零話 終わり
きっと何者にもなれない
きっと何色にもなれない
自分はいくつもの仮面を持っていて
どの自分が自分だったのかさえわからない
だから この結果をみても何とも思わない
ようやく自分は肉体を捨てて自分になれるのだ
きっと肉体から抜け出た自分こそが本物なのだ
きっと 仮面を外した素顔と対面できるのだ
だからこそ思うのだ
最後まで私は役を演じきって、誰も本物の私を救えはしなかった
何と寂しいことだろうか
だが もういい
考えるのはもう止めだ
自分は17歳で明日が誕生日だった
明日は金曜日で学校へ行かなくてはならない
きっと友人たちは色々考えてくれているだろう
木曜日の帰り道
私はまだ幼き男の子が車道へ歩いていってしまうのを目にする
トラックが近くまで来ていて、このままでは危ないと 私は後先も考えず夢中で走る
何だか聞いたことがある話だ
男の子を抱え 怪我を覚悟で優しく放り投げる
でも 私は 間に合わずに
まるでスローモーションのビデオを見ているように景色が流れていく
それで私は 走馬灯って呼ばれているようなものを見始たんだ
そう これはただの走馬灯
この話に意味なんてない
そして彼女は囁くの
何色にもなれたのにって