第34話「ピンク髪眼鏡の中身全裸の変態コート馬鹿」
「リッカ君!無事でよかった!心配したよ!!」
「あら遅かったわね。なんかやんちゃしてきたんだって?ココちゃん心配してたわよ。荷物も私達で運んだんですからね。全く…早くお風呂に入ってきなさい…ん?そちらはどなた?」
「お初にお目にかかる、お母様。私はハンニバル。愛する人の奴隷だ。なんだったら奴隷の前に"性"をつけてもかまわない。これから私はまるで家畜のように愛する人につき従うことになるだろうが、以後、よろしく頼む」
帰宅してすぐ。隣にいるピンク髪眼鏡の中身全裸の変態コート馬鹿がパンチの効いた自己紹介をしてくれた。
「リッカ~?お母さんちょっと話があるんだけど…?」
「…俺にはあんまりないんだけど?」
「リッカ君…ボクもお母さんを交えて…3人で、ちゃ~んと話したいかも?」
「…俺はそんなに話したくないかも?」
「なんだなんだ愛する人。私は混ぜてくれないのか?水臭いな」
「水臭い?そんな綺麗で澄んだもんじゃないよ?既にどろっどろに泥沼だよ?」
「リッカ君の浮気者!!!!」
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「はい、では経緯を話していただきます」
「ふぁい…」
「なんだ、なんで私達は正座させられているんだ?この半亜人は奴隷だろ?なんで奴隷がベッドに座って主たる愛する人がこのような仕打ちを受けているんだ?」
煩いぞ変態ツインテール眼鏡。お前が余計なことを言うと俺の頬の赤みが右だけでなく左にも追加されることになるんだ。お願いだから黙ってくれ。ココとこの馬鹿が言い争っている間に母さんが飽きてもう寝たのは好都合ではあったけど。ただそれもココにとっては焼け石に水程度だ。あ、泥水か。
「貴女には聞いていません。…リッカ君、全部話して。なんで奴隷が増えてるの?」
「事故です。俺は無実です」
「…私から話したほうがいいんじゃないか?私が賭けで負けた。で、惚れた。ギルドから逃げた愛する人を少々捕縛魔法で拘束して契約してもらった。帰りたかったら契約しろと脅したんだ」
「…何も言えない…言えないよ…展開が早すぎるよ…」
「わかる」
「…なんで奴隷を追加するのに奴隷の許可がいるかよくわからんのだが?どういうことだ愛する人?」
知らん。俺もわからん。でも今ここでは俺に自由に発言する権利なんてないんだ。それだけはわかる。俺は今何か抵抗するような発言をしたら美味しい野菜スープの出汁に…ああ、まだ同じことしてないからカレーか。カレーの出汁になってしまうかもしれないんだ。
「ちょっと、そもそも愛する人ってなんですか!?ボクはリッカ君の許婚です!リッカ君はボクのなんです!!」
「ボクのって何?」
出汁的な意味で?俺はとんこつか何かか?
「はっ!何を言い出すかと思えばこの小娘が。許婚?そんなものただの口約束か何かだろう。結婚しているならまだしも…いや結婚していても無意味だな。結婚している者が奴隷を持ってはいけないという法でもあるのか?作るのか?お前のような小娘にそんなことができるとは思えんな!」
「なるほど」
「…はあ!?さっきから小娘小娘って、貴女のほうがよっぽど子供みたいな身体してるじゃないですか!さっき見たときはパットでも入れてたんですか?今は随分と膨らみが貧相ですけど!?」
「鉄板ネタだな」
「…小娘、貴様少し上下で体重差があって身体のバランスがとりづらいからって調子にのるなよ?そんなもの大は小を兼ねるというわけではない。この世の万物はいずれ重力に負けて地に落ちるのだ。哀れだな?次に床に伏すのは貴様のその無駄にスペースをとった脂肪だろうよ?そんなものが優位性を持つのは若いうちだけだ馬鹿者め」
「………リ、リッカ君の隣は絶対ボクなんです……」
「隣?右隣か?左隣か?貴様とは逆側を私が貰うとしよう。愛する人、私は別に愛する人を独占しようとは微塵も思っていない。奴隷としてはこの小娘の方が先輩だ。甘んじて受け入れよう。だが本室がいるからとて側室がいらないわけでもあるまい?愛する人も男だ。こんな小娘より経験の…そういう経験があるわけではないが人生経験豊富な私の方が良いだろう?」
凄いなハムリン。顔が近いのが気に入らんが。若干ココが押されてる。1を話したら5で返してるような感じだしな。おれより会話術上手いんじゃないの。若干ココ涙目になってるし。
「…………ババア」
「ババア?は!?私はまだ19だ!!!」
「「マジで」」
…見た目的には20歳は超えていると思ったんだがな。20超えたらババアというわけじゃないぞ。そんな異常性癖を持った覚えはない。
「いや、まあいい。2人ともちょっと待ってくれ。ココもとりあえず落ち着いてくれ。勢いで契約したのは悪かった。でも契約は取り消そうと思えば、正規な手続きを踏めばちゃんと取り消せる」
「うん…そうだよね。…リッカ君も仕方なく契約しちゃったんだもんね…ごめんね」
(お前の時もそんなんだったけどな)
「無理だ。そんなことさせないからな」
「しね。でだ、俺達はずっとここにいるわけじゃない。本当にすぐに、王都から出て旅に出るだろう。そうなったらお前も困るだろ?」
「いや。困らないが」
「なんでだよ困れよ馬鹿かお前。3年は旅にでるぞ?」
「貴様達が旅に出ると思っていたからこそ、愛する人の奴隷になりたいと思ったんだ。あの馬鹿みたいな買物袋を見れば、愛する人が旅に出ることくらい誰でもわかるだろう」
「誰が馬鹿っ…」
「まあまあ。ココも落ちついて。お前も旅に出る予定だったのか?」
「ああ、そのために金を貯めていた」
「なるほど…」
何も考えなしに奴隷になったわけじゃないのか?実際、本当に俺に好意があるように思えない。何せさっきから変なことを言ってはいるが特に顔が赤くなったりそういうことはないからな。ここまで表面上何もわからないというのはおかしいだろう。何か俺に着いてくる他の理由があるのか?
「話は聞く。ただ、今のところまだお前を信用しきれない。さっきまで金を賭けて醜く争ってたわけだからな。俺とココを説得してみてくれ」
「…わかった。じゃあまず、何故旅に出たいかを話させてもらおう」




