第二十回
正月は地元では太宰府天満宮か筑紫神社にお参りに行きます。
第二十回
一月一日。武蔵寺前。
「何でわたしら元日の早朝からここに集まらんといかんの?」
私服のかなこが言う。
ゆりえは小紋を着ていた。「さぁ?梨子先輩たち来るらしいし」
その時、私服の風紀と振袖の梨子がやって来た。
「「明けましておめでとうございます」」
「「あ、はっぴー・にゅー・いやー。ゆりえ、かなこ」」
「マギーは家族でニューヨークの親戚挨拶か」
「梨子先輩、何で天拝公園に朝六時半集合なんですか?」と、かなこが聞いた。
「元日は天拝山の頂上で初日の出を見る。そのあと筑紫神社へ初詣だ。いいな?」
「元旦に朝日を見るんですか?わたしそういうの経験ないです。天拝山で山頂から見るのも」
「そんなんじゃ正月来んぞ」ヤレヤレという梨子。
「いや、もう来てます………」
「ちなみに元旦という言葉だが、『旦』の字は一が水平線を表してるから、その上に日の字が来てるので、朝日を意味してる。つまり朝日が昇るを絵にした字だ」と、風紀。
「えっ、そうなんですか?」と、驚くかなこ。
「なので、『元旦に朝日を見る』とか、言葉が重複してるんだ」
「じゃあ、元日とは?」
「一月一日。今日の事だ」
「正月は?」
「正月三が日とか言うが、一月ずっとのことを言う。三十一日までが本当の正月だ」
* * *
天拝山・頂上
「天拝山の頂上は実は穴場なんだ。地元でもけっこう有名だぞ!」
さぁ、カウントダウンだ。
三、二、一。
東の方から日が昇る。
「わああ!!」と、かなこが感動する。
「すがすがしいな。いい朝だ」と、浸る梨子。
「今年もよろしくな、ゆりえ、かなこ、そして天国のマギー」
「死んでないです………」と、ゆりえ。
* * *
太宰府天満宮
司書の渡辺たまき先生がお参りをしていた。
「今年も穏やかな図書室をお願いします。………。無理か」
* * *
関口と夏美は一緒に太宰府天満宮に来ていた。
「雄くん、おみくじ引こうよ」
「ん、ああ。そういや夏美、お前おみくじの結果の順番って知ってるか?」
「え、うん。大吉、中吉、小吉、吉、半吉、末吉、末小吉、凶、小凶、半凶、末凶、大凶の順だよ、確か。諸説はいろいろあるけどね。あ、もしかして十八番取っちゃった?ゴメンね」
「吉ってのはさぁ、」
「あ、逃げた!」
「いや、おみくじってのはさ、ルーツは平安時代で元三大師って高僧が人の運勢を漢詩で作ったものなんだよ」
「へー」
……………。
「フッ」
「バカにしてる?してるよね、それ!じゃあ、これは?」
「ん?」
「おみくじは最初は中国に伝わる占いが由来なんだって」
「ああ、そして観音様を褒めたたえた偈文から、おみくじは観音くじとも呼ぶんだ」
…………。
「フッ」
「こいつヤな奴!」と、夏美は怒った。
* * *
太宰府天満宮。
腕時計で時間を確認する田嶋。
そこへつぼみ先輩が来た。
「待った?田嶋くん」
「西川先輩」
「ゴメンね。急に誘っちゃって」
「いえ、今日は相方もデートでいませんし」
「じゃあ、わたしたちもデートだね!」
「DATE?!」
「お参りしようか?わたし受験祈願もしたいし」
「え、ああ!先輩は結局、どこの大学に行くんですか?」
「う~ん、結果次第だけど、第一が九大で、第二が同志社かな?」
「はー、俺もそうしようかな?」
「田嶋くんはわたしより全然優秀じゃん!」
「同志社って京都ですよ?遠いです」
「ま、受かるかどうかは分からないけどね」
「先輩の実力なら大丈夫ですよ。応援します!」
「ありがと!」
「…………」
「で?結局行っていいんだよね?」
「え?」
「同志社大学。でももし行ってもわたし卒業したら福岡に戻ってくるよ。だってわたし、田嶋くんのことが………心配だから!」
「今の間、意味深ですね………」
* * *
梨子と風紀は、まだ天拝山の山頂にいた。
「きれいな初日の出だな」と、梨子。
風紀も「ああ」と、答える。
「『駆け上がる松の小山や初日の出』かな?」
「オッ、夏目漱石の句か!」
「ま、まぁ、それはともかく………」
A HAPPY NEW YEAR!
つづく
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