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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

トクベツなガッコウキュウショク

作者: 詠月寂夜

昭和戦前の雰囲気を濃く残しているムラは、こんな感じで都会から来れば異国同然で、噛み合わないところばかりですよね。郷に入りては郷に従えって言葉もありますが、自分が正しいと思い押し通そうとすれば、アウェイだってことに気づかされます。常識は普遍ではありません。上辺と底も違います。書き割りの裏は、どうなっているでしょうか?そこまで読んで貰えたら、恐悦至極。

 私たちが住んでいる町は、どちらかと言うと、いや、はっきり言って田舎だ。多分同じ県内でも、地元でなければ憶えている者が少ない地名だろう。憶えている者でも、県内の地名を上げていけば、間違いなく最後辺りにうろ覚えで思い出せるかだろう。電車なんて来た試しがない。バスの停留所という物があるが、誰かがどこからか酔った勢いで持ってきて、そのまま案山子代わりに立たされている。車と言えば、すれ違うのに骨が要る狭いところを、ケートラが轍の深い野良道を往復しているだけだ。電話も黒いのが家にあるけど、ジコジコ回して掛けるより、居そうな所は解っているのだから直接顔を合わせる方が早い。

 時折、おめかしした服を着ている人を見かけるが、決まって余所者だ。中には引っ越してきたという者が居るが、訳も分からないことばかり言って、混ざろうとしない者が多い。自分達が、どこか外国の言葉ばかり使って変なことを言っている癖に、私達が悪いみたいな事を言って孤立しようとする。余所者だから、余所者らしく、私達と混ざりたくないんだろう。それって、寂しくないのかな。


 余所者は、大人達もそうだから、その子、分校に来る子も同じ様に文句を言うように成る子が少なくない。最初は、先生が教えてくれるお勉強から始まる。学校では年が違う子も一緒の部屋で教わるが、お兄ちゃん達が自分でも解ることを今頃遣っていると言い出したりもする。それだけでなく、横から手を出し答えてしまう。先生は一応その子を誉めたりもするが、他の子の勉強を邪魔しないように注意はする。けど、殆どの場合聞こうとしない。出された課題はとっくに終わった。つまらないから、お姉ちゃん達の分を遣って上げるけど、それもまた遅れているからつまらないと言い出す。そうして、自分から独りに成りたがるのに、親には私たちが悪いと言って、昼から母親が先生をいじめに来て、楽しみにしているお勉強を邪魔して駄目にしてしまうのだ。何で余所者たちは、同じ様にああなんだろう。


 勉強だけでなく、学校給食もそうだ。私たちの分校では、決まった人が一人居るが、お母さん達が回り持ちで手伝いに来る。その時、畑でとれたからと言って、作物などを持ち込むことも多い。時には、瑞々しい果物だったりもする。同じ料理でも、手伝いのお母さん達によって味付けが違うから、今日の手伝いのお母さんは誰だとか当てっこするのも楽しみの一つだ。

 なのに、あの子達は決まったようにそうする。朝取ってきた御野菜ばかりなのに、美味しくない、いえ、不味いと大声で言い切る。そして、必ず残すのだ。お母さん達が御仕事を休んでまで作ってくれているのに、本当に勿体無いことをする。こんなに美味しいんだよと教えた子も居たけど、耳に入れず逆に給食をその子に投げつけさえするのだ。最初その子は何をされたか解っていなかったようだが、途端に泣き出し分校から逃げ帰ってしまった。みんなが止める間もなかったが、今日の給食の味付けから、今日のお手伝いがその子のお母さんだって事は気付いていた。その事をあの子達は知らない。午後もずっと文句言っていて、嫌いな物ばかりとか味付けがどうとか、何か聞いたこともない外国の食べ物がどうとか言って、私達や先生まで睨みつけてばっかりだ。その晩寄り合いがあったようだが、お父さん達はいつもそうだけど子供の私達には話してくれなかった。


 その日から、学校給食は美味しくなくなった。違う。お母さん達が作ってくれる給食は変わらないはずなのに、雰囲気で美味しくなくなってしまう。あの子達は給食をろくに食べようとしないばかりか、不味い不味いと文句を言いながら、給食を藪か何かをつつく様に突っつき出す。食べる振りをして、いきなり戻すのだ。挙げ句の果てに唾を吐き、毒を食わせたとまで言い張る。それを聞いてしまった子が悲鳴を上げると、その子の元に行って、髪の毛を引っ張り殴りつけたりする。挙げ句に、止めようとする子と大喧嘩になる。それだけに留まらず、どこから聞きつけたのか、あの子達の親が毎回のように怒鳴り込んできて、その日の楽しいはずの授業がなくなってしまう。

 どうしてこうなるのかな。給食は毎日美味しいのに、何であの子達は美味しくない不味いって言えるんだろう。そう言って、あの子達の親が、豚さえ食えない物に出す金はない。金が欲しかったら、先ず人が食える料理を出せと怒鳴っているのも聞こえてしまった。私達はみんな学校給食費は払っているし、その上腹一杯食べて欲しいからと親達の畑から作物を手土産に持ち寄って、代わり番こに作ってくれている。あの子達の親は畑こそ持っていないが、手伝いに来たことさえない。只でも、感謝して食べずに文句で返す。あれでは皆が怒るのも仕方ない。外から来た人たちは、皆同じように繰り返す。何故私達をそこまで嫌うのだろう。嫌うのに、何故わざわざ来るのだろう。


 あの特別な給食でも、美味しくないって言うのかな。いつもの給食も美味しいけれど、偶に食べられる特別な給食は本当に美味しい。分校の一角に畑があって、そこで穫れた作物を使った特別な給食。苗だか肥料だかが特別でなかなか手に入らないらしい。手に入った時だけ、皆の畠でなく分校の畠に植えて、お父さん達が代わり番こに育てて、皆で採り入れる。そのまま出荷せずに、皆特別な給食に使う。その時だけは、いつも手伝いに来ているお母さん達が総出で料理して、お父さん達も仕事を抜けて来て、皆で特別な給食を食べることになる。分校の皆や家族集まって大勢で食べる料理が美味しいが、分校とその家族まで合わさって本当に大勢で食べる給食は、本当に特別で美味しい。給食のお祭りだ。毎年決まった時に必ず食べられるわけではないが、だからこそ特別な給食は特別美味しいのだ。だから、分校の畠を掘り起こし始めると、私達も手伝う。それは特別な給食と言うお祭りの準備で、わくわくする楽しみのためにやるからこそ、皆で遣るからこそより楽しいのだ。

 そう言えば、それにあの余所の子達が参加する事も無いなと思った。本当の事言うと、偶にしかない特別な給食で、皆楽しみに準備しているのに、あの様なギスギスする雰囲気にして欲しくない。それさえないなら、この特別な給食を分かち合いたい位なのに。特別な給食を一度でも食べれば、あの様におかしな事を言って、皆の雰囲気を悪くしたりしないだろうに。本当に残念だ。居たたまれなくして、いつもいつもあの子達が出て行ってしまうのが数ヶ月早過ぎるのだ。学校給食に限らず食べ物は美味しいし、ここは良いところだと思うのだけど、余所の子等は、何故もあの様に拒絶するのだろう。


 そう思っていたら、またあの子等が行ってしまった。親の仕事の都合と言う事だが、結局は馴染めなかったのだろう。何で仲良くできないのかな。私達を嫌い、嫌いだって言うために来たんだろうか。訳が分からないよ。余所では、仲良くしないのが当たり前何だろうか。だとしたら、私達は余所になんて行きたくないな。ここで美味しい物食べて、皆で仲良く笑っていたい。

 そんなある日、小父さん達が分校の畠をおこしていた。分校が終わったら私達も手伝おう。そしてあの子達の事は忘れ、楽しい毎日と美味しいだけの学校給食を取り戻すんだ。皆で作った特別な給食を皆で食べて。その時、余所からの子が居たら、今度こそ私達の学校給食は美味しいんだって、一緒に食べて解って貰おう。そうすれば、今度こそ仲良くなれるよね。

ある意味定番ネタですが、無邪気な語り手が気づいていない、分校の畠で栽培される特別な給食の為の作物って?苗は普通の、丹精込めて総出で栽培されますが、特別なのは肥料あたりですね。いつもは手に入らない特別な肥料です。これはフィクションで、モデルとなった事実はありません。似たようなことが起こっていても、無関係ですのでアラ探し無用で願います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サイコホラーですね(^_^;) 夜中に読んでしまった(T_T) 外でネコが発情して鳴いてる(T_T) [気になる点] ムラの普通にしていても駄目なのかな? [一言] 普通って怖いですね(…
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