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10、伝説は子供騙し?

 床にうつ伏せで押さえられた拘束状態になった上、首筋にナイフが当てられたら、相手の意のままになるしかないだろう。


 普通は。


 「断る!」


 「なっ! 自分の状況がわからないのか?! まぁ、いい。帰ったら今話さなかったことを後悔させてやる。 おい!コイツを縛り上げろ!」


 ヒゲの命令で2人の盗賊が縄を持ってきて、そのままその2人に縛られた。


 そして、メイドたちのいる隅に引きずらていった。メイドたちの中のある人は俯いたまま震えている、ある人は声を殺して泣いている。さらに恐怖にとらわれたのか目が定まらない人もいる。多分パニックになっているのだろう。


 これでは縄を解いてもらえそうにないな。


 自力で縄から脱出しようと試みたが、縄は固まったようにびくともしない。


 仕方ない、次の身体(残機)で行こう。人間以外に憑依したことはないが、少なくともこの世界の人口の数だけ、私の残機がある。それにコマンドを入力したり、怪しいキノコを食べたりすることも必要ない。便利だな。


 しかし、その前にどうやってこの身体から出ればいいのだろう?どんな感覚で動けばいいのだろう?

 使い方がわからないではどんな便利な力があっても意味はない。


 毒ナイフに刺された時は死んで抜け落ちるように出たから、死んでいく感覚でいけばいいのかな。


 そういえば、前世の一回とお嬢さんたちを庇う時の一回。私は二回も死んだか。二回目は寝落ちるようなものだから論外として、一回目は辛かったな~


 高さが中途半端だったからか。即死できずに重傷を負った。助けも呼べなかったし、早く楽になることもできなかった。動けるとしても場所が場所だから、人は居ないだろう。だから、ただじわじわと死んでいくしかなかった。


 その感覚は忘れようにも忘れられない、そのおかげか、すんなりと出られた。


 「うん?ここは? えっ!なんで縛られてんだよ」


 どうやら私に憑依さている間のことは覚えていないようだ。

 普通に驚いて騒いでいる。


 「ったく。もうこうなったってのに、また何をするつもりだ。 おい!誰かヤツの口を塞げ!」


 「お頭これはどういうk、う、うう」


 ヒゲはもう相手にするつもりはないらしく早々文字通りの口封じを命じた。


 さて、次は誰の身体を拝借しようか。


 ヒゲに憑依して追撃命令出さなければ、お嬢さんたちは安全だろう。しかしそれでは、命令を出させないために私はずっとこのヒゲのおっさんに取り憑かなけばならない。


 そうなったらつまらないしかないだろう。


 それとも権力を振りかざして部下を死なせるか?

 でもどうやって?

 長時間残業させるとか?


 悩んでいる時も時間は待ってくれずに進んでいる。


 「くそ! 一体どうなってやがんだ。4人も出したのに3人が死んで1人が裏切りやがった」


 「お頭、あのう……」


 盗賊の1人が作業を止めて恐る恐ると私が引き起こした異常事態に苛まれているヒゲに声をかけた。


 「なんだ!」


 「商会が栄えられたのは全部あの娘が魔法を使ったからと最近こんな噂を聞いたんです……」


 その図表を浮かべる力は魔法なのか? 

 しかし、その理屈では私の存在そのものが魔法ということになる。

 でもなんか違う気がする。


 「まさか、お前はあの小娘が魔法使いとでも言いてぇのか?」


 「……」


 ん?この世界は魔法があるのか?


 「ふん。何が魔法使いだ。バカバカしい、そんなもんただの子供騙しに決まってる」


 「お頭の言う通りですが、しかしもしあの娘が本当に魔法使いだったら、伝説のように姿を消してドラゴンを呼ばれたら、俺たちはひとたまりもありませんぜ」


 魔法は伝説にしか存在しないのか。つまらない。でもなんの伝説かは興味が湧いた。


 「だからその伝説とかは子供騙しだと言ってんだ! そうだ。そんなに気になるならお前が確かめてこい。ちょうど何かあったか確認したいところだった」


 「ええ!そんな……」


 「なんだ? なんか問題でもあんのか」


 また丸投げか。まぁ、ちょうど誰かに憑依するのか迷っているところだ。その丸投げされたやつの身体を借りてまた暴れよう。


 「ありませn……」


 よし、入った。


 「ないなら、さっさと行け!」


 「断る。そんなに知りたいなら自分で行け」


 私はそう言い捨てて腰に差してあった剣を抜いた。そして間髪を入れずにヒゲに斬りかかった。


 「クソ!」


 しかし、ヒゲはひょいと身を逸らし、躱した。


 すばしっこいな。


 「なのつもりだ!」


 そう言ってヒゲはまた同じ技を使おうと肉薄してきた。

 今度はすぐに身体を捨て他のやつに乗り移る。


 「ぐふっ」


 当然ようにヒゲは今回も見事に制圧した。

 前の身体に集中しているであろう隙をついて2人もろとも切る勢いで剣を振り下ろした。


 バシャ!


 手応えとともになんかの熱い液体が顔にかけられたように濡らされた。


 注意を顔から切っ先に戻して見ると視野に一人しかいない。


 「次から次へどうなってやがんだ!」


 本当に敏捷なヒゲだな。まさかそのヒゲはゴキ○リの触角みたいに周辺を察知しているのか?


 さすがに状況が異常すぎたか。ヒゲは全方位を警戒するように構えている。さっきみたいに反撃してこなくなった。

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