第十回
少しペースダウンして書きました。自分の思い出話なんかも混ぜながら。元図書委員が送る図書委員コメディ第十話!!
第十回
野良猫が空き地でポツンと座っていた。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。なぜならノラだからだ。
そこに通りがかった制服の梨子と風紀。
「オイ、梨子。見ろよ、猫だ」
「ホントだ」
梨子たちは空き地に入って猫の前に来た。
「ほ~う、可愛いな可愛いな!!」と、梨子。
「どうしてやろうかね、コイツ?」
「そうだ、名前付けようぜ!何がいい?」
風紀が言う。
「何かミントって感じがしねぇ?ミントにしよ」
こいつらにいきなり名前付けられた!!!!
数十分後。
「ネコ缶買って来たぞ。食わせようぜ!」
と、風紀。
「何だ普通のキャットフードじゃないのか」
「アレは高いし量もあるかんなー。これでいいやろ」
「まーいいか。それミントにやれや」
吾輩はノラ。簡単に人間からエサなどもらわないのだ。それがノラのポリシー。
プイッと横を向く。
「テメェ、せっかくエサ買ってきたのにその態度は何だ?!」
風紀が怒鳴る。
さらに梨子も、「テメェを料理してキャットのフードにしてやんぞ、コラ!」
殺されそうなので食べることにした。
もぐもぐもぐ……
「よーしよし、それでいいんだよ、それで」と、風紀。
「命拾いしたな、ミント」梨子も言う。
吾輩の名はミント。相変わらずのノラだ。
ただでエサをもらっては何なので、お礼にこれを。
さっき採ってきたネズミの死骸を梨子たちに差し出す。
「オイ、何かくれてっぞコイツ」
「ああ、どうする?」
ネズミの死骸を土に埋めて、アイスキャンデーの棒を刺して墓にした梨子と風紀。
人間はネズミを食べないのか知らないが、どうも人間は食べ物以外の死骸は供養する生き物らしい。
* * *
ウチの高校は数か月に一度、天拝山登山を行います。天拝山とはあの菅原道真公が登った山として有名です。
ゆりえとかなこは一緒に山を登る。そこにマギーが来た。
「ハーイ、ユリエ&カナコ!」
「オッ、三組!マギー、もう追いついたの?」
「ソーデス!来週の月曜日、テストだネ~」
ウチの高校は中間試験がない代わりに数週間に一度、月曜日に、範囲の広くないテストがあります。
「テストの勉強のタメニ、土日潰れるジャン!マイガーッ」
実はそうなんですよ。
かなこが歩きながら、「と、いうわけで日曜日に出掛けない?みんなで」と言う。
「カナコ?!」
「と、いうわけでって何、というわけでって?」
「ドコ行くン?」
「博多の駅ビルとか」
「ってか、あんたら勉強せんの?」
「いや~、久々キャナルシティ博多にも行きたいし」
「あー、最近行ってないね」
「前々から思っていたんだけど、何であそこ運河があるんだろうね?」
かなこの発言にゆりえとマギーは驚く。「な、何だと?」
「カナコ、キャナルシティの〝キャナル″は運河のことダヨ」
「えっ!」と、驚くかなこ。
「し、知らんかった……それで……」
「何ダト思ったン?」
「運河なくしてキャナルシティはありえないよね」
と、その時マギーが、
「ン?デモ待てヨ?CANALは英語でカナルと發音シマス。キャナルじゃないヨ」
「「え?!」」
「カナルシティ?」
「カナルシティって……」
かなこはボソッとマギーに、「何でキャナルって発音せんの?」と、訊く。
「CANALをキャナルと言うのはフランス発音デス。意味は同じデース」
「じゃあ、キャナルがフランス読みで、シティは英語……マジで。もし英語のテストで出題されたらどうすんの?」
「「ないない」」と言うゆりえとマギー。
* * *
頂上に到達。
「お~、ようやく頂上だ!」と、かなこが叫ぶ。
「菅原道真はここから太宰府を見下ろしたんだよねー」ゆりえが吹く風を感じる。
一分、二分と過ぎ、
体育の先生が「よーし、もう下山しろー!!!!」と、大声で叫ぶ。
「もう?」
「早っ!」
* * *
関口と田嶋が、走りながら歌う。
「今日は天拝登山だぞー!」
「今日は天拝登山だぞー!」
「こいつも授業の一つだぜー♪」
「こいつも授業の一つだぜー♪」
「今月末には期末だしー♪」
「今月末には期末だしー♪」
「休みをくれない我が高校―……」
「な、なあ。これキツいからもうやめん?」
ハアハア ぜはーぜはー
関口と田嶋は息を上げた。
* * *
「こんにちはー」と、ゆりえは、すれ違う他の登山者に向かって挨拶をする。
「こんにちはー」と、返す登山者。
「登山中の挨拶は基本だよね」と、ゆりえ。
「うん!」と、かなこ。
その時、ゆりえたちの前に梨子と風紀が、「こんちはーっす!」「こんちはー!」と、大声で挨拶していた。しかも、ベビーカーに乗った赤ちゃんに。
「ちはーっす!!」
「こんちはーっす!!」
赤ちゃんのお母さんは、「こ、こんにちは。あの~」何、この人たち……と、ビビってた。
* * *
つぼみ先輩が走って登山する。
「ひぃ~、遅れちゃった。下山してからも授業あるのに。そのあと学内掃除して、家に帰って、そのあと塾……。そしてまた帰って期末までの勉強。明日の予習。天拝山登山なんかしてたら眠くなっちゃうのに……アレ?待ってよ。菅原道真公っていったらよくよく考えたら学問の神様じゃん!ってことは今日、頭が良くなるかも!という期待?」
* * *
ゆりえたち三人は下山していた。
「帰っタラ、ピアノのレッスンデース」
「わたし居合」
「わたしは公園でサッカーかな」
ゆりえが、「かなこ、それ習い事じゃないよね?」と、ツッコむ。
「うん、そうだよ」
「じゃあ何?」
「もちろん、わたしの人・生・!」
「ちなみにかなこ、進路とかは決めとう?」
「Lリーガーだよ。何で?」
「Lリーガーって……」
「福岡Jアンクラスに入るの。女子サッカーリーグっていったら、やっぱ当然なでしこ系列だよね」
「う~ん、そうだね。なでしこ……」
その時、マギーが、「アレ?でも福岡Jアンクラスっていったら福岡女学院じゃナイ?」
と、言ってきた。
「確かにそうよね。もともとは福女で始まってJアンクラスが出来たんだし」と、ゆりえ。
ギクッ
「わ、わたし、実は女子リーグって東京にしかないとばかり思ってて……」
なんでだよ?と、ツッコみたくなるゆりえとマギー。
* * *
紫台高校校門前。
生徒会が先頭に立って、登山から帰ってくる生徒たちを誘導していた。
杏樹が「はいはーい。みんな並んで学校に入ってくださーい」と、声かける。
生徒会長の井手も、「列を乱さないで入ってー」と、呼びかけていた。
「会長、もうみんな帰ってきたんじゃない?」
「ちゃんと確かめたかい、峰永さん?」
ようやく書記長の池神がやって来た。何だか様子がおかしかった。
「おお、しんがりの池神くん。どしたん?」
「会長、副会長。何度か確認したんだけど、やっぱりあの龍虎コンビがいねぇよ!」
それを聞いた井手と杏樹は、同時に「じゃ、行こうか?」と言った。
吾輩は猫である。名前はミント。縄張りはこの空き地。
龍虎コンビである梨子と風紀が体操服のままやって来た。
「やはりまだここにいたか」と、風紀。
「まるでわたしらを待っていたかの如くやなー」と、梨子。
待ってたっていうか、もともと僕はノラとしてずっとここで暮らしていて……。
「下校時にも寄るからヨロシクな!」
「逃げるんじゃねーぞ、オラ!」
ここ去ろうかなぁ……もう。
* * *
今日の野良猫ミントのお言葉「とうとう僕が登場しちゃったね。よろしくね!」
つづく
と、いうわけで、マイペースにやるって言いながら、頑張ってしまいます。これが性分なのでしょうか?
感想やレビューをくだされば嬉しくて、どんどん書いちゃうかも?な、ことで、やっていきます。どうかよろしく!!




