表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

Part W‐1

 長い戦争があった。

 星を焼き尽くすほどの戦争が終わり、生き残った人々は細々と、文明の復興を続けていた。

 星全体がスラム街のような様相を呈している中、変わらない地区が一つ。星のへそのようにぽつりと、堅牢な壁に守られた街があった。オリジン政府保護地区。遺伝子に手をくわえられていない、『原種(オリジナル)』に分類される人間達の居住区だ。

 その中でもひときわ大きいのは、旧時代の近世欧州を思わせる城だ。歴史の保護という名目で、旧時代の文書や遺物が収められた城は、人類史そのものの記録(レコード)として、世界の統一政府に手厚く保護されていた。

「――――ですから、姫様には一人、専属の従僕がつくことになります。事情が事情ですので、ご容赦ください」

 当然、保護の対象には、城に住む『王族』も含まれる。

 電動車いすに乗せられ、少女は従者に押されて廊下を進んでいた。

「従僕は、下男の家系から一人立候補者が出ました。外につながりがなく、犯罪歴などもない潔白の男です」

 従者が扉を開き、四角い部屋に少女は押し込まれる。

「では、以降全てのご用はその従僕にお申し付けください」

 背後で、扉が閉まる音がした。少女は車いすに座ったまま、目だけで部屋を見まわす。城の外れ、長い廊下の突き当りの部屋は、白を基調としたインテリアで統一されていた。少女の柔らかな金糸の髪は、部屋の中で鮮やかに映える。

 従僕の青年は部屋の中心で待っていた。褐色の肌に、根本が黒い灰色の髪、服は墨色の制服だ。礼をすると、髪はさらりと銀色に光った。やや長い前髪の奥で、赤褐色の目が鋭く光った。

 そして、ぴょこん、とその頭の上で、三角の獣の耳が立ち上がった。

「……あら、支族(アリウス)なのね。お待たせしたかしら」

「待ちましたとも」

 ぞんざいに、青年は吐き捨てる。

「……お寝坊なお姫様だ」

「うん……あなたのお名前は?」

「ワーフ。これから先、あなたの手であり、足であり、盾であり、剣である。好きに使ってください」

「そう……種族と、能力(アディショナル)は」

「種族ナンバーイチマルゴーゼロヨン。判別名『銀天狼(ズィルヴァー)』。能力は転生です」

「そう。私はセシリア。よろしくね」

「はい」

 ワーフはやはり雑に返事をして、形だけの礼をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ