第三回
ネタが古くてスミマセン……どうしても自分感覚になってしまうので、トホホ。それでも読んでくださる人たちには感謝です。ありがとうございます!!では第三回、どうぞお楽しみください。
第三回
西鉄朝倉街道駅前・午後二時三十分
桜の花が舞い散る春、ゆりえは図書委員の仲間と一緒に福岡天神に行くため、待ち合わせ場所に来ていた。
さっそく来たのは、沖田かなこだった。
「待った?ゆりえちゃん」
「ヤッホー、かなこ!」
こんな軽い女子の挨拶。
「今日は天神のどこに集まるんだっけ?」
と、かなこ。
「三越のライオン広場だよ」と答えるゆりえ。
「アレ?もう一人忘れてなかったっけ?」
「そういえば……メリケンキンパツ、アンダードッグが一人」
そう言ってるうちに、そのメリケンキンパツ、アンダードッグが現れた。
「グドゥ、アフタヌーン!ヘイ、ガールズ」
マギーは声をかける。
「行きまショウ、天神へ!」
「マギーだけ遅刻!」と、ゆりえ。
「ソーリーソーリー、ヒゲソーリー」
「謝ってねぇぇぇぇ……」
三人は駅の入り口へと行く。
桜がキレイだった。しかも散りかけの桜の花びらが。
「チェリーブロッサム、キレイだねぇ」
と、マギーが言った。
すかさず、かなこが「ねぇ、知ってる?桜の落ちるスピード、秒速五センチメートルなんだって」
「ヘイ、カナコそういうの詳しいんダネ」
「そういうタイトルの映画で言ってたんだよ~。フッフーン♪」
「へ~」
その時ゆりえが駅の入り口に足を進めながら、
「フッ、実際に実験してみたら秒速二メートルだったらしいけどね。単位からして違うね」
「えっ!!」
かなこは絶句した。
「秒速五センチメートル?」と、マギー。
「そっ、いや……違っ、タ、タイトル変わっちゃうね。なんかゴメン」
ばつの悪そうに、かなこはマギーに言う。
* * *
西鉄福岡駅。
梨子と風紀の二人と待ち合わせしていたホームの向こうの改札口にたどり着く三人。
「あれ?ライオン広場に集合じゃなかったっけ?ま、いいや。先輩、こんにちはです~」
と、ゆりえ。
「よう!」と、梨子。
「つぼみ先輩とアホ男子二人はあとで来る」
マギーは出口につながる下りのエスカレーターの方へ行きながら、
「さて、せっかく福岡天神まで来たんだシ、メイドカフェの『天神スタイル』にでも繰り出しマスか」
「置いてくぞキンパツ。てか今どきメイドかよ」
と、梨子。
「んで、今日はココに何しに?梨子先輩」マギーは聞いた。
「本屋めぐりして図書室の参考にするんだよ。日誌ノートに書いただろ、オマエ」
「レアリー?」
マギーは日誌ノートを出して自分で読む。
「オー、イッツ トゥルー!」
「自分でメモって忘れんなよ書記。蹴るぞ!」
ゆりえが梨子に聞く。
「先輩、天狼院とジュンク堂書店、どっちに行くんです?」
「ん?ちょっと待て。え~と」
そう言いながら、梨子は財布を出して中を見た。
QUOカードを手に、カード加盟店を見る。その中にはジュンク堂の店名もあった。
「ジュンク堂だ!」
「え?今、どうやって決めたんですか?」
「細かいことは気にするな。ハゲるぞ!」
* * *
ジュンク堂書店・午後三時
「広―い!」と、かなこ。
「さすがのジュンク堂やね」
ゆりえも感心する。
さりげなく店内にBGMが流れる。洋楽だった。
マギーはすぐに反応した。
「オ!ロッド・スチュワート。この曲イギリスでは国歌より有名なんダヨネ」
「お前アメリカ人だろ?」
マギーはBGMに合わせて歌いだした。
かなこが恥ずかしそうに、
「ちょっと、恥ずかしいから歌わんでよ!」
しかし、マギーもサビ以外歌えずに止まった。
「アレ?このあと何だっけ?」
「歌詞知らんのか……アホだ」と、かなこ。
「ちなみにロッド・スチュワートはカバーで、『セイリング』はサザーランド・ブラザーズがオリジナルです、ハイ!」
ゆりえもそう言ってツッコんだ。
今度はスティングの曲が流れてくる。
「オッ、今度はスティング!サビがいいんダヨネ」
「マギー、もういいかげんに……」
かなこの制止も聞かずにマギーはまた歌い出す。
「だから歌うなって。声大きい!」
歌詞にエイリアンという単語が出てきたので、かなこは、
「エイリアンってあんたは……」
そこへ、風紀が現れた。
「マギー、お前はアメリカ人で、女で、ここは天神だぞ。何で『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』なんだ。え?」
しばし沈黙のあと、
「名曲は何デアレ、日本人だっテ歌うモンデショウ?」
「『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』は初登場八十四位だぞ?コケましたよ?」
「ジーザス!」
マギーは軽くショックを受けた。
「マジで?」
* * *
ゆりえは立ち読みしている梨子を見つけた。
「梨子先輩、ここにいたんですか」
「ゆりえか」
「いや~、どんな本見つけたらいいのか迷っちゃいますね~。先輩は何の本を?」
「別に、趣味の本だ」
そう言うと、梨子は手に持っていた本をゆりえの方に向ける。
『キック入門 THE KICK ムエタイ カポエイラ テコンドー 蹴りの専門書』
ゆりえはダッシュでその場から逃げ出した。これは梨子先輩の十八番、蹴りの本だ。
「オイ、本屋の中を走るなよ。でもあの脚力はなかなかだな」
* * *
いつも間にか関口と田嶋がジュンク堂書店に来ていた。
またしょーもない漫才を始める。
「なぁ田嶋、知ってるか?」
「何をだい?関口」
「福岡での発売は東京より二~三日遅れて店に並ぶってヤツさ!」
「そういや、新刊が当日に出てない時あるね。量も少ないし」
「九州って東京の売れ残りの残りカスしか送られてこないんだってよ。アッハハハ!」
「マジか~?そりゃ引くわ~」
その時、女性の店員が、
「あの……お客様、他のお客様のご迷惑になりますので……」
しかしさらに二人は、
「スミマセーン、この本くださーい」
「千百四十円になります。ポイント付けておきますね」
「じゃあ、二千円からで!カバーはいりません」
「二千円お預かりします。八百六十円のおつりになります。お確かめください。では袋に入れますね。またのお越しをお待ちしています。それではどうも……」
二人そろってせーので、
「「ありがとうございましたー」」
「あの、出禁にしましょうか?」と店員の女性。
* * *
立ち読みしている梨子のもとにマギーが来た。
「梨子先輩」
「ん?今度はマギーか。何だ?」
「これ見つけました。アメリカ文学の代表作デス。どうデス?」
そう言うと、マギーはその本を梨子に見せた。
「ああ、ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』か。有名だな!『ロリータ』は主人公の愛称で幼女の意味ではないのだが……ん?まさかわたしの外見やファッションにちなんでるんじゃないだろうな~?どうなんだメリケン?」
「先輩にピッタリの本デス、エエ!」
梨子の下段ローキックがマギーの足に炸裂する。
「ブチ殺すぞテメェ!!!!」
ドシィッ
「Oh!!」
膝をつき、プルプルと痛みをこらえるマギー。
さらに梨子は本に向き直り、
「リンチ用の蹴りはこれにするか。拷問にはこの蹴り。こっちは処刑用だな」
「ア、 アナタ本当に図書委員デスカ?」
その時、制服姿のつぼみ先輩がやってきた。
「マギーちゃん、どうしたの?」
「オッ、つぼみ先輩っ。梨子先輩が……それより何で制服ナンデスカ?」
「えっ、わたし?わたしあまり私服で出歩かないの。いつもはずっと制服よ」
マギーは納得するかのように、
「あ、わかった!服のセンスダサいんデショ?」
図星のようだった。
軽くショックを受けるつぼみ先輩。
「服の雑誌とか読まんとデスカ?女の子の必須アイテムの一つデスヨ?」
「え……あ、う~ん」
女性用のファッション誌を持ってくるマギー。
「この本によると、え~と。フ~ム」
ページをめくるマギー。
「つぼみ先輩ナラ、童顔、巨乳、足太い……と」
「え、最後のナニ?」
マギーはつぼみ先輩のボディラインを確認しながら、
「エロカワイイの路線でドウデショウ?フッフッフ」
「ちょ……なんかやらしいよ、それ」
再びショックを受けるつぼみ先輩。
* * *
今度はかなこが本を手に、梨子のところにやってきた。
「先輩!サッカーの本、置けないでしょうか?」
「却下」
次にゆりえが、
「先輩!居合の本買いましょうよ」
「自腹で買え」
さらにマギーが、
「先輩!『ウォーキング・デッド』読みたいデス」
「マンガを選ぶなマンガを。ってかそれアメコミだろ?」
「いやいや、実はデスネ。内容はこうこうこうなってイマシテ」
「何っ、そうなのか!それはぜひ図書室に並べたいな!!」
うしろでつぼみ先輩が、
「却下です」
* * *
童話のコーナーで、かなこは絵本を開いていた。
「おこし、煮付け、焚火、その次は?」
マギーがやって来て、かなこが読んでいた絵本のタイトルを見る。
「モモ……タロウ?『ピーチ・ボーイ』か。懐かしいナ。キビダンゴ一度食べてミタイ」
「あ、団子だけ正解!」
* * *
図書委員のみんなはジュンク堂書店をあとにした。
帰る時間だ。
「もう夕方だ」と、かなこ。
「チャーララー、チャーララァ、チャーララーララー♪」
夕陽を目に、ハミングするマギー。
「オッ、『家路』か」と、梨子。
「『遠き山に日は落ちて』だろ」風紀が言う。
「バカ言うな『ゴー・イン・ホーム』を日本語訳にしたやつだぞ。確かアメリカ音楽の」
「違うね!堀内敬三の書いた詞を歌にした曲だ!知らんのかロリータ」
「ゆずの『雨のち晴レルヤ』の間奏にも使ってるじゃないか『ごちそうさん』観てないん?」
と、表情が龍になる梨子。
「朝ドラは観ん!ってかお前のはいちいちマニアック過ぎるだろ。日本人は黙って『遠き山に日は落ちて』にしろ」
虎の形相になる風紀。
「『家路』だコラ!蹴るぞこのアマ」ガオー!!!!
「『遠き山に日は落ちて』だろ。ブチ殺すぞテメェ」グルルルル!!!!
それを見ながらつぼみ先輩が心の中で、
あの曲はドヴォルザークの「新世界より」……とは死んでも言えない……
* * *
野良猫のミントが「みんなやっぱり仲がいいんだね!よかったよかった」とつぶやた。
つづく
感想やレビューをいただければ幸いです。こんな感じで図書委員コメディを書きますのでよろしくお願いいたします!!




