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〈第九章あらすじ&登場人物紹介〉

===第九章 あらすじ===




 ルイフォンたちと和解したリュイセンは、タオロンと共に〈(ムスカ)〉の捕獲に向かった。いざ突入というとき、〈(ムスカ)〉が毒香で彼らを待ち受けていることにタオロンが気づく。


 一時撤退し、策を練り直したとき、リュイセンは、自分の取るべき道を悟る。そして、〈(ムスカ)〉に対して、『鷹刀一族の血族としての最期をを与える』と、正面から宣言する。


 初めは相手にしなかった〈(ムスカ)〉だが、リュイセンが大怪我を負っているにも関わらず、毒香をタオロンに任せ、『後継者』の自分が〈(ムスカ)〉を裁くことで〈(ムスカ)〉を一族に戻す、と手を差し伸べてくれたことを知り、リュイセンの愚かなまでの高潔さと優しさに心を打たれ、降伏した。




 一方、ルイフォンたちは、『リュイセンが〈(ムスカ)〉を捕らえたあと、オリジナルの死の理由を教えることを条件に、〈(ムスカ)〉におとなしく鷹刀一族の屋敷まで来るようにと交渉する』つもりでいたため、すっかり従順になった〈(ムスカ)〉に困惑した。


 しかし、話の途中で〈(ムスカ)〉の様子がおかしくなった。『最高の終幕(フィナーレ)』を思いついてしまったと言ってリュイセンを昏倒させ、『客としてこの館に入れるようにしたから、展望塔にいるメイシアを連れて、自分のところに来るように』とルイフォンに告げる。


 他に誰が来ても構わない、と言われたため、ルイフォン、ミンウェイ、エルファン、シュアンが〈(ムスカ)〉の館へと向かった。


 そして、ルイフォンはついにメイシアとの再会を果たした。




 案内として待っていたリュイセンとも再会し、一行は〈(ムスカ)〉と対面する。〈(ムスカ)〉の口調は相変わらずであったが、訝しんでいたルイフォンも敵意はないことを認めた。


(ムスカ)〉との『初対面の再会』を果たしたミンウェイは、想像以上に穏やかな〈(ムスカ)〉に動揺していた。〈(ムスカ)〉の知りたがっている『オリジナルの死の理由』すなわち、ミンウェイの自殺未遂の件を伝えるべきではないのではと悩む。


 そのときエルファンが進み出て、ミンウェイの気持ちを思えば、オリジナルに死を望む理由を聞いておくべきだったと懺悔する。そして、ミンウェイはオリジナルが死んだときの状況を知っていても、オリジナルの心は分からない。だから、オリジナルが何を考えたのか、同じ記憶を持つ〈(ムスカ)〉に答えてほしいと求める。


「君に生きていてほしいから」「(ヘイシャオ)がいるから、君が『死』を望んだ。だから、君が生きていけるように、(ヘイシャオ)は自分が消えることにしたんだ」という〈(ムスカ)〉の言葉に、ミンウェイは泣き崩れた。




(ムスカ)〉は満たされた思いで、頭を切り替え、『最高の終幕(フィナーレ)』についての口火を切る。それはすなわち、『メイシアを〈悪魔〉の契約から解放するため、〈(ムスカ)〉が命と引き換えに、ルイフォンたちに王族(フェイラ)の『秘密』を教える』というものであった。


 ルイフォンは、〈(ムスカ)〉の心の内にある、さまざまな思いを噛みしめ、敬意と称賛を込めて「最高の終幕(フィナーレ)だ」と認めた。


(ムスカ)〉は、話の途中で事切れたときの保険にと、まずルイフォンに、王族(フェイラ)の『秘密』のすべてを記した記憶媒体を渡した。そして、語り始める。『白金の髪、青灰色の瞳という、王の異色は、先天性白皮症(アルビノ)に依るものだ』と。




 今の王朝ができる以前の、(いにしえ)の王の時代。この国の片隅に先天性白皮症(アルビノ)の者が多く生まれる里があった。この里の者が今の王族(フェイラ)の先祖である。黒髪黒目の人間しか見たことのなかった(いにしえ)の王は、美しい姿をした異色の者は、神への『供物』だと信じて捕らえ、神に捧げると言って殺していった。


 先天性白皮症(アルビノ)の症状のひとつに視力障害があるが、その里の出身の男子は必ず盲目だった。あるとき、供物になるのを待つばかりだった少年が、一矢報いたいと、そのためには周りの様子を知りたいと願った。そして、脳を進化させ、『他者から視覚情報を奪う』能力を手に入れた。その能力は『視覚』にとどまらず、『他者の脳から、情報を奪う』能力――創世神話に(うた)われる『地上のあらゆることを見通す瞳』となった。


 この話を聞いたルイフォンは、王の能力――王の『秘密』が、〈天使〉に酷似していることに気づく。案の定、〈(ムスカ)〉は『〈天使〉は王の脳細胞をもとに人工的に作られたもの』だと答えた。




 時代は流れ、『他者の脳から、情報を奪う』能力は、盲目である異色の男子すべてに表れるようになった。王族(フェイラ)の先祖は、その能力をちらつかせることで警護役だった鷹刀一族の先祖を味方に引き込み、(いにしえ)の王を(たお)して自らが王となった。


 王は、異色を神聖なものとするために〈神の御子〉を自称し、神の代理人として国を治めた。また、盲目は弱点であり、情報を奪う能力は切り札となるため、王族(フェイラ)の『秘密』として隠されるようになった。


 初めは『傍らにいる他者』から情報を奪う程度だった能力は、やがて複数の〈神の御子〉の能力が絡み合い、国中の情報を無制限に収集する巨大な情報回路(ネットワーク)がとなった。しかし、〈神の御子〉たちの脳に過剰な負荷が掛かり、命を落とす者が出てきた。


 この事態を憂いた時の王は、自分の死後、自分の脳細胞を使って無限の容量(キャパシティ)を持った『人工の脳』を作り、〈神の御子〉たちの負荷を分散させる連携構成(クラスタシステム)を構築するように命じた。こうして誕生したのが『死んだ王の脳細胞から作られた巨大な有機コンピュータ〈冥王(プルート)〉』である。


冥王(プルート)〉は、王の死出の旅路の供として、近くに生き埋めにされていた鷹刀の護衛の血肉を喰らい、動力源としたため、その後、長く、鷹刀の者たちが〈(にえ)〉として捧げられるようになった。




冥王(プルート)〉が『光の(たま)』の姿をしていると聞いたルイフォンは、母キリファの作った〈ケル〉や〈ベロ〉と酷似していることに気づく。つまり、〈冥王(プルート)〉を破壊するために作られた〈ケルベロス〉は、〈冥王(プルート)〉と同じく有機コンピュータであり、母は自分の脳を使って〈スー〉を作るために死んだのだと悟った。




 最後に〈(ムスカ)〉は、ルイフォンとメイシアに、処分も視野に入れた上で、『ライシェン』を託した。また、オリジナルは盲目であったが、〈(ムスカ)〉の作った『ライシェン』は、セレイエの――正確には〈影〉のホンシュアの依頼で、目が見えるように作ったと告げる。


 唖然とするルイフォンに、セレイエの記憶を持つメイシアが、『オリジナルのライシェンは、〈神の御子〉の男子が持つ『情報を読み取る』能力に加え、〈天使〉のセレイエから受け継いだ『情報を書き込む』能力も持っていた』と語る。そして、ライシェンは自分に向けられた殺意を読み取り、自衛のために人を殺したため、危険だと判断した先王に殺されたのだ、と。


 セレイエは、蘇生した『ライシェン』には、他人の感情を読み取ってほしくないと願った。故に、目の見える肉体を求めて、『死んだ天才医師〈(ムスカ)〉』を蘇らせたのだった。




 いよいよ〈(ムスカ)〉の命が尽きようとしたとき、彼の看取りには、彼の(ペア)として作られたらしい硝子ケースの中の『彼女』も同席すべきだと、リュイセンが彼女を迎えに行く。すると眠ったまま目覚めないはずの彼女が苦しんでいた。慌てて外に出すと、彼女は〈(ムスカ)〉とひとつの命を共有する存在で、オリジナルのヘイシャオが望んだ『比翼連理の夢』だと言う。


 自分のせいで彼女まで死んでしまうと〈(ムスカ)〉は悔やむが、彼女は『眠ったままでは生きていると言えない。今、こうして触れ合える刹那こそ生きていると言える。願いが叶った』と告げる。


 そして、ふたりは満ち足りた顔で、幸せそうに息を引き取った。




(ムスカ)〉の死後、ルイフォンは『ライシェン』を連れて行くと即断し、一同は出発の準備に掛かる。その途中で、展望塔から合流したタオロンが、〈(ムスカ)〉が娘のために用意した部屋を見てほしいと、ミンウェイに申し出る。


(ムスカ)〉の用意した部屋は、幼いころのミンウェイの部屋そのものだった。タオロンは、「〈(ムスカ)〉は『娘のミンウェイ』を深く愛していた」と熱弁して去っていった。それとすれ違うように、シュアンが現れる。シュアンは「ミンウェイを追ってくれ」とリュイセンに頼まれたのだ。


「タオロンは、あんたの傷をえぐりまくった」と言うシュアンに、ミンウェイは噛みつくが、「あんたの欲しかった愛は、『娘』としてじゃねぇんだ」「なのに、『娘として愛されていた』と繰り返し言われて、辛くないわけがないだろう!?」という言葉に、泣き崩れた。


『失恋』したのだと、シュアンに言われ、納得しつつあったミンウェイ。しかし、会話の途中で、幼いころに求婚してくれた男の子を、父の命令で殺したことを思い出す。その子への贖罪として自分は幸せになってはいけない、『失恋』なんてもってのほか、そもそも自分には誰かを愛し、幸せになる資格などなかったのだと叫ぶ。


 そのとき、いつもミンウェイのそばに座るくせに、決して彼女に触れることのなかったシュアンが、彼女を抱きすくめた。そして、「あんたが幸せになってもならなくても、罪は罪。ならば、あんたの()すべきことは、本当に『あんたが幸せにならないこと』なのか?」と厳しくも正しいことを言う。


 その言葉を胸に、ミンウェイはようやく〈(ムスカ)〉に――『父親』に別れを告げることができたのだった。






===登場人物===




鷹刀(たかとう)ルイフォン


 凶賊(ダリジィン)鷹刀一族総帥、鷹刀イーレオの末子。十六歳。


 ――ということになっているが、本当は次期総帥エルファンの息子なので、イーレオの孫にあたる。


 母親のキリファから、〈(フェレース)〉というクラッカーの通称を継いでいる。


 端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。


 長髪を後ろで一本に編み、毛先を母の形見である金の鈴と、青い飾り紐で留めている。


 凶賊(ダリジィン)の一員ではなく、何にも属さない「対等な協力者〈(フェレース)〉」であることを主張し、認められている。




※「ハッカー」という用語は、本来「コンピュータ技術に精通した人」の意味であり、悪い意味を持たない。むしろ、尊称として使われている。


 対して、「クラッカー」は、悪意を持って他人のコンピュータを攻撃する者を指す。


 よって、本作品では、〈(フェレース)〉を「クラッカー」と表記する。




メイシア


 もと貴族(シャトーア)で、藤咲(ふじさき)家の娘。十八歳。


 ルイフォンと共に居るために、表向き死亡したことになっている。


 箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。


 すなわち、育ちの良さから人を疑うことはできないが、状況の矛盾から嘘を見抜く。


 白磁の肌、黒絹の髪の美少女。


 王族(フェイラ)の血を色濃く引くため、『最強の〈天使〉の器』としてセレイエに選ばれ、ルイフォンとの出逢いを仕組まれた。


 セレイエの〈影〉であったホンシュアを通して、セレイエの『記憶』を受け取った。






[鷹刀一族]


 凶賊(ダリジィン)と呼ばれる、大華王国マフィアの一族。


 秘密組織〈七つの大罪〉の介入により、近親婚によって作られた「強く美しい」一族。


 ――と、説明されていたが、実は、有機コンピュータ〈冥王(プルート)〉を維持するための〈(にえ)〉を強いられてきた一族であった。




鷹刀イーレオ


 凶賊(ダリジィン)鷹刀一族の総帥。六十五歳。


 若作りで洒落者。


 かつては〈七つの大罪〉の研究者、〈悪魔〉の〈獅子(レオ)〉であった。




鷹刀エルファン


 イーレオの長子。次期総帥。


 ルイフォンとは親子ほど歳の離れた異母兄弟ということになっているが、実は父親。


 感情を表に出すことが少ない。冷静、冷酷。




鷹刀リュイセン


 エルファンの次男。イーレオの孫。十九歳。本人は知らないが、ルイフォンの異母兄にあたる。


 文句も多いが、やるときはやる男。


『神速の双刀使い』と呼ばれている。


 長男の兄が一族を抜けたため、エルファンの次の総帥になる予定であり、最後の総帥となる決意をした。




鷹刀ミンウェイ


 母親がイーレオの娘であり、イーレオの孫娘にあたる。


 ――ということになっていたが、実は『父親』と思っていたヘイシャオが、不治の病の妻を『蘇生』するために作った、妻から病気の因子を取り除いたクローン。


 妻が『蘇生』を拒絶し、クローンを『娘』として育てるように遺言したため、心を病んだヘイシャオに、溺愛という名の虐待を受ける羽目になってしまった。


 緩やかに波打つ長い髪と、豊満な肉体を持つ絶世の美女。ただし、本来は直毛。二十代半ばに見える。


 薬草と毒草のエキスパート。医師免状も持っている。


 かつて〈ベラドンナ〉という名の毒使いの暗殺者として暗躍していた。


 現在は、鷹刀一族の屋敷を切り盛りしている。




草薙チャオラウ


 イーレオの護衛にして、ルイフォンの武術師範。


 無精髭を弄ぶ癖がある。




料理長


 鷹刀一族の屋敷の料理長。


 恰幅の良い初老の男。人柄が体格に出ている。




キリファ


 ルイフォンの母。四年前に当時の国王シルフェンに首を落とされて死亡。


 天才クラッカー〈(フェレース)〉。


〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈(スコリピウス)〉に〈天使〉にされた。


 また〈(スコリピウス)〉に右足首から下を斬られたため、歩行は困難だった。


 もとエルファンの愛人で、セレイエとルイフォンを産んだ。


 ただし、イーレオ、ユイランと結託して、ルイフォンがエルファンの息子であることを隠していた。


 ルイフォンに『手紙』と称し、人工知能〈スー〉のプログラムを託した。




〈ケル〉〈ベロ〉〈スー〉


 キリファが、〈冥王(プルート)〉を破壊するために作った三台の兄弟コンピュータ。


 表向きは普通のスーパーコンピュータだが、それは張りぼてである。


 本体は、人間の脳から作られた有機コンピュータ。光の(たま)の姿をしている。


〈ベロ〉の人格は、シャオリエのオリジナル『パイシュエ』である。


〈ケル〉は、キリファの親友といってもよい間柄である。


〈スー〉は、ルイフォンがキリファの『手紙』を正確に打ち込まないと出てこないのだが、所在は、もと〈(スコリピウス)〉の研究所にあることが分かっている。また、キリファの人格を持っていると推測されている。




セレイエ


 エルファンとキリファの娘。


 表向きは、ルイフォンの異父姉となっているが、同父母姉である。


 リュイセンにとっては、異母姉になる。


 生まれながらの〈天使〉。


 王族(フェイラ)のヤンイェンと恋仲になり、ライシェンという〈神の御子〉を産んだ。


 先王シルフェンにライシェンを殺されたため、「ルイフォンの中に封じた、ライシェンの『記憶』」と「〈(ムスカ)〉に作らせた『肉体』」を使って、ライシェンを生き返らせる計画――『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)』を企てた。


 ただし、セレイエ本人は、ライシェンの記憶を手に入れるために〈天使〉の力を使い尽くし、あとのことは〈影〉のホンシュアに託して死亡した。


『最強の〈天使〉』となり得るメイシアを選び、ルイフォンと引き合わせた。


 メイシアのペンダントの元の持ち主で、『目印』としてメイシアに渡した。




パイシュエ


 イーレオ曰く、『俺を育ててくれた(ひと)』。


 故人。鷹刀一族を〈七つの大罪〉の支配から解放するために〈悪魔〉となり、その身を犠牲にして未来永劫、一族を〈(にえ)〉にせずに済む細工を施した。


 自分の死後、一族を率いていくことになるイーレオを助けるために、シャオリエという〈影〉を遺した。


 また、どこかに残されていた彼女の何かを使い、キリファは〈ベロ〉を作った。


 すなわち、パイシュエというひとりの人間から、『シャオリエ』と〈ベロ〉が作られている。






[〈七つの大罪〉・他]




〈七つの大罪〉


 現代の『七つの大罪』=『新・七つの大罪』を犯す『闇の研究組織』。


 実は、王の私設研究機関。


 王家に、王になる資格を持つ〈神の御子〉が生まれないとき、『過去の王のクローンを作り、王家の断絶を防ぐ』という役割を担っている。




冥王(プルート)


 他人の脳から情報を読み取ることによって生じる、王族(フェイラ)の脳への負荷を分散させるために誕生した連携構成(クラスタシステム)


 太古の昔に死んだ王の脳細胞から生まれた巨大な有機コンピュータで、鷹刀一族の血肉を動力源とする。


『光の(たま)』の姿をしており、神殿に収められている。




〈悪魔〉


 知的好奇心に魂を売り渡した研究者を〈悪魔〉と呼ぶ。


〈悪魔〉は〈神〉から名前を貰い、潤沢な資金と絶対の加護、蓄積された門外不出の技術を元に、更なる高みを目指す。


 代償は体に刻み込まれた『契約』。――王族(フェイラ)の『秘密』を口にすると死ぬという、〈天使〉による脳内介入を受けている。




『契約』


〈悪魔〉が、王族(フェイラ)の『秘密』を口外しないように施される脳内介入。


 記憶の中に刻まれるため、〈七つの大罪〉とは縁を切ったイーレオも、『契約』に縛られている。


 また、〈悪魔〉であったセレイエの記憶を受け継いだメイシアや、パイシュエの記憶を使って作られた〈ベロ〉も、『契約』に縛られている。




〈天使〉


『記憶の書き込み』ができる人体実験体。


 脳内介入を行う際に、背中から光の羽を出し、まるで天使のような姿になる。


〈天使〉とは、脳という記憶装置に、記憶(データ)命令(コード)を書き込むオペレーター。いわば、人間に侵入(クラッキング)して相手を乗っ取るクラッカー。


 羽は、〈天使〉と侵入(クラッキング)対象の人間との接続装置(インターフェース)であり、限度を超えて酷使すれば熱暴走を起こす。




〈影〉


〈天使〉によって、脳を他人の記憶に書き換えられた人間。


 体は元の人物だが、精神が別人となる。




『呪い』・便宜上、そう呼ばれているもの


〈天使〉の脳内介入によって受ける影響、被害といったもの。悪魔の『契約』も『呪い』の一種である。


 服従が快楽と錯覚するような他人を支配する命令(コード)や、「パパがチョコを食べていいと言った」という他愛のない嘘の記憶(データ)まで、いろいろである。




『di;vine+sin;fonia デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)


 セレイエによる、殺された息子ライシェンを生き返らせるための計画。


『di』は、『ふたつ』を意味する接頭辞。『vine』は、『(つる)』。


 つまり、『ふたつの(つる)』――転じて、『二重螺旋』『DNAの立体構造』――『命』の暗喩。


『sin』は『罪』。『fonia』は、ただの語呂合わせ。


 これらの意味を繋ぎ合わせて『命に対する冒涜』と、ホンシュアは言った。




ヘイシャオ


〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈(ムスカ)〉。ミンウェイの『父親』。故人。


 医者で暗殺者。


 病弱な妻のために〈悪魔〉となった。


 妻の遺言により、妻の蘇生のために作ったクローン体を『娘』として育てていくうちに心を病んでいった。


 十数年前に、娘のミンウェイを連れて現れ、自殺のようなかたちでエルファンに殺された。




現在の〈(ムスカ)


 セレイエが『ライシェン』を作らせるために、蘇らせたヘイシャオ。


 セレイエに吹き込まれた嘘のせいでイーレオの命を狙い、鷹刀一族と敵対していたが、リュイセンによって心を入れ替えた。


 メイシアを〈悪魔〉の『契約』から解放するため、自ら王族(フェイラ)の『秘密』を口にして死亡した。




ホンシュア


 殺されたライシェンの侍女であり、自害するくらいならとセレイエの〈影〉となって『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)』に協力した。体は〈天使〉化してあった。


〈影〉にされたメイシアの父親に、死ぬ前だけでも本人に戻れるような細工をしたため、体が限界を超え、熱暴走を起こして死亡。


 メイシアにセレイエの記憶を潜ませ、鷹刀に行くように仕向けた、いわば発端を作った人物である。




(サーペンス)


 セレイエの〈悪魔〉としての名前。


(ムスカ)〉が、セレイエの〈影〉であるホンシュアを〈(サーペンス)〉と呼んでいたため、ホンシュアを指すこともある。




ライシェン


 ヤンイェンとセレイエの息子で、〈神の御子〉。


〈神の御子〉の男子が持つ『情報を読み取る』能力に加え、〈天使〉のセレイエから受け継いだ『情報を書き込む』能力を持っていた。


 彼の力は、〈天使〉の羽のように自分と相手を繋ぐことなく、〈神の御子〉のように手も触れずに扱えたため、先王シルフェンは彼を『神』と呼ぶしかないと言い、『来神(ライシェン)』と名付けた。


 周りの『殺意』を感じ取り、相手を殺してしまったために、先王に殺された。




『ライシェン』


(ムスカ)〉が、セレイエに頼まれて作った、ライシェンのクローン体。


 オリジナルのライシェンは盲目だったが、周りの『殺意』を感じ取らずにすむようにと、目が見えるように作られた。


 凍結処理が施され、ルイフォンとメイシアに託された。




斑目タオロン


 よく陽に焼けた浅黒い肌に、意思の強そうな目をした斑目一族の若い衆。


 堂々たる体躯に猪突猛進の性格。


 二十四歳だが、童顔ゆえに、二十歳そこそこに見られる。


(ムスカ)〉の部下となっていたが、娘のファンルゥに着けられていた毒針の腕輪が嘘だと分かり、ルイフォンたちの味方になった。




斑目ファンルゥ


 タオロンの娘。四、五歳くらい。


 くりっとした丸い目に、ぴょんぴょんとはねた癖っ毛が愛らしい。






[藤咲家・他]




藤咲ハオリュウ


 メイシアの異母弟。十二歳。


 父親を亡くしたため、若年ながら藤咲家の当主を継いだ。


 十人並みの容姿に、子供とは思えない言動。いずれは一角の人物になると目される。


 異母姉メイシアを自由にするために、表向き死亡したことにしたのは彼である。


 女王陛下の婚礼衣装制作に関して、草薙レイウェンと提携を決めた。




藤咲コウレン


 メイシア、ハオリュウの父親。厳月家・斑目一族・〈(ムスカ)〉の陰謀により死亡。




藤咲コウレンの妻


 メイシアの継母。ハオリュウの実母。


 心労で正気を失ってしまい、別荘で暮らしていたが、メイシアがお見舞いに行ったあとから徐々に快方に向かっている。




緋扇(ひおうぎ)シュアン


『狂犬』と呼ばれるイカレ警察隊員。三十路手前程度。イーレオには『野犬』と呼ばれた。


 ぼさぼさに乱れまくった頭髪、隈のできた血走った目、不健康そうな青白い肌をしている。


 凶賊(ダリジィン)の抗争に巻き込まれて家族を失っており、凶賊(ダリジィン)を恨んでいる。


 凶賊(ダリジィン)を殲滅すべく、情報を求めて鷹刀一族と手を結んだ。


 敬愛する先輩が〈(ムスカ)〉の手に堕ちてしまい、自らの手で射殺した。


 似た境遇に遭ったハオリュウに庇護欲を感じ、彼に協力することにした。


 




[王家・他]


白金の髪、青灰色の瞳の先天性白皮症(アルビノ)の者が多く生まれる里を起源とした一族。


王家に生まれた先天性白皮症(アルビノ)の男子は必ず盲目であり、代わりに他人の脳から『情報を読み取る』能力を持つ。


 この特殊な力を持つ者を王としてきたため、先天性白皮症(アルビノ)の外見を持つ者だけが〈神の御子〉と呼ばれ、王位継承権を有する。かつては男子のみが王となれたが、現在では〈神の御子〉が生まれにくくなったために女王も認めている。ただし、あくまでも仮初めの王である。




アイリー


 大華王国の現女王。十五歳。


 彼女の婚約を開始条件(トリガー)に、すべてが――『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)』が始まった。


 メイシアの再従姉妹(はとこ)にあたるが、メイシア曰く『私は数多の貴族(シャトーア)のひとりに過ぎなかった』。




シルフェン


 先王。四年前、腹心だった甥のヤンイェンに殺害された。


〈神の御子〉に恵まれなかった先々王が〈七つの大罪〉に作らせた『過去の王のクローン』である。




ヤンイェン


 先王の甥。女王の婚約者。


 実は先王が〈神の御子〉を求めて姉に産ませた隠し子で、女王アイリーや摂政カイウォルの異母兄弟に当たる。


 セレイエとの間に生まれたライシェンを殺されたため、その復讐として先王を殺害した。


 メイシアの再従兄妹(はとこ)にあたる。




カイウォル


 摂政。女王の兄に当たる人物。


 摂政を含む、女王以外の兄弟は〈神の御子〉の外見を持たないために、王位継承権はない。


 異母兄にあたるヤンイェンとの結婚を嫌がる妹、女王アイリーのため、ハオリュウに『君が女王の婚約者になれば、女王の結婚が延期される』と陰謀を持ちかけた。






[草薙家]




草薙レイウェン


 エルファンの長男。リュイセンの兄。


 エルファンの後継者であったが、幼馴染で妻のシャンリーを外の世界で活躍させるために


鷹刀一族を出た。


 ――ということになっているが、リュイセンに後継者を譲ろうと、シャンリーと画策したというのが真相。


 服飾会社、警備会社など、複数の会社を興す。


 


草薙シャンリー


 レイウェンの妻。チャオラウの姪だが、赤子のころに両親を亡くしたためチャオラウの養女になっている。


 王宮に召されるほどの剣舞の名手。


 遠目には男性にしかみえない。本人は男装をしているつもりはないが、男装の麗人と呼ばれる。


 タオロンの人柄と腕っぷしを評価し、彼をレイウェンの会社にと推薦した。




草薙クーティエ


 レイウェンとシャンリーの娘。リュイセンの姪に当たる。十歳。


 可愛らしく、活発。




鷹刀ユイラン


 エルファンの正妻。レイウェン、リュイセンの母。


 レイウェンの会社の専属デザイナーとして、鷹刀一族の屋敷を出た。


 ルイフォンが、エルファンの子であることを隠したいキリファに協力して、愛人をいじめる正妻のふりをしてくれた。


 メイシアの異母弟ハオリュウに、メイシアの花嫁衣装を依頼された。






[繁華街]




シャオリエ


 高級娼館の女主人。年齢不詳(若くはないはず)


 外見は嫋やかな美女だが、中身は『姐さん』。


 実は〈影〉であり、イーレオを育てた、パイシュエという人物の記憶を持つ。




スーリン


 シャオリエの店の娼婦。


 くるくる巻き毛のポニーテールが似合う、小柄で可愛らしい少女。ということになっているが妖艶な美女という説もある。


 本人曰く、もと女優の卵である。実年齢は不明。






===大華王国について===




 黒髪黒目の国民の中で、白金の髪、青灰色の瞳を持つ王が治める王国である。


 身分制度は、王族(フェイラ)貴族(シャトーア)平民(バイスア)自由民(スーイラ)に分かれている。


 また、暴力的な手段によって団結している集団のことを凶賊(ダリジィン)と呼ぶ。彼らは平民(バイスア)自由民(スーイラ)であるが、貴族(シャトーア)並みの勢力を誇っている。



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