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24、用意は他人事

 「ヘレマちゃん……」


 「冗談よ、冗談。お爺ちゃんが帰ってくる前に何して遊ぼう?」


 チェルカの驚愕した表情を見たヘレマはさっきの暗い顔を嘘のように感じるほどな笑顔と声でお嬢さんたちに声をかけた。


 「ヘレマさん、こっちに座ってください」


 お嬢さんはそう言いながら持ってきた椅子を置いてヘレマに手招きする。


 「なに? 椅子取りゲームをやるの?」


 ヘレマがそう言いながら座るとお嬢さんは追加で2つの椅子をヘレマの両側に並んで片方に座った。その間にそわそわしていたチェルカはお嬢さんに呼ばれて慌ててもう片方に座った。


 「おじいさんが帰ったらすぐに出発しますので、何もできませんが、話を聞くぐらいできますよ」


 2人に挟まれて座っているヘレマはお嬢さんにそう言われると手をぴくっと反応した。


 「さっきのは冗談だよ。こんなの大袈裟だよ」


 「ヘレマさん、さっきも言ったようにわたしたちはもうすぐこの村を出ていきます。なので何を聞いても言いふらす暇はありません」


 笑ってごまかそうとしたヘレマはそれを聞くと太ももに置いた両手がそのままスカートを握り込んだ。


 「本当に誰にも言わない?」


 「急いでいるから誰に遭っても挨拶する暇もない早馬で村を出るつもりです」


 「お爺ちゃんも?」


 「おじいさんにはさすがに挨拶ぐらいしますが、他に何も言いません」


 「本当に本当?」


 ヘレマは両手を力一杯スカートを握り締めてすがるような目でお嬢さんに確認した。


 「ええ、もちろん本当よ」


 お嬢さんは何の迷いもないまっすぐな眼差しで返事した。

 するとヘレマは握り締めていた両手を緩め、俯いてつぶやくように語り始めた。


 「あたしね、お父ちゃんとお母ちゃんのことはよくわからないの。物心がついた時からずっとお爺ちゃんといっしょだった。

 小さい頃によその家を見てうちが違うって思ったけど、別にお爺ちゃんがいればいいと思っている。なのにこのことで変だの、おかしいだのと同い年の子たちに笑われた。でもね、その時に1人の男の子だけかばってくれたの」


 「もしかしてご結婚のお相手様は……」


 最初悲しい顔を浮かびながら聞いていたチェルカは恋バナになった途端、目を輝かせながら問いかけた。


 「うん、あの時の男の子」


 「キャーー素敵です!」


 「では、お相手のことは好きですか」


 興奮しているチェルカを無視してお嬢さんは落ち着いた口調で話を詳しく聞こうと質問した。


 「もちろん好きだよ。だからプロポーズしてきた時、本当は飛び上がりたいほどうれしかったの。でも……」


 「でも?」


 「でも、彼はこの村を出るつもりなの、『結婚式を挙げたらいっしょに都会に行こう』って誘ってきたの」


 そう言いながらヘレマはまた力強くスカートを握りしめた。


 「ん? ヘレマちゃんはいっしょに行きたくないんですか?」


 「もちろんいっしょに行きたいよ! でも……」


 「ごめんください! ヘレマちゃん居るかい!」


 チェルカにそう聞かれ、ヘレマは反射運動のごとく大声で理由を言いかけたところに誰か外から呼びかけてきた。


 「ごめん、ちょっと行ってくる。

 はいーー! 今行く!」


 驚いたチェルカとそれを宥めるお嬢さんを残して、ヘレマは玄関に行った。

 誰だろうと呟きながらドアを開けると……


 「あっ! きたきた! ヘレマちゃん、アイソンじいさんに頼まれた通り、テントを持ってきたよ!」


 「ちょっと! 声が大きい、ヘレマちゃんが驚いたじゃない。ヘレマちゃん、持って来たよ。2人の1日分の食料」


 「声が大きいなんてそんなことはないだろう! な、ヘレマちゃん」


 「あら、他人に聞くってことは自覚があるじゃない」


 そこには4人の男女が手にそれぞれ何かを持って立っていた。その中にさっき呼びかけてきた声の主と思われるハゲのおっさんがハイテンションでヘレマに声をかけた。そして、すぐ側にいる頭巾のおばさんに止められ、言い合いになった。


 「な、お前こそ……」


 「まぁまぁ、2人共落ち着いて、今はアイソンさんの頼み事に集中しよう。ヘレマさん、これは言われて用意した2人分の靴だ」


 「何だと! わしのことがどうでもいいとでも言いたいのか! もしこれでヘレマちゃんのわしに対する評価が落ちたらどうしてくれるんだ!」


 「いや、そんなつもりは……」


 「あら、そんなのもうとっくに地に落ちたに決っているじゃない。ね、ヘレマちゃん」


 細身のおじさんが宥めようとしたが、かえって言い合いに巻き込まれてしまった。


 「ヘレちゃん、はい! これ」


 大人の言い合いをよそに友達らしい女の子がコートをヘレマに渡した。


 「チプちゃん? どうしてみんながこれらのものをうちに持ってきたの? お爺ちゃんの頼み事ってなに?」


 「えっ? ヘレちゃん知らない?」


 困惑しているヘレマはチプに状況説明を求めたが、常識を聞かれたような反応された。


 「お父さんから聞いたけど、ヘレちゃんのおじいちゃんが集会所に行っていきなり『お願いがあります!』と叫んだよ」


 「えええぇ!」


 ヘレマは驚きのあまり声を上げた。それも無理ないか、私もまさかこんな方法で用意するとは思わなかった。

 いや、待てよ。用意は他の村人がするとして、じゃあ老人は今どこにいるのだろう。

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