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プロローグ
私は死んだ。
それは確かだ。
なぜそう言い切れるかというとそう覚えているとしか言いようがない。
どんな死に方を遂げたのかはさておいて、私は今異世界に居る。なんの前触れもなく気がついたら異世界にいた。
そして、目の前に二匹のドラゴンがこの草木一本も生えない荒野で絶賛決闘中。
この二匹のドラゴンを取り囲む形で無数のドラゴンたちが観戦している。
そんな危険の真っ只中に居る私は反射的に逃げようとしてはじめて違和感を覚えた。
その違和感を指摘するかのように、二匹のうち全身真っ暗で距離感を掴めないドラゴンがブレスを放った。
放たれたブレスを視ることができなかったが、視界がそのドラゴンの口を中心に黒が広がっていきやがて黒で充満された。
一瞬暗闇に飲み込まれた錯覚をした途端、視界が戻った。
ドラゴンたちは依然として決闘と観戦している。しかし、一歩も動かなかった私の位置に綺麗に掘られた地中へのトンネルができた。
この時はじめて気づいた、自分には身体がないのであることを。