度はいい加減にやめろ。こうなりたくないだろ?」
「イエス・マム!」
・被害額77000円
「あ、あの~、一体誰がここの責任者なんですか?」
杏樹は図書委員たちを見回した。
梨子がゆりえを指さす。
「えっ?」と、ゆりえ。
「ちょっ、待ってくださ……」
慌てるゆりえは居合刀を上げてしまう。不注意で棚の上の花瓶を落としてしまった。
パリーン
「なぁっ!」
「何してんだよ?」と、梨子。
・被害額1200円
「で?誰が図書委員の代表なんです?」
「三年生はつぼみ先輩です」ゆりえ ↼ 「委員長はゆりえだろ」梨子
↓ ↑
「仕切ってるのは梨子ちゃんね」つぼみ先輩
無限ループ
………………。
生徒会副委員長なんだけど、なんだけど、マジ、キレたい!
今度は図書室の扉の向こうから声がした。
風紀の声で「オイ、何だテメェら。のぞきか?ストーカーか?扉の前でコソコソと」
「あ、いえ。違いま……」
風紀は外から扉ごと二人の男子生徒を蹴破る。
ドギ バガ
「怪しいヤツは罰する!!!!」
男子生徒二人は杏樹の手前まで蹴り飛ばされた。
「書記長の池神くんと生徒会長の井手くん!外で何してたん?」
「ぐっは……」
「あがっ!」
と、その前に風紀の蹴りに苦しむのが先だった。
「風紀、お前ドアごと壊すなよ」梨子が注意する。
「んお?ああ、スマンスマン。いつものコトだ」
・被害額35000円
二人の男子は立ち上がり、
「いかにも俺が生徒会書記長の池神達也、二年」
「そしてわたしがこの学校の生徒会長、二年の井手高広だ!」
風紀が二人を蹴って踏みつける。
「ウッセー、だから何だってんだよシバくぞコラ!」
どすどすどす
「ギャッ」「ぐわっ!」
「もうシバいている」と、梨子が言った。
「聞け!俺たちは峰永さんが図書室に一人で行って、心配で心配で!!」
「過保護なの?」と、つぼみ先輩が言った。
「峰永さん?」
「あれ?」
他人のふりをする杏樹。
そこに、関口の彼女の真鍋夏美がやって来た。
「雄く~ん」
「おお、夏美!」
「今日は何の日か当然知ってるよね?」
「お前の誕生日だろ?完全に記憶から消えてたけどもちろん覚えてたぜ。忘れてたことすら忘れてたけど、うん、覚えてっぞ!」
夏美は弓矢を出して言った。
「竜ちゃんは朝にはもうプレゼントくれたんだよぅ。そっか~、何か引っかかるなーって思ってたんだけど、そっか、覚えてたけど忘れちゃったんだー」
笑っていたが、彼女の眼は笑ってなかった。
すかさず関口に矢を連続で放つ夏美。
カンカンカンカンカン
矢は本棚をことごとく破壊する。
ダッシュで逃げ回る関口。
・被害額43000円
関口と夏美のチェイスを目の前に、かなこが手に持っていたサッカーボールを放してしまい、それが窓ガラスに当たって、ガシャーンと音を立てて割ってしまった。
「げげっ!」
いや、コレは不可抗力だよね?
・被害額6800円
思い出したようにマギーが、ブーメランを出してきた。
「カナコ、ちなみにワタシ、ブーメラン作って持っテキタんダケド」
「ちょっ、待て!それはヤバい!!」
マギーはブーメランを振りかぶった。
「ブーメランはマジやめろー!!!!」と、かなこが言うのも聞かずにブーメランは投げられた。
ガシャン
シーン………
「戻ってこんじゃん、オイ」
「ブーメランはオーストラリアの先住民が狩りやスポーツに使ってイタ民具ノ一つデース」
しばらくして、バリーン パリーン ドガーン バズーンと、様々な音が聞こえてきたあと、ブーメランはマギーの後頭部に直撃した。
「あ、戻ってきた!」と、かなこ。
崩れ落ちるマギー。
「マギー!!しっかり!」
遠くから「何だ何だ、さっきのブーメランは?!」「銅像や彫刻やトロフィーの数々をことごとく弾き飛ばしていったぞ!」などの声が聞こえてきた。
それを聞き、青ざめるゆりえ。
・被害額327000円
「なるほど、これが図書委員の普段の活動なのね」と、あきれた顔で言う杏樹。
生徒会長の井手も「図書委員の人は全員、明日の放課後、生徒会室に来てください」
「どうしてやろうかね、会長」と池神。
そう言うと、生徒会の三人は図書室を出ていった。
そして六月三十日、図書室再開日。
・被害総額1811000円
たまき先生が、「しっかし、よく生徒会が全部もみ消ししてくれましたよねぇ」と、感心していた。
* * *
本日の野良猫ミントのお言葉「みんな、何だかんだで停学にも退学にもならずに済んでヨカッタね!」
つづく
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