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刻の召喚士  作者: jnsto
青年期 『王都ダインアレフ 竜を喰った女』
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第39話「新しい家族」

薬の運搬を適当にガルディアに任せて、俺達は魔狼の討伐依頼を受けてきた。さっきガルディアのおっさんに作ってもらったギルドカード。俺のファンクラブカードと似てるやつ。俺とココのランクはF。討伐依頼はEランクからなのだがAランクのハムリンがいるお陰で受けることができた。


王都に着いたのは昨日。今日無理矢理討伐依頼を受けたのにはちゃんと理由がある。………ちゃんとした理由ではないが。1つは今後こういった依頼を受けながら旅ができるのかどうか判断するため。もう1つは、若干家に居づらいからだ。


……旅に出ると告げるタイミングを逃しているだけなのだけど。さっさと言わないとなぁ…ただでさえ変態が増えて家の中での身の置き所に困っているというのに。結構大事なことなのに言っていないということが後ろめたい。その後ろめたさが逆に俺を行動的にさせている。さようならインドア。いってきますよアウトドア。


そんなことを考えながらも目の前の現実に目を向けなければいけない。ここはギルドの前。目の前にいるこの3匹の走竜。ちゃっかり防具まで装着している。ハムリンがドヤ顔でこちらを見ている。


「なんだこれは」

「走竜だ!いずれ旅に出るなら必要だろう!」


そんなことは聞かなくてもわかる。俺は"なんだこいつらは"ではなく"なんだこれは"と聞いたんだ。なんでこんなことになってるんだ。走竜を買うなんて15歳の子供がやることじゃないぞ。……まぁそれを言ったら奴隷が2人もいる時点でおかしいんだが。


「いつ買った」

「愛する人の奴隷になる直前だな!交渉に失敗したらこれを出してなんとか奴隷にしてもらおうと思っていた!」

「いつお前が交渉なんてしたんだ。あれは脅しだろ」


少し顔を逸らす変態。こいつは勢いだけではなくちゃんと考えた上で行動している気がする。だからこそ今ここで顔を逸らしやがったんだ。


「そうだったか?まあ愛する人がそう思うのならそうなんだろう。愛する人の中ではな」

「てめぇ………金がなかったのはそういうことか」


………今更だが、そんなことをしなくても、ただ単純に"仲間にしてくれ"と。そう素直に言えなかったのだろうか。…それともずっと1人だったから、そういうのがわからなかったのか。同年代の友達なんていなかったのだろう。周りはギルドの大人ばかりだったのだろう。こいつが出来ることは、金で釣るか、物で釣るか、脅すか。それしか方法がなかったんじゃないか。そんな考えが頭をよぎる。





「かわいいねリッカ君!ボクの分までありがとうハンニバルさん!ねえねえ!名前どうしようか!」


現実に上手いこと引き戻してくれてありがとうココ!……でも名前ねえ……三つの頭の竜か。駄目だ。金色のアイツしか思い出せない。もうこれにしよう。


「そこの茶色いのがキィン。緑っぽいのがグ-ギ。赤っぽいのがドォラ。これでいこう」

「かわいい!うん!よろしくね!キィン!グーギ!ドォラ!」

「………愛する人はそれでいいのか……?」


何かに気付いたようにハムリンがこちらを訝しげに見つめる。やめろよ照れちまうだろ。


「………ボケってわかりづらかったかなぁ……」

「………そのボケが小娘に通じるとは思ってなかっただろう?」

「まあな」


ココは3匹の走竜に囲まれながらとても嬉しそうに話しかけている。そうだなぁ、うちペットとか飼ってなかったからなぁ。本当は飼いたかったのかなぁ。俺の服の中で寝てるシィルで満足してくれるかなぁ。とか言ったらシィルに怒られそうだな。


「ボク、グーギに乗りたい!いいかな?」

「もう変更はきかないみたいだ。どうするんだ愛する人よ」

「このまま突き通すしかないだろ。俺はキィンにする」

「確かにな。私はドォラに乗ろう。おっ!お前は少しドライダに似て憎たらしい顔をしているな!仲良くなれそうだ!」



「ギィン!ギィン!」「グギィ!グギィ!」「ゴギャ!ゴギャ!」

「………発音しようとしてるのか?頭いいなお前ら。でも絶対連続でつなげるなよ。黒い怪物に倒されるぞ」



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



火竜ドライダの居た洞窟の近くの森。ハムリン曰く、ここは比較的強い魔獣もいなく初戦にはうってつけなのだそうだ。ここは薬草も良く取れるので商人もたまに利用するらしいのだが、最近になって急に魔狼が増えたらしい。今回の依頼のターゲットはこいつらだ。


魔狼。アラハンの近くでもよく見たが、実際討伐したことはなかったな。あの時は酒屋さんとひたすら対人戦を鍛えていたし。でも今後はそうも言っていられない。魔王軍と戦うことになる。アレクサンダーと戦う以外にも多くの魔族と戦うだろう。それを考えると、人型だけとの戦闘だけじゃ駄目だ。もっと経験を積み、強くならなくてはいけない。


「森の中は奴らの領域テリトリーだから危険だ。走竜達はここに置いていこう」

「お前結局その格好のまま来たな………こいつらは安全なのか?」

「自分の服にかける金がなかったからな。走竜に関しては一応防具も買ったし大丈夫だろう。戦闘能力で言えば走竜は強いぞ?こいつらは頭が良さそうだったから奴隷契約していないが、契約すればそれなりの魔力がリンクで流れてくる筈だ」

「……ったくお前は。もう奴隷契約はいいよ。こいつらが言うこと聞かなかったとしてもお前がなんとかしてくれそうだからな」

「…ん?まあ確かにな。たかが走竜に奴隷紋なんて使うまでもない。元々竜と暮らしていたしな。こいつらの言っていることはなんとなくわかる」

「今はなんて言ってるんですか?」

「"腹減った"だな。魔獣の尻尾さえ納品すればいいんだ。あとの肉はこいつらにくれてやるか!」

「なるほど。じゃあ頑張りますか。新しい仲間のためにも!」





新しい仲間のためにも。とっとと終わらせて服を買いに行こう。仲間だっていうのにいつまでもこんな格好をさせておくわけにはいかない。………ったく。金がないってなんだ。あまり言いたくないがお前は俺の奴隷だ。お前がそういう格好をしていると、俺がそうさせてるみたいじゃないか。俺はお前ほど変態じゃないんでね。ちゃんと服くらい着させてやる。


「うん!」

「ああ!」


お前が返事をするんじゃない。


「そうそうハムリン。俺達は初心者だからな。討伐依頼の助言とか貰ってもいいか?」

「……それはかまわないが……戦闘に関してはあまり良い助言は出来ないかもしれない。私は拘束魔法とナイフしか使えないんだ。あと、火炎系以外の魔法はドライダを喰って以降使えなくなった。つまり火炎系の拘束魔法しか使えん」


なんだその無駄な一点特化は。拘束魔法とナイフ。確かに効率は良さそうだが汎用性に欠けるだろ。空の敵とかどうするんだ。


「火炎魔法しか使えない理屈はまだわかるが。拘束魔法しか使えない理由はなんだ」

「………拘束系以外使う必要がなかったからな。その後食うことを考えれば」


食う?食うにしろなんにしろ攻撃魔法で焼けばなんとかなるんじゃないか?


「………まさか愛する人は肉を焼けばそのまま食えると思ってないか?まぁ前の知識があるとそう思うのも仕方ないか。いいか愛する人。魔獣を食うにも動物の肉を食うにも、血抜きは必須だ。まずは獲物を生きたままとらえ、ナイフで肝臓を刺してゆっくり失血死させる。十分に血が抜けた後で迅速に腹割り……内臓を取り出すことだな。腹割をして、体内で菌が繁殖しないように獲物を水で冷やす。まあ水で先に冷やしてもいいんだがな。私はそうしている。血抜きを行う理由は血が菌の温床だし、臭いからだ。火炎魔法で燃やして焦げた臭い肉をそのまま食うのは中々きつい…それで使わなくなるうちにやり方を忘れたんだ…」


忘れていた。こいつ、インテリ眼鏡に見えて一番の野生児だった。8歳から15歳位までは少なくともそうやって生きてきていたんだったな。そう思うと一気に心強く思えてきた。なんで変態になったんだこいつは。


「今日のも食うのか?」

「食わないわけないだろう勿体無い。それでも日本人か愛する人」


勿体無い精神か。久しく忘れていたな。勿体無いといいつつ産業廃棄物が多い国、日本。


「大型魔獣とかはどう討伐してたんだ?」

「変わらないな。動きを止めてナイフで刺すだけだ。そういえば小娘。愛する人が召喚術以外使い物にならないのは聞いているが、貴様は氷結魔法を使えるか?」

「酷い言われようだ」

「使えますけど……」

「なら魔獣を仕留めたら真っ先に氷結魔法で敵の体温を下げろ。肉が痛む」



「「……………」」



討伐依頼の助言は欲しいといったが、そういうことではない。決して。討伐した魔獣の美味しい食べ方を聞きたかったんじゃない。上手く討伐する方法を知りたかったんだ。でもこのサバイバル知識は凄まじいな。一緒に旅に出る仲間としてこれほど頼りになる奴はいないかもしれないな。


「狩りというのは基本は待ちだ。私ほど顔が知れていると魔狼は逃げていくからな。息を潜めて忍び寄って動きを止めて刺す。それだけだ」

「……なんか俺が想像してた討伐と違う」


なんかこう、それこそ某狩ゲーみたいなのを想像していたんだが…


「今回の魔狼がそうなだけだ。心配せずとも他の魔獣はちゃんと襲ってくる。……まぁ私はその時も全て動きを止めてナイフを刺すだけで変わらないのだがね」

「効率的ですね……流石ハンニバルさん……」


ココも感嘆している。確かに戦闘という意味では違うかもしれないが、そんなものこれからどうとでもなる。それよりも、生きるための知識を持っているというのはどんな学問よりも素晴らしいことなのかもしれない。


「いかに体力を消費しないで食料を調達するか。それがサバイバルの基本だからな!なんだったら昼は私が準備をしようか?愛する人に私の手料理を食べてもらいたいしな!そう思ってちゃんと調味料と料理道具は走竜に積んでおいたんだ!そうだ愛する人!食べたい?食べたいか?」


なんでこいつはこんなに一生懸命なんだろうか。なんでこんなにも俺達に尽くしてくれようとするのだろうか。……聞くまでもないな。仲間だからだ。ならそれをちゃんと家族という認識にしてやろう。


「いやいいや。おなか壊しそうだし」

「ボクもちょっと………」


ココと目配せをして、わざと無視をする。ココも気付いてるみたいだ。だけどここまで一生懸命だと少し悪戯をしたくなる。だってもう仲間だとこっちは認めてるわけだ。なのにこんなに必死にアピールしてくるなんて、俺達に失礼だろ?


「………なんだその目は。私はこれでもグルメなんだぞ。魔狼の肉は脂肪が少なく固めだが栄養豊富だ!茹でてちゃんと味付けすれば本当に美味しいんだぞ!王都と洞窟を行き来していた私だからこそわかる!王都の食べ物と比べても、魔狼の肉は美味だ!」


「ココ、俺母さんからサンドイッチ貰ってきたんだけど食べるか?」

「貰っていいの?ありがとうリッカ君!」

「愛する人!?私の手料理より母親の料理を選ぶのか!?マザコンか!?マザコンなのか!?いや、確かにお母様から渡された昼食を無碍にすることはできまい………だが愛する人は成長期だろう!?それでは足りないだろう!?そこでちゃんと動物性蛋白を摂取することによってーー」


「ハムリン。とっとと行くぞ。後でちゃんと食ってやるから」

「ハンニバルさん、行きますよ。早くしないとお昼の時間過ぎちゃいますよ」





「………あ、ああ。………そうだな。じゃあ、行こうか!」

徹夜明けでぼうっとしながら書いてます…ミスがあったらすみません…明日直します…

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