プロローグ:悲劇の前兆
2035年現在――日本は、先端技術産業の革命や発展を起こし、幻像で終わっていた。
夢のVRゲームの開発に成功した。
頭を覆う、ヘッドギアを装着する事で、脳の第五感に電気信号で情報源を送る事ができ、現実と全く変わらないグラフィックとリアルさで、プレイできるようになった。
そして、オレ――獅子王子亜流は、地方の都合により、発売日より遅れたが、何とか入手に成功した。
初のVRMMORPG:Eternai・Force・Online。
その熱狂的なファンにオレは、初プレイに心を躍らせながら、ヘッドギアを装着した。
まさか――あんな悲劇が訪れるとは――。
「なあ、亜流~。オマエ、EFO買ったんだって?」
同じクラスの奴が、そう尋ねてきた。
オレは無難に、
「うん、今日帰って早速、やってみるつもり!」
「おお、マジかっ! いいなあ、今度、オレにもプレイさせてくれ!」
「ああ、いいよっ!」
クラスの皆から、EFOを買った事で、それなりに注目されるようになった。
まあ、大抵、「今度、オレにもやらせてぇー」と、同じ事しか言われないのだが……。
そのぐらい、EFOは大人気のVRゲームだった。
クリアはすごく難しく、ダンジョンや迷宮の数も無数。
日本中の神ゲーマーが、「これは、難しい!」や、「やり応えが有る!」と、大好評だった。
何でも、ベータテストでは、最初のボスにも辿りつけなかったとか……。
「まっ、オレが攻略してみせる!」
そう宣言し、オレは学校から帰り、自宅に戻った。
部屋の明かりを付け、ベットに横たわり、ヘッドギアの充電機を繋げる。
頭に装着し、ディスクを入れる。電源を立ち上げ――
<<ようこそ、EFOの世界へ>>
アナウンスが響き、視界は天井から、キャラメイク画面に映った。
オレは、写真でメイクを選び、ちゃちゃっと済ませた。
そして、最初の――始まりの街に転送された。
オレは早速、走った!
リアルとほとんど変わらない、この感覚。頬に当たる風。
風が心地よく、足が止まらない。人ごみを駆け抜け、
「イヤッフォォォォ♪」
街の市場を駆け抜けると――門が有った。
そこからは、フィールド。つまり、モンスターの出現場所になっている。
EFOのシステムは――フィールドマップでダンジョンを探索し、ダンジョンを見つけ、そのダンジョンを突破すれば、門が解放され、次の街に行ける。
EFOの世界は、たくさんの大陸で形成され、その大陸を全部攻略すると、神界への塔が現れる。
その塔をクリアすれば、ゲームクリア。
気が遠くなる話しだが、最初はコツコツ頑張ればいい。
まずは、自分のステータスを確認しよう。
右手で空中をタップすると、メニューが開いて、そこからステータスが確認できた。
「攻撃力が……27。スピードが……50……フムフム」
やはり、最初は弱い。当然だ、ゲームだもの。
だから、これから強くなればいいのだ。
オレは初見プレイヤーの特典で貰えた、ゴールド――つまり、この世界の通貨で武器を買う事にした。
武器家には、最初にしては、結構強そうな武器があった。
そして、一つの漆黒の黒い剣に眼が停まった。
「……魔剣――ドレインブレード?」
武器屋のカタログにはなかった、武器だ。
しかも、値段も結構した……だけど、在庫が一つ限りと書いてあった。
どうする? 買うか? この世界で、たった一本だけの剣? 買っちまおう!
「すみません、それ買います!」
「お? まいどあり~」
結局、魔剣――ドレインブレードを買ってしまい、所持金が残り、ポーション一つ分しかなかった。
さて、早速、レべリング行きますか!
オレは来た道を戻り、フィールドに向かった。
そして、フィールドに進入した。すると、早速モンスターが現れた。
モンスターの名は、ビックイノシシ。普通のイノシシより、一回り大きい程度のモンスター。
最初は、こんなものか…………。
「さあ、来いよ。クソシシッ!」
「フゴォォッ!」
イノシシの急速な突進、焦らず、右に避ける。
イノシシまだ、走る。止まらない、どこまでも――走る。
そして、岩に激突。角がグサッと岩に喰い込み、イノシシ動けない。
「いや、オマエ、ダサすぎだろっ!」
「フ、フゴォォォ!」
イノシシは涙眼になって、ジタバタしていた。
今ここで、アイツを倒せば、アイツはオレの経験値になり、死んでいくだろう。
しかし――何故だろう、あのイノシシの表情を見ると……胸が痛くなる。
しょーがない、今回は勘弁してやろう。
「おい、大丈夫か?」
イノシシの腹を掴み、思いっきり引っ張った。
すると、スポッと綺麗に抜けた。
「よーし、もう大丈夫だ」
「フゴッ、フゴッ!――――フゴォォォォォ!!」
喜んでぴょんぴょんと、跳んでいたかと思えば、急に表情を変え、襲って来た。
「うわあっ!」
流石のオレも、これには驚かされ、腰が抜けてしまった。
急いで、背中鞘から、魔剣――ドレインブレードを抜き、
「そりゃああっ!」
――グサッ! と、イノシシの横腹の辺りに刃が刺さった。
「フゴォォォォォォッッ!!」
イノシシの断末魔の悲鳴が鳴り、イノシシは倒れた。
イノシシのHPバーのケージが赤から、完全に消え去り、キラキラと蒼い、綺麗なエフェクトになって消えた。
よしっ! 初、勝利だぜ!
オレが喜んで、はしゃいでいると、
<<緊急テレポートします、目的地――始まりの街・大広場>>