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権利を主張する前に義務を果たしたらどうかね?

作者: 九条

 ウィリアムは驚いた。

 ここまで言葉が全く通じない相手がいるものだ、と今日また一つ賢くなったなと頭の片隅で現実逃避するぐらいには、驚いた。


 曰く、「ウィリアム様は大層頑張ってらっしゃいますね」、「ウィリアム様は素晴らしい方です」、「流石ウィリアム様ですね」である。

 そんなどうでもいいような言葉を連ねるためだけに王宮に押し掛けて、数時間滞在していく意味が分からない。そして、掛けられる言葉全てに中身がまるでない。

 ぶっちゃけ迷惑そのものでしかない。


 ウィリアムは一国の第一王子である。いずれ一国の王となるために、それなりの教育を受けてきているつもりだ。

 一国の王子となれば、周りからそれなりに様々な言葉を掛けられる。時には厳しいことを、時には甘言を。


 ウィリアムは自分の立ち場をそれなりに理解しているつもりだ。

 自分は第一王子である。いずれ国の王となるために厳しい言葉を掛けられることを。甘い汁を啜るために自分を持上げようと甘言を掛けられることを。

 ウィリアムは実に理解しているつもりである。


 だが、婚約者もいる立場で、身分的にも釣り合っていないにも関わらず、まるで友人のように話しかけてくる者がいるとは思わなかった。なにより、まるで言葉が通じない。

 暗に忙しいと告げれば、笑って大丈夫ですよと談笑される。一体何が大丈夫なのか全く理解できない。

 暗に婚約者がいると伝えれば、望まないのにと同情を張りつけた顔で談笑される。一体彼女は何を知っているというのだろうか、全く理解できない。

 暗に疲れているからと辞退すれば、私が癒してさしあげますと言われる始末。その度にストレスが溜まる。理解に苦しむ。

 果たして、彼女は言語を理解する能力があるのかと疑うレベルだ。


 あえていうなら、全く別の言語同士で話しているような印象さえ受ける。

 更に悪いことに、彼女は妄想癖があるようだ。

 いや、すでにこの時点で妄想癖と言っていい。選ぶ言葉を間違えたようだ。

 彼女は妄想癖と虚言癖があるようだ。頭の中がお花畑でなにか薬でもきめているのでは、と割と真剣に思うぐらいである。きっと頭の中は常に春で花と木々の花粉で脳みそがいっぱいなのだろう。


 やれ「ウィリアム様はもう少し休んでもいい」だの、やれ「ウィリアム様は頑張りすぎ」だの、果たして君は俺の何を知っているのだと言いたい。


 俺は一国の王子である。それも継承権第一位の。

 父のように賢王と言われるためにはそれなりの、いや相当の努力と才能が必要不可欠である。

 一国の王子として生を受け、それなりの生活を現在進行形でさせてもらっている身だ。この先のことを考えて行動するのは当たり前だろう。

 それは、俺の義務である。


 にも拘らず、彼女はその義務を無視し、権利のみを主張する。

 曰く、「ウィリアム様はもっと甘えてもいいんですよ」だの、「ウィリアム様、たまには外にお出掛けしましょう」だの、「ウィリアム様、遊びに行きましょう」である。

 意味が分からない。

 権利を主張するなら、まず義務を果たすのが摂理だ。

 彼女の主張はちぐはぐで理解に苦しむ。まるで、堕落しろと言わんばかりの言葉の羅列に、苛立ちすら沸く。

 彼女の言葉に対してあえて返すならば、「頭に砂糖菓子でも詰まってるんじゃないだろうか、精神科行くといいぞ」である。


 しかし。

 彼女の毒としか思えないような甘言に乗せられている者は多いようだ。彼女の回りには常に複数の男がいる。それも、それなりの身分の男である。

 はっきりいって趣味が悪い。悪食にも程があるだろう、と心の底から思ったのは俺だけではないはずだ。


 俺の身分は第一王子のためそれなりに遠慮されているようだが、時折刺すような視線を度々感じたり、思い切り睨まれるときもよくある。

 全く理解に苦しむ。


 彼女は常に複数の男を取り巻きにしているが、それでもまだなお満足していないというのがよくわかる構図である。第一王子である俺に話しかけているのが一つ。他にも複数の男に声をかけているのが二つ。そのうちの男がそれなりの身分でそれなりの顔がいいことが三つ。女性に対して見下すような言動が四つ。と、まあ、挙げれば挙げるほど出てくるのだが。


 顔もイマイチ。頭がお花畑。言動が全く理解できない。行動がおかしい。悪い噂しか聞かない。

 果たして彼女の何処が魅力的だと言うのだろう?


 なにより、義務を果たさないで権利のみを主張する堕落さ。それがなによりいただけない。


 君が着飾るために贈られる服や装飾、国の臣民の税金だぞ?

 君が我が儘を押し通す時にずれていく予定、複数の貴族の予定が狂っているのだぞ?

 君が惑わし取り巻きにしている男たち、彼らにもふさわしい婚約者である淑女がいたのだぞ?


 挙げれば挙げるほどバカらしくなってくるほど溢れてくる問題。

 果たして、これだけ積み上がった権利。どうやって義務を解消するのやら。

 大して身分のないような令嬢(笑)を一人潰す程度では済まないのだから。彼女の一族そのものを潰したとしてもまだ足りないくらいだ。


 彼女とその取り巻きたちの春はそろそろ終わりを告げるだろう。

 積み上がった権利を主張し、押し通した分の義務は最低限果たしてもらわねばなるまい。

 廃除するのはそのあとだ。

拙い文章で至らないところも多いかと思われます。

サラッと読めるような内容を目指したつもりですが、お目通しありがとうございますm(__)m

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