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ネット小説家になろうクロニクル  作者: 津田彷徨
第二章 青雲編

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第二十六話 コンテスト結果発表!? 様々な思惑が入り乱れた最終選考の当日、コンテストにおいては予想外の出来事が起こったものの、僕が求めていた歓喜を手に入れることができた件について

「結果はどうなの?」

「落ち着けって。さっき更新ボタンを押したばかりだろうが」

 由那の急かす声に対し、優弥は苦笑交じりにそう告げる。

 十月の第二月曜日、それはコンテストの最終選考の発表日であった。


 今日の夕方のランキング更新。

 コンテストの優勝者が決まるその発表を皆で迎えようと、僕たちは第二文芸部室、つまり由那の部屋へと集まっていた。


「でも、もうランキングが更新される時間よ。いいからそこを家主に空けなさい」

「やだって。だいたいここは第二文芸部室だ。つまり皆が平等に使う権利がある」

 部屋の家主である由那に向かい、優弥はまったくノートパソコンの前を譲る素振りを見せず、それどころか堂々と権利を主張した。


「第二文芸部室? そんなの、私は同意した覚えはないわ」

「そうだったか? まあいずれにしろ、ちょっと落ち着けって。どうせここを代わったら、お前更新ボタンを連打するつもりだろ。ベコノベサーバーに迷惑だから、そこでおとなしくしてろって」

 先程からせわしなく更新ボタンを連打する由那を見かねて、優弥は彼女が席を外したタイミングでこの席を奪いとっていた。

 一方、普段の学校での佇まいとは完全に異なり、冷静さのかけらもない由那は、優弥を力ずくでどかしにかかる。


「ちょっとだけよ、ちょっとだけならいいじゃない」

「ちょっとだけって言いながら、マウスを奪い取ろうとするのはやめろ」

 隙を突く形でマウスに手を伸ばしかけた由那を、優弥はどうにかブロックする。

 僕はソファーに腰掛けながら、そんな二人のやり取りを苦笑交じりに眺めていた。


「はは、ふたりともなかよしだね」

「お前のランキングだろうが!」

「そうよ、なんであんたが一番のんびりしてるのよ」

 僕の声に反発するかのように、二人の口からそれぞれ非難の言葉が発せられる。

 僕はそんな二人の言葉を受けて、鼻の頭を掻きながらその視線をソファーの隣の席の女性へと向けた。


「いや、一応気にしてはいるよ。彼女と違ってさ」

「愛ちゃんはいいのよ、今すごく忙しいみたいだし」

 僕が如月さんへと視線を移すなり、由那は間髪入れず擁護の声を発する。

 すると、その理由をすぐに察した優弥は、呆れた表情で彼女へと声を向けた。


「お前、ローズムーン読んでるから邪魔したくないだけだろ。そんなにいたいけな後輩を沼に沈めたいのか?」

「沼とは何よ、沼とは。ローズムーンに触れることはむしろ天国を知ることよ。幸せを後輩におすそ分けしようとするのを邪魔するなんて、きっとあなたは悪の使徒ね」

「なんだよ、悪の使徒って」

 向けられた言葉の意味がわからなかったのか、優弥は眉間にしわを寄せる。

 僕はそんな彼に向かい、由那に代わって解説を口にした。


「ローズムーンの敵のことだよ。ほら、こないだ由那に借りたときに、作中に出てきたでしょ」

「そういえばいたな、そんな奴も……って言うか、物事を何でもローズムーン基準にするのは止めろって」

 漫画の内容を思い出したのか、優弥はしぶしぶ頷きつつ、由那に向かって苦言を呈する。

 しかし由那は、そんな彼の発言に、不満そうな表情を浮かべる。


「なんでよ。すっごくわかりやすいじゃないの」

「わかんねえよ。普通は」

「だってローズムーンはまさに人生なのよ。むしろ例えを使ってもらったことに感謝して欲しいところね」

「うわぁ……マジかよ」

 由那の痛い言動を耳にして、優弥はドン引き気味に頬を引きつらせる。

 すると、そんな彼の反応に不満を覚えたのか、由那は強引にマウスを奪いにかかった。


「ともかく貸しなさい。文化の分からない石器人に、それは不要なものよ!」

「待てって、今俺がアクセスしようとしてるんだから……って、おい」

 そんなお互いに譲るという言葉を知らぬ奪い合い。

 その結果、アクセスしていたはずのウェブサイトのランキングは一番下の部分にまで、画面がスクロールしてしまった。


「はぁ……二人とも喧嘩はやめなよ。間を取って僕が操作するからさ」

「ん……まあ仕方ないか」

「わかったわ」

 二人はにらみ合いながらパソコンの前から一歩引き、代わりに僕がノートパソコンの前に座る。

 ブラウザは相変わらず、ページの一番下を示していた。

 僕はマウスを手に取ると、ゆっくりと画面を上に向かいスクロールしていく。


「それじゃあ、見ていくよ」

 発表されたコンテストのランキングを逆から見ていく形。

 そして最初に掲載されていたのは、佳作扱いとなる五位の作品だった。


「五位から発表か……確かに六位以下は賞金もないし、発表しても意味ないからな」

 優弥はそう口にすると、僕に向かって早く次を見せろと促してくる。

 背中を押された僕は、そのまま四位の作品を表示した。


「おお、『お転婆令嬢の探偵日記』がランクインしてるじゃねえか。ミステリーからの応募は少なかったし、一次選考の時は俺たちの後ろだったのにやるな」

 一次選考作品中、最下位だったはずのミステリー作品。

 その名前を四位に見つけた途端、優弥は驚きの声を上げた。


「たぶん、解決編で一気に票を集めたんだろうね」

「そうか、その手があったか! まさかこんなところで、どんでん返しが起きてるとはな」

 優弥は感心したような口ぶりでそう口にすると、何度も首を縦に振る。


「勝負は終わってみるまでわからないってことね。ともかく、次に行きましょ次に」

「うんそうだね。えっと……あれ?」

「消えていますね」

 ようやく部屋の隅で読んでいた本に一段落ついたのか、如月さんは画面を覗き込んでくると、思わずそうこぼす。

 確かにそこには、『このユーザーの作品は規約違反のため、運営により削除されました』との記載が存在した。


「このランキングの位置……たぶん鴉のやつだな。ようやく複数アカウントで運営に削除されたわけだ」

「ズルだけで私の原作権を掻っ攫おうなんて、百年早いのよ」

 優弥と由那は画面を見るなり、立て続けにそう口にする。

 僕はなんとも言えない気分となりながら、更にページを上にスクロールしていった。

 そしてそこには何度も目にすることになった、あの作品名が記されていた。


「おい、『女医令嬢の残念な恋』が二位だぜ! ってことは……」

「昴!」

 二人の声に後押しされて、僕はページの一番上まで画面をスクロールさせる。

 するとそこには一つの作品の名前が大賞の欄に記載されていた。


 そう、『悪役令嬢に転生したけど、気に入ったデザインの服がなかったので、自分で作ることにしました。』という僕の作品タイトルが。


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