第二十七話 コンテスト優勝!? コンテストで優勝することができ、由那の漫画原作を担当することが確定的となったと思った矢先に、突然編集長から呼び出しの電話がかかってきた件について
「やったな、相棒」
「おめでとう、昴」
「おめでとうございます、先輩」
次々と発せられる祝いの言葉。
漫画原作部門の結果が判明した瞬間、優弥は買い出しに向かい、由那は苦手な料理を開始し、そして如月さんはいつものようにみんなに振る舞うお茶の準備を始めた。
そうして突然始まった祝勝会。
その中心に座らされた僕は、嬉しいというよりもややホッとした心境で、感謝の言葉を口にした。
「ありがとう、みんな。ちょっとだけ肩の荷が下りたよ」
それは僕の本音だった。
これがもし、小説部門の大賞ならば遥かに喜びが優っていたと思う。でも、今回は目の前の少女の原作権がかかっていた。
「はは、なんだかんだ言って結構気にしていたのな」
「そうそう、私たちが何度も何度もベコノベにアクセスしていた中、まるで我れ関せずって風を装っていたのに」
「まったくまったく……待て、いま私たちって言ったな。俺は何度もアクセスはしてねえぞ」
「細かいことを気にする男ね。だから模試の結果が伸びないのよ」
「それとこれは関係ないだろ!」
由那の発言に眉を吊り上げた優弥は、すぐさま反論を口にする。
いつにもまして、威勢のよい二人のやり取り。
そんな彼らへと視線を向けていた僕は、突然シャツの裾が引っ張られる感覚を覚えた。
「先輩、改めて本当におめでとうございます。それと……本当にいろいろありがとうございました」
「はは、頭を上げてよ如月さん」
「いえ、本当に感謝しているんです。先輩がいてくれたおかげで、たった一人だった文芸部が、こんな素敵な部になりました。あの時、図書館で先輩に会えなかったらと思うと、私、私……」
「違うんだよ、如月さん」
感極まってか、俯いてしまった彼女を目の当たりにして、僕は彼女の頭をそっと手を置く。
途端、びっくりしたように彼女はその視線を上げた。
「え……先輩、その……」
「本来お礼をいうのは僕のほうさ。なぜ小説を書き始めたのか、そして何のために小説を書いているのか。決してポイントのためなんかじゃなかったはずなんだ。でもいつの間にか手段と目的が入れ替わってしまっていた。君が指摘してくれなかったら、今もそのままだったはずさ。だからありがとう如月部長」
そう告げると、僕は彼女に向かって頭を下げる。
すると、如月さんはアワアワとした表情を浮かべながら、その場に固まってしまった。
「いや、その、私はただ思ったことをそのまま言っただけで、そんな大したことは――」
「楽しそうね、昴」
突然、如月さんとは逆方向のシャツの裾が引っ張られると、聞き覚えのある冷たい声が発せられる。
僕はゆっくりと視線を移すと、そこに頬を引きつらせた由那の姿があった。
「何だ、修羅場か。いいぞ昴、もっとやれ」
「あんたは黙ってなさい!」
僕たちに向かって、からかい半分の声を上げた優弥は、ピシャリと由那によって叱りつけられる。
そうして一瞬部屋の中が静まり返ったタイミングで、僕は由那に向けて頭を下げた。
「ありがとう、由那。君にも本当に感謝している」
僕は彼女をその視界に収めた瞬間、深々と頭を下げる。
その行為をどう受け取ったのか、由那は先程までの不満気な表情を一変させると、僕に向かって慌てて声を掛けてきた。
「え、いや、どうしたの昴。私、そんな怒ってないから」
「違うよ、本当に感謝しているんだ。君が描いてくれたキャラクターたち。特にパッソのイラストは、間違いなく僕の背中を押してくれたんだ。そして強く思ったんだよ、このキャラを絶対世に出さないとって」
「……そう。うん、その……あの……」
彼女は言葉にならない事を何度も口にしながら、シャツの裾を引っ張りつつモジモジし始める。
そんな彼女を目にして、僕は軽く首を傾げかけた。
すると優弥が、由那にわからぬよう彼女の背後に回り込みながら、彼女の頭のほんの僅か上で手のひらを何度も動かす。まるで僕にその行為を行えと促すように。
僕はその意図を理解して、そっと彼女の頭のへと手を伸ばしかける。
しかしそのタイミングで、突然アニメ版のローズムーンの主題歌が部屋の中に鳴り響いた。
「あ、あたしのみたい……ごめん」
顔を真っ赤にしながら、由那はその場から立ち上がると、充電器のそばにおいていた自分のスマホを手にする。
「はい、如月です……あ、お疲れ様です。はい、はい、私の方でも確認しました。え、彼ですか? ちょうど一緒に居ますけど……分かりました。伝えておきます」
「何の電話だ、音原?」
電話を終えた由那に向かい、優弥は眉間にしわを寄せながらそう問いかける。
一方、由那はなんとも言えないといった表情を浮かべながら、電話の主のことをその口にした。
「その……編集長から」
「編集長? じゃあ、士洋社の?」
僕は確認するようにそう問いかける。
すると、由那は小さく頷くとともに、困惑した口ぶりでその内容を口にした。
「ええ。今週末の土曜日、編集部に二人できて欲しいって話だったの……その……神楽先生の事も含め、その際に今後の方針を伝えるからって」




