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1、人?を求めて

 ドッカーーン

 正午の太陽が夕陽に変わった頃、荒野を出て森に入ろうとする時遠方からの爆音が耳に入った。

 体感(身体が無いけど)で歩行よりやや早い速度で移動したので、もう随分離れたはずなのに時折鮮明に聞こえる。

 

 その決闘を超リアルVR映画の感じでみて3分で飽きた。

 画質はもちろん音質もリアルそのものだが、自分で視界を動かすのが面倒だった。

 双方が必殺技であろうブレスで打ち合っているあの時もそうだ。

 ドラゴンと視界()が同一直線上にいたせいで、ドラゴンが後ろ姿でゲロを吐くようなのを観るか挟み撃たれる恐怖にさらされるしかなかった。


 飽きた私は周辺にいるドラゴンたちを観察しはじめた。

 ところが、金縛りにでも遭ったのか、ただ遠巻きでみているだけでびくともしない。

 退屈の私は人を探すことにした。


 はぁ〜なんて皮肉なことだ。

 前々から一人になりたかったというのに、いざ本当に一人になるとつまらなくてたまらない。

 否、一人になるのはいいだけれど漫画や小説などの娯楽がないとだめだ。

 人に邪魔されずにのんびり楽しめたら最高だ。

 今の身体でどう楽しめばいいかわからないが、それも娯楽()を見つけないと始められない。

 願わくば一発で大都市を見つけたいものなのだが、こんなドラゴンがいっぱい居るところに小さな村があればありがたいのだろう。

 

 しかし、私は一体どうなっているのだろう。

 普通に頭を動かす感覚で見回せるし、身体を傾ける感覚で移動できる。まるでゲームのフリーカメラみたいに見聞きすることができる。

 

 それにあのブレスの威力からみて、多分触れたものを塵一つ残さない破壊力を持っているのだろう。それなのに、飲み込まれた私は何ともなかった。

 霊体的な何かだから?

 ……いまいちしっくりこないな。

 

 試してみよう。

 

 私は近くにある木に目の焦点が合わせられない距離まで近づける。

 するとその部位の断面が見えた。

 一目でそれが木目と分かった。しかし木材と違って生々しい。

 光が通らないはずなのに色も自然な影も見えた。

 

 目を凝らす(目が無いけど)と見ているところが拡大され、細胞が見えた。

 どこまで拡大できるかわからないが、恐らく原子を見ようとすれば見られるのだろう。

 なんとなくその気がする。でも見たい気持ちにはなれない。

 

 拡大する方法は目を凝らすということはどこかの筋肉が自然と力んでいることだ。

 意図的に力むのは簡単だ。しかし、意図的リラックスするのはむずかしい。他の人は知らないが、少なくとも私はそうだ。

 身体のない今は関係ないが、そんな微妙なコントロールができてからするのも遅くないのだろう。

 

 後退して間もなく、目の前に木の皮が出てきた。周辺を見回して異常はないか確認する。

 よかった。無事に戻って来られた。

 

 次に勇気をしぼって木に向かってタックルの如く移動した。

 すると木をすり抜けた。

 やはり実体はないようだ。

 

 それにしても意外とできることが多いかもしれない。

 さながらチュートリアルも説明書もないゲームみたいだ。

 面倒だが、何ができるかは自分で模索しなければならない。

 

 でも今そんなことより娯楽()を探すことに専念したい。

 観光は性に合わない。

 景色がどれだけ綺麗だってただの自然現象、条件が揃えば出てくるもの。

 自然発生率が低いからって見に行こうとも思わない。

 

 珍しい動物や植物もその地で生きていられるからそこにいるだけ、そうでないと遷移してその地から消えてなくなるまでだ。渡り鳥とか、彗星とかも興味ない。

 

 しかし、どうやって人を探せばいいのだろう。

 目立つ人工物があれば楽なのだけれど……。

 

 まだ夕暮れというのに入り口で見ればわかるほど森の中は真っ暗……かと思ったら、一番奥にある木の皮のシワが数えられるほどよく見えるようになった。

 今幽霊が出ても驚かない自信がある……自己紹介じゃないよ。

 

 たとえ夜目がよくきいて、障害物を我関せずにすり抜けられても、効率よく探索する方法は知らないと暗中模索しかできない。

 もし空を飛べるなら簡単に探せるのだろう……あっ。

 

 そういえば視線の高さは前世(?)と変わらなかった。

 でも今は前と違って身体はない。

 もしかしてずっと低空飛行していて今さら気づいたパターン……。

 

 やってみよう……

 爪立つような感覚で……おお。

 

 エレベーターにでも乗ったような感覚で高度が上がっていくにつれて森の全体もゆっくりと露わになっていく。

 夕日に照らされ、金色の艶を帯びた木の葉があたり一面に広がる。

 幻想的な景色だ。

 

 とても綺麗だ。そして、とても残念だ。

 空き地もなければ建物もない。あるのはただ無駄に広い樹海だけ。

 

 多分、無駄足(足がないけど)のイライラとだれにも見られる心配はないからだろう。

 全力疾走しながら叫ぶ気分で急降下して夕日の方角へ最高速度の低空飛行で突進する。

 

 はっはははーー私こそなんでも貫く矛だ。この世に私が突き抜けないものはない!

 

 感情のままに木を、山をすり抜けて移動し続けた。

 気持ちが落ち着いた頃にはもう海の上に居た。

 ただ人のない森から人のない海に来たと思ったら。


 歌声が聞こえた。


今後更新するつもりですが、速度に自信がありません。

四百字あまりのプロローグを2日もかかりました。

怠け者で散漫な私ですが、宜しくお願いします。

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