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透き通った青空が見下ろすその街は、喧噪と活気にあふれていた。
石畳に赤茶けたレンガや木造の建物が立ち並び、商店には客が絶えない。
そんな街の通りで少年はつぶやいた。
「えーと、次は八百屋のおじさんか」
歩きつつズボンのポケットからメモを出し、なじみの八百屋へ向かう。この通りを右に曲がればすぐだ。
「おう、アレク! 来たか。今日もよろしくな」
――アレックス――周りからは『アレク』と呼ばれる少年は、「よろしく!」と恰幅のよい八百屋の手伝いを始めた。
「今日は知り合いの農家からこんなに良いスイカが届いてな。嬉しいんだが、多くて置き場に困ってんだ。今日はちっと暑いし早く捌きたいんだが、良いか?」
アレクは淡褐色のくりくりとした目を細め、にっこりすると、
「じゃぁ、まずはスイカ冷やしましょう。冷たいほうがおいしいし」
腰に巻いた小さなバッグに手を入れ、ヨレた細長い紙切れを手にとった。
「待ってました!」と八百屋が言う前で、その複雑な紋様が入った紙を売り棚の上にペタリと貼り付ける。
するとたちまち、冷気と這って下る霧が売り棚を包み込み、紙は霧の中で塵になった。
「これで味が落ちない上に冷たい分もっとおいしくなるよ。長くは持たないけど」
「おぉ、こりゃ冷てぇ! 北のアルビア岳の空気ぐらいじゃないのか。行った事無いがな。ガハハ……」
札の効果に八百屋のおじさんは喜んだ。
「アレク、おまえの『魔術札』にいつも助かってるよ。売り捌く方も一緒に頼むよ」
売り棚の冷えた大量のスイカは、髪に少しハネ癖がある少年の元気な客寄せも相まって日が落ちる前にはきれいに捌けた。
「いやぁ、助かった。今日だけで目玉の品が消えるとは思わなかった。逆に困っちまった」
八百屋は「いつもありがとよ」と小袋に入った駄賃を彼の手に渡す。
「スイカの分は入れたが、こっちも余り儲かって無くてな、小銭ぐらいなんだ。悪いな……」
おじさんは昼の威勢の良い様と違い、すまなさそうに言った。
「いや、これで良いですよ。掛け持ちしてますし」
明るくそう言いながら、アレクは駄賃をもらう。
バッグから出した魔術札を火種にランプを灯し、少年は黄昏れた街に消えていった。






