第十三回
もう半分書いてしまった。書くの速くなった?いや、根詰めすぎなんだよなぁ。というわけで、夏祭り回です、どうぞ!!
第十三回
八月の上旬。夏祭り当日の夕方
生徒会副会長の峰永杏樹は、浴衣を着て井手生徒会長と待ち合わせた。
「さて、井手会長。今日はいよいよ夏の風物詩。夏祭りの日ですね」
「そうだね副会長」
「ハメを外し過ぎる生徒を出さないためにも、巡回には気合いを入れますよ!」
「ああ、そうしてくれ峰永くん」
その時、書記長の池神が、浴衣に「祭」と書かれたうちはを手にやって来た。
「よう、会長に副会長!今日は祭りやけ、気合い入っとぅばい!!」
その気合いは違う……。
私服に着替えた池神は井手に「祭りに乗じて騒ぎを起こす輩もいるから気をつけんとな」と、言う。
「ほう、例えば?」
「龍虎コンビとか!」
「ああ。長谷川梨子さんと岩海風紀さんだね」
「しかし今日はまだ見ないな」
「そうだな。隠れるとこなんてなかろうし、う~ん、彼女らはどこだ?」
その時、大きな紙バッグをたくさん両手に持っていた梨子と風紀が現れた。
ゼーハー ゼーハー
「うぉっ!龍虎コンビ?」
「何してんだ?」
梨子と風紀は「昨日今日で東京行ってきた!今帰った」「ハードなスケジュールだった」
「と、東京って、東京のどこに行ってたん?しかもその大量の本は?」
「東京都千代田区神田神保町古書店街だ!」
「日本で一番本がある街だよ。一日七時間はウロウロしてたからな!」
「花火が始まるまで帰って買った本置いて休むか……」
「何冊買ってきたんやろ?わたしたちは夏は毎年神保町古書店街だよなぁ」
梨子と風紀は帰っていった。
どうせあとで祭りには来るだろう。
* * *
関口と夏美はお祭りデート中。
浴衣姿の夏美と私服の関口。夏美は関口と腕を組んでいた。
「こらー!!!!」と、杏樹。
「不純異性交遊!!」
「ちょっ……」と、夏美。
「古いなー」関口も驚いた。
「わたしたちまだキスとかしてませんから!!」と夏美が大声で言う。
「ヤメロ……。夕日に叫びたくなる……」
* * *
夜になった頃、田嶋は制服姿のつぼみ先輩と一緒に祭りの中を歩いていた。
「つぼみ先輩、俺と一緒でいいんですか?」
「うん、せっかくバッタリ会ったんだし。でもいいなー。浴衣って。うらやましいよ、やっぱり」
「先輩は今日も制服なんですね」
「あ、うん。でもわたしはファッションに疎いから……」
「浴衣だったらまだ、ごまかしききますよ」
「う、そうね……」
「そういえば夏祭りって、もともと京都の『祇園祭』が由来なんですよね」
「そうなの?」
「京都で流行った疫病を祓うための病魔退散のセレモニーから来たって話です」
「へー」
「また、夏というのは梅雨の湿気で物が腐ったり、台風もたくさん来るので病気や災害も多いんですよ。それに農作業に一旦手を止めて、日頃の労をねぎらうためにも祭りを行って、慰めるためにあるんです」
ってか、何であんな筋肉マッチョなムキムキフィジカル眼鏡くんが、そんなこと詳しいんだろ?図書委員って不思議だ。あ、わたしも図書委員だけど……。
「お盆が過ぎたらもう体育大会の準備の時期だよね」
「ん、あれ?つぼみ先輩、三年生って体育大会参加するんでしたっけ?」
「秋の文化発表会はウチの学校ないし、体育大会は九月半ばだから、まだ大丈夫だよ。同じチームになるといいね、田嶋くん」
「は、はい!」
* * *
杏樹は夏祭りの周りを巡回した。
「は~ぁ、でも、せっかく夏祭りに来てるんだし、わたしも遊びたいな。でも、わたしは生徒会副会長なんだし。生徒会に放送委員会も兼任。わたしの青春っていったい何だろ?」
その時、焼き鳥を食している林原ゆりえと、フランクフルトを食している沖田かなこ、それにソフトクリームを食しているマギー・ターナーを見つけた。三人とも浴衣姿だ。
生徒会のわたしの目の前で堂々と買い食いとは!
ギラッ
* * *
「しっかし、峰永さんはどこめで行ったんだ?途中でいなくなったよ」と、井手。
「探すにしてもこの公園は広いからなー」
「う~ん」
「あ、いた!」と叫ぶ池神。
「何してんの?」
「たぶん……」
杏樹はゆりえたちを追いかけ回していた。
「仕事してるみたいだよ」
* * *
梨子と風紀は浴衣に着替えて祭りに来た。
「ふぅ、ようやく落ち着いたな」
「ああ!」
「花火までまだ少し時間が………」
その時、梨子たちの前に男たちが集まって、「よー、そこの小学生。俺らと一緒に花火見ぃひん?」
しばしの沈黙の後、
梨子の蹴りと、風紀のジークンドーが男たちに炸裂した。
ドッ ゴッ ドン ドス
「イライラさせんなや、コラ!」と、梨子。
「でもスッキリしたぜ」と、風紀。
* * *
田嶋とつぼみ先輩は歩きながら話す。
「秋に入ったら、あまり図書室には来れなくなるなぁ」
「はぁ、そうですね」
「わたし、九州大学行くか、京都の同志社大学行くか迷ってるの。図書委員の経験を生かして文学部に行きたいんだけど、家を出るか福岡にとどまるか、それを迷ってる」
「つぼみ先輩。それは先輩が自分で決めていいんですよ!」
「田嶋くん………」
キュンと、心が鳴るつぼみ先輩。
* * *
「ゆりえたち三人は河原に来て、座った。もう夜も深い。
「もうすぐ花火だね!」と、かなこ。
「英語でファイヤー・ワークスです」と、マギー。
ゆりえがとっさに「火が仕事するの?」と、言う。
「来週はもうお盆か~」
「ジャパニーズ・ハロウィン?」
「落雁でも食べてろ!」
「そういえば、ウチの学校ってプールなかったね」
「まぁ、男子の前で水着にならなくてよかったからいいけどさ」
「ユリエ、ヤッパ体形気にシテルンね?」
「ウッセー!」
「二学期は体育の授業がソフトかサッカーだから楽しみだー」
「イツモ部活デやってるノニ?」
「授業でもできるからハッスルできるんだよ?」
「今どきハッスルって。古いよ」
しばらくすると、たくさんの花火が上がった。夜空に開く花の数々。
「たーまやー!!」
「カーギヤー!!」
「玉屋と鍵屋って花火屋の名前だったんだよね!」
「玉屋の方がキレイで人気があったんだよ」
「オー、ダカラたまやが先ニ来るんダネ!!」
杏樹が河原で一人でたたずみ、花火を見ていた。
「花火キレイだ……。もう仕事なんてどーでもよかわ。ははは……」
* * *
梨子と風紀も一緒に河原で花火を見ていた。
「知ってるか?花火って悪霊退散の魔除けの意味があるんだってよ」
と、梨子が言った。
「ふ~ん」と、風紀。
「しかし、花火も終わっちまうと何かはかないよな」
「だな。それが夏ってやつなのかもな。『星ひとつ残して落つる花火かな』だっけ?」
「酒井抱一の句か、悪くないな、それ!はっはっは!!」
俳句で締める風紀。
* * *
今回の野良猫ミントの言葉「今回ははかなさや切なさの話だったね。みんな思春期なんだね!」
つづく
今日はかなり頑張りました。どんどん感想やレビューをください。待っています!やる気につなげます!!




