桜譁祭
いよいよ桜譁祭の日。
私は前半に接客する事になっている。
伊吹も私と一緒の前半組だ。
はぁ…
まさか学校でメイド服着るとは…
変身メガネもないけど、バレないよね?
ってか大丈夫か。
髪の色もバイトの時と違うし、名前も違うしね
メイド服を着る。
あ…やばい…かも。
なんかこれ着ると気合入ってくる。
やる気スイッチが入った
今日は邪魔な眼鏡をしてないので、髪もほどきたくなりほどいてしまった。
実は、ふたつに縛るのはあまり好きではない
今日は邪魔ものさん達を取り除き、桜譁祭にのぞむとしよう。
クラスまでスタスタ歩いていけば、足を止めてまで私を見てくる男の子たち。
そんなに凝視しないでよ。
こんなフリフリの服が、私に似合わないのなんて分かってる。そんなの自覚済みだ。
まぁ別に白い目で見られたって気にしない。
キャンディカフェで培った接客魂をみせてやる!!
そう決意した。
ガラっと教室のドアを開ける。
すると、みんなの視線が一気に突き刺さった
すでにみんなは集まっていて、準備を始めていたんだ。
……完璧、出遅れたね。
『遅れてごめんなさい。』
すぐさまペコリと頭を下げ謝る。
しかし、反応がない。
えー…っと…遅れた私を、みんなは怒っているのだろうか…?
とりあえず、早く仕事しないと。
そう思って頭をあげれば、みんなが私を見ながらヒソヒソ話をしているのに気付いた
それにしても、いつも以上にジロジロ(…いや…凝視だこれ。)見つめてくるクラスのみんなに困惑してしまう。
あまりの居心地の悪さに目を伏せた。
そんな時、
「リ、リン!!」
私を呼ぶ声が耳に届く。
視線を上げれば、私のところに駆け寄ってくるのは、
『…伊吹』
で、なぜか赤い顔をしていた。
なぜ赤い顔をしているのか気になったが、そんな事はどうだっていい。
伊吹が来てくれ、ホッと安心したのは事実。
『…ちょっと遅くなっちゃった。ごめんね。執事服似合ってるね!さすが伊吹!!』
イケメンは何でも着こなすね。
キャンディカフェでバイトをしたら、きっと1番人気だね!
「いいって。リンも似合ってる…かわいいよ」
『伊吹ありがとう。お世辞でもうれしいよ』
おせじじゃねぇのに…
という伊吹の小さい声はリンには届かない。
~伊吹 side~
リンが教室に入って来た時、あまりの可愛さに、俺は息を呑んだ。
眼鏡をかけていないリンは、やっぱり可愛くて
クラス全員が、あのかわいい子誰?とコソコソ言って、リンに注目していた。
男は皆、リンを見ては頬を赤らめている。
…いや、俺もか。
自分でも、顔が熱を帯びているのが分かるんだ。
本気でかわいいと思った。
メイド服も、とても似合ってる。
バイトって確かキャンディカフェだったな。
俺はまだ行った事がないけど…
あそこもメイド服だと聞いた事がある。
リンのバイト姿見たことないけど、絶対かわいいよな…
よし。
今度こっそり見に行こう。
しかもリンの行動は、皆をさらに驚かせる事になる。
「いらっしゃいませ」
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「お待たせしました」
リンの魅力的な笑顔に、クラスのみんなは釘づけだ。いつも無表情なリンがこんな表情をするんだもんな。
俺もリンの笑顔にドキドキした。
お客もリンに見入って、頬を染めている。
…リンは気づいてないんだろうな
頼むから、そんな知らないやつにまでかわいい笑顔をむけないでよ。
「すみません、注文いいですか?」
『はい』
お、やべぇ。
俺も仕事しねぇと…
リンは、テキパキと動いている。
俺も頑張ろう。
そんな時、キャーと女達が騒ぎ出した。
しかも客だけではなく、接客してる女の子達までもだ。
この騒ぎの理由なんて見なくてもわかる。
そう…
悠斗、隼人、蓮、翔がやってきたのだ。
来るなっていったのに。
軽く溜息をこぼしながらリンに視線を流す。
リンは騒ぎに全く動じず、客に笑顔を向けていた。
そんなリンの様子を見た4人。
翔と蓮は目を見開いて驚いている。普段、なかなか笑わないリンが、笑顔で接客しているんだもんな…
しかも人を惹きつける様な、魅力的な笑顔で
隼人は動じてない。隼人はリンのバイト先の店長と従兄と聞いた。
だからバイト先のリンを知っているのだろう
悠斗は眉間に皺を寄せて不機嫌な様子。
ときおり、男の客に視線を向けては黒いオーラを放っていた。
リンを見て、頬を赤く染める男どもにイライラしているのであろう。
最近の悠斗は本当に分かりやすい。
〜伊吹 SIDE END〜
バイトのクセで、ついつい調子に乗ってしまったのか?途中、クラスのみんながチラチラと視線を送っているのに気付いた。
どうせ、あのブス似合ってないのに調子のってんじゃねぇ…とか思っているに違いない。
…まぁ、そんな事を一々気にする私ではない
それより、みんなちゃんと動いてよ。
意外と混んでる。
『すみません、3番テーブルの方の注文お願いしてよろしいですか?私、今から5番テーブル片づけますので』
「あ、うん」
近くでオロオロしていた、女の子の肩にポンっと手を置き声をかける。
ごめんね。名前しらないのよ。
「お~いまだ注文したやつこねぇんだけど」
『お待たせして申し訳ありません。すぐにお持ちしますね」
ニコっと営業スマイルを向けた。
接客は笑顔が大事だもんね。
そんな時、キャーと歓声があがった。
ん?
一体何?
チラリと入り口の方に視線を向けた。
…あ
生徒会の2年様方が来たのね。
みんなのアイドル登場だね?
しかも伊吹以外揃ってる。
まぁ伊吹もここにいるのだから、全員集合には間違いないのだけども。
接客している女の子達まで歓声を上げている
もう。
みんなちゃんと働け~!!
接客中、悠斗と目があった。
なぜか眉をグッと寄せ何やら不機嫌な様子。
なんだろう…
機嫌が悪いのかな?
…分からない
とりあえずニコっと微笑んだ。
営業スマイルだが…
悠斗達のテーブルに行きたいのは山々だが、接客担当のクラスの女の子達は、誰が接客するのかもめていた。
はぁ…
誰でもいいから動いてよ~!!
「ずるい!私が行くわ!」
「ダメよ!」
「ねぇ、ここは公平にジャンケンしましょうよ?」
「じゃぁさ、ジャンケンなら3回勝負よ!」
いやいや、一発で決めてくれ。
しかも、紙にトーナメント表書き出してるし
ねぇ…あなた達一体何回戦やるつもりなの?
伊吹は?と思い伊吹を探す。
『……。』
女の子達のカモになっていらっしゃる。
「うるせぇ」と言うものの「や~ん。伊吹くんかわいぃ~」というやりとり。
会話成り立たなそうだね。あれ。
伊吹は、かなり嫌そうにしているので、助けたいと思うんだが…
伊吹…ごめん。
私はあの中に入る勇気はない。
意気地のないリンをゆるしておくれ。
また女の子に視線を戻したが、女の子達はまだジャンケンをしていて…
はい。
もういいです。
ボサッとしている男の子たちに支持をして、働いた。
* * *
ふぅ。やっと終わった…
そんなに長い時間ではなかったけど意外と疲れた。
……次は生徒会の仕事か。
でもまだ生徒会の仕事まで少し時間あるし、屋上で寝ますか
桜譁祭は、桜譁祭の実行委員という係がいて、その方々が当日は主に仕切っている。
生徒会の人は、見回りやアクシデント対応などする。もちろん携帯は持ち歩き必須だ。
着替えようと、更衣室に向かおうとした。
しかし、
「花菜月さん、ちょっといい?」
後ろから声をかけられてしまう。
この人確かクラス委員の、山田さんだっけ?
下の名前は知らない。
『はい。何でしょうか?』
クラスの女の子に話かけられるなんてほとんどない。一体何の用だろうか?
「花那月さん、そのままこれもって宣伝してきて」
微笑みながら、メイド&執事カフェ1ーAの看板を渡された
「…は?」
意味分からない
これは、新手のいじめか?
せっかく休憩できると思ったのに
本当、なんなのよ…
「30分くらいでいいから!宣伝してほしいの!!」
お願いと手を合わせている彼女
『山田さん、私忙しいんですけど』
お昼寝でね。
いや、お昼寝は重要よ?効率あがるもの。
「山田さんて呼ばないでくれる?この平凡な苗字嫌いなのよね…。愛莉でいいわ。愛莉って呼んで!!」
え…そこ怒ること?
なぜか山田さんと呼べば顔をしかめたのだ。
まぁ、本人が嫌がるなら愛梨と呼ばせていただきますけども。
それにしても、女の子の名前を呼び捨てにするのはいつぶりだろう。
『じゃぁその…愛莉…何で私なの?私よりかわいい子の方が宣伝になるでしょ?私がこんな恰好でウロウロしても、白い目で見られるだけだよ!!絶対宣伝効果ないよ!!』
はっきりきっぱり言ってやった。
こういう新手のいじめには、屈しないよ!!
すると、愛莉は一瞬キョトンとしたが次の瞬間クスクスと笑い出した
「マジでいってんの?ウケる」
何もウケる事言ってませんが…。
「あっそうそう。そういえばあんた遅刻したでしょ?」
『……。』
ニヤリと凄みのある笑みを浮かべた愛莉に、冷汗が出るのを感じた。
そうだった。
昨日も最後までやらなかったし。
「ねっ。お願い」
『…分かった』
可愛らしくお願いしてくる愛莉に、溜息混じりで答えた。私が了承すれば、上機嫌に目を細めていた。
仕方ないか。遅れた自分が悪いよね?
新手のいじめ受けるとしよう。
「あっ!!くれぐれも笑顔を忘れずに!!さっきみたいにスマイルよ!!」
『・・・・』
―――拷問だ。
看板を持ってクラスを出て歩き出せば
「リン!!どこ行くの?」
伊吹が慌てたように走って追いかけてきた。
まだ伊吹も着替えていないようだ。
『宣伝しにちょっとブラブラと。』
「え~!!俺も行く」
『いいよ別に。友達と周りなよ!ただでさえ周れる時間少ないんだよ?』
「俺、リンと周る予定だったんだけど」
『え?』
なぜ?
私と周ったところでつまらないと思うが…
「俺とじゃ嫌だった?」
悲しげな表情を浮かべた伊吹。
『嫌じゃない!!』
「じゃ、行こ?」
『うん。』
私と一緒にいてくれるという伊吹の気持ちに、心から嬉しく感じたんだ。
看板を持って歩く。
愛莉に言われた通り、にこやかに…。
う~笑顔がひきつる。
ヤバいね。
接客ならともかく、こういうのは得意ではない。
…本当、拷問だ。
しかも周りの子達がこちらを見入ってくる。
男子、女子どちらにもだ。
伊吹かっこいいもんね。
みんな伊吹見てるんだね。
しかも男の子にも人気なんて…さすがだね!
伊吹ったら、男の子にもかわいいって思われているのかな?
思わず笑みがこぼれた
「リン?どうしたの?何かおもしろい事あった?」
笑っているのがバレたらしい。伊吹が不思議そうな顔で尋ねてきた。
『いや~、伊吹って女の子だけじゃなく、男の子にも人気なんだな~って思ったら笑えてきて』
「は?」
伊吹は、驚いているのかキョトンとしていた
ハッ!?
思わず本音で話してしまった。
「リン…目わるいのか?」
と、呆れ顔の伊吹。
『えっ!!目いいよ!!メガネなくてもばっちし!!』
「…そうじゃなくて。わかってないのか?」
『何を?』
意味が分からず首を傾げれば、伊吹は「はぁー」と深い溜息をこぼした
一体どうしたというのだろうか…
『1年A組で、メイド&執事カフェやってま~す!!来てくださ~い!!待ってま~す』
にこやかに、にこやかに。
必死に笑顔を作っているが、いささか顔の筋肉疲れてきた…
軽く溜息をこぼしていると、前方に人だかりが見えたのだ。
あ、何あの行列?
行列には弱い私。
スーパーとか行列があるとすかさず並んじゃうほど。
だって気になるじゃん。
理由があるからみんな並ぶんだろうし。
『ねぇ、伊吹。あの行列何かな??』
「あぁ。あれ…多分『ごめん、ちょっと見てくるね?』ってちょっとリン!!」
伊吹の話を最後まで聞かず、小走りし見に行ってしまった。
一刻も早く行列の理由を知りたかったんだ。
「リンちゃーん!きてくれたんだ?」
行列の先の方まで行けば、手をヒラヒラ振っている隼人がいた。
そっかこの行列隼人達のクラスだったんだ。
何か納得。
『ちょっと通りかかって。それよりすごいね』
「リンちゃんのクラスも凄かったじゃん。リンちゃんは、看板持って宣伝かなんか?」
『はい。頼まれて。』
隼人は「そっか」と言いながら、並んでる女の子達を順番に教室内へと誘導している。
そんな隼人の様子を、ウットリとした表情で見つめる女の子達。
隼人は、案内係なのかな?
そんな事を考えていると、
「ゆうと、翔、リンちゃんきてるよ」
と隼人は教室に向かって呼んだ。
すると教室から悠斗と翔もでてきたのだが…
悠斗は、なぜかクレープを手に持って食べている。
な、なぜ、食べてる!?
働かなくていいの?
気になったが、あえて触れないようにした。
それよりも、あれってもしかして…
チョコバナナクレープ!?
だって、生クリームとチョコソースが見えるもの。
美味しそう…
『クレープおいしそうだね!?悠斗は甘いの好きなの?』
食べたいけど、こんなに行列じゃさすがに無理だ。いちを仕事中だし。
すると、
「あぁ…これ食うか?」
『え』
悠斗は、首を傾げて尋ねてきた。
これって悠斗の食べ途中のやつって事だよね?
「嫌か?」
『あ…食べたい気もするけど…その何というか恥ずかしいというか…周りの視線が…痛いというか…だから、やっぱり…』
食べかけを貰うという事は、間接チューなわけで…(うっ。言ってて恥ずかしい)
しかも、こんな人だかりで食べたら殺気の目が怖い…
『やめ「食え。」』
やめとくと言葉を続けようとしたのだが、悠斗の声によって遮られてしまった。
目の前に差し出された、魅力的なスイーツに負け思わず一口食べてしまった
『おいしぃー』
私の予想通り、チョコとバナナ、生クリームの王道の組合せだった。
う~ん。幸せ~
疲れている時は甘い物が一番だね!!
思わず笑顔になった。
あ…
イヤーという悲鳴が聞こえ、我にかえった。
やばいやっちゃたよ。
周りからの視線が痛い…
ってか怖くて周り見えない。だって私、確実に睨まれてるよ。
それなのに、周りに全くおかまいなしの悠斗は
「クリーム付いてる」
そう言って私の口の横についたクリームを指で取って…………それをペロっと舐めた。
そう…舐めた。
舐めた…。
『……。』
ギャーっと、周りから女の子達の悲痛な叫び声が聞こえるが、私は悠斗のフェロモンにやられ固まる事しかできなかったーー…
私達を見た翔と隼人はクスクスと笑っている
お~い。
お2人さん、笑ってる場合じゃないのよ。私はドキドキしすぎてもう泣きそうなんだよ…
伊吹は伊吹で、なぜかほっぺを膨らまし怒っているし。
肝心の悠斗は…
「もう少し食べるか?」
と、コテンと首を傾げて聞いてきた。
なんなの!その可愛い聞き方は!?
あまりにも普段とは違うギャップに、つい頷いちゃいそうになっちゃったじゃないか。
これがギャップ萌えか…?
いやいや、ムリ!?
『おっ…おなか一杯だし…
しっ仕事中だし、ま、またあとでね~』
どうしよう。
心臓のドキドキが止まらないーー…
悠斗に手を振りその場を立ち去った。
ヤバイ。
まだドキドキしてる。
静まれ!?私の心臓!!
必死に平常心を取り戻そうとしていると、
「あ~!!リンまって!!」
伊吹の声が耳に届いた。
『あ…伊吹ごめんね。』
伊吹が私を後ろから追いかけてきたのに気付いたのだ。ヤバ…伊吹、置いてきちゃった。
本当に申し訳ないです。
私が謝れば、眉を寄せ不機嫌そうな顔をした伊吹。
…怒ってる…?
「リン、顔赤い…。」
『え…うそ…』
「リンのバカ」
『え』
バカって…。
こんな事、伊吹に言われたのは初めてでちょっとショックを受けてしまった。
『伊吹ごめんね…どんどん先行っちゃて。』
宣伝に付き合ってもらったのに、私ったら伊吹を置いてっちゃうなんて…
「…そうじゃねぇ。」
『え?』
そんなやりとりをしていると、右前から声がかかった。
「ようチビ。なに赤くなってるんだ?」
『…れん』
そこには受付の椅子にドカッと座る蓮がいた。蓮の前には、1列に並ぶ女の子の行列。
しかも女の子は皆、目をハートにしている。
ここも行列なのね。
生徒会の皆様の人気を改めて感じるね
「っていうか、お前まだそんな恰好してんのか?」
『うん。宣伝でちょっと。でも、もうすぐ終わるよ』
「そうか」
何故か、私をまじまじと見てくる蓮。
そんなに見られると、恥ずかしいんだけど…
しかも受付中でしょ?
それにさっきから蓮、女の子達に携帯で写真撮られてるよ?
人気だね、蓮は。
『…蓮?』
「馬子にも衣装だな」
あまりにもずっと見てくるので、蓮の名前を呼べば、ニヤリと笑いながらこんな事を言った。
「似合わねぇ服とっとと着替えてこいや」
『着替えるもん!じゃぁね!』
ふんだ。
似合わないってわかってるもん!
ドシドシと歩きだせば、
蓮のクックッと笑う声が、背中ごしに聞こえた
れんのバカ~!?
「あまり野郎どもに、見せんじゃねぇ」と呟く蓮の声は、もちろんリンには届かない。
伊吹とともにクラスへ戻れば、結構な人が来ていた。
「あ、花菜月さんおかえり。助かったよ!ありがとう。」
愛莉は、満足そうに顔をほころばせている。
『私は別に何も役にはたってないよ』
「そんな事ないよ!!宣伝のおかげでお客さんたくさん来てくれたし」
『伊吹が一緒に来てくれたから、伊吹のおかげだよ』
「え、俺別にリンの横歩いていただけだし」
伊吹ったら謙遜しちゃって。
確実に、伊吹のおかげです。なんせ、男の子まで魅了しちゃうんだもんね。
「佐野くんも花菜月さんもありがとう。お礼にこれ食べて!!」
差し出されたのは、クラスで作っているサンドウィッチ。
運んでいた時密かに食べてみたかったんだ。
なんか嬉しい。
『ありがとう!!』
自然と頬が緩んだ。
私がサンドウィッチを眺めていると、クスクスと笑いだした愛莉。
……どうしたというのだろうか?
首を傾げていると、愛莉が口を開いた。
「花菜月さん、私もリンって呼んでいい?」
『あ…うん』
私が思わずコクリと頷けば、ニコッと満足そうに笑った愛莉。
「でもさー」
『ん?』
「リンってさ、変な人だよね」
『…え』
変な…人…?
……変人
何気にショックだ。
「だってさ、普段無表情で何考えているかわかんないじゃん?基本、無関心な冷血女でしょ」
『……。』
今度は、冷血女ときましたよ。
ダブルパンチだね
「でも、誰かに何かされても一切動じないリンには少し興味があったけどね」
『……』
「その上、今日の行動でしょ?素顔が、あり得ない位可愛いし、何といってもあの笑顔!マジビビったんだけど。しかもあの慣れた接客何?本当、謎だよ。」
クスクスと笑う愛莉に、まさか、いつものクセで働いてたとは言えない。
「ま、とにかく意外と話しやすい人って分かったから、これからも仲良くしてね。」
『…うん。えっと、その、よろしく』
予想だにしない事を言われオロオロしてしまった。
* * *
メイド服を着替え、伊吹とサンドウィッチを食べに中庭に移動した。
途中伊吹が、から揚げと焼きそばも買っていた
『サンドウィッチおいしいね』
やっぱり、サンドウィッチといったら卵だね
しかも、この卵の味つけおいしい。
なかなかやるじゃん!?
「そうだなっ!リンこれも食べるか?」
『うん!食べる』
伊吹が差し出してきたのは、私の大好きな唐揚げちゃん。私が迷うことなく頷けば、半分も取り分けてくれた。
さっそく食べてみる
パクリ。
『おいしい!』
幸せ~!!
から揚げちゃん大好物なのよね
「リンって本当おいしそうに食べるよな!」
私が食べている姿を見て、ケラケラ笑っている伊吹。
……だっておいしいんだもん。
から揚げちゃんを堪能していた時、伊吹の携帯が鳴った。
「あ~悠斗?何?……ああ。今リンと一緒だけど…。え、今?中庭でリンとお昼食べてるけど…あぁ、分かった。」
「リン、今から悠斗達ここに来るって」
眉を寄せ少し不機嫌そうな伊吹が、教えてくれたが、急にどうしたのだろうか?
『そうなの?』
「もう、終わったって。悠斗達もここで食べるってさ」
『そっか』
もう半分食べちゃったよ…。
まいっか。
「せっかく2人きりだったのに」
『ん?』
「ううん。何でもない」
何か聞こえた気がしたが、どうやら気のせいだったらしい。
5分もしないうちに悠斗達がやってきた。
「おまたせ」
『……。』
え!?何その大量の食べ物は?
4人とも、たくさんの食べ物を持っていたのだ
『4人とも、そんなに買ったの?」
男の子はよく食べるというけど、そんなに食べれるのか?
「貰った」
すると悠斗がクレープを食べながら言った。
っていうか、またクレープ食べてるよ…
さっきとは違う味みたいだが、本日2個めだね
『全部貰ったの?』
「あぁ」
「歩いていたら、渡されて気づいたらこんなになってた。」
ねぇ。
さすがに、気づこうよ…
『……。』
でも、ある意味羨ましいです。
「リン。これあげる」
翔が差し出したのは、串に刺さったから揚げちゃん。
『翔ありがとう!!私、からあげちゃん大好きなんだ~!!』
「そう。良かった」
私がそう言えば、クスクス笑う翔。
さっきジッとから揚げ見てたの気づかれたのかな…?だとしたら恥ずかしいよね
「おい、チビ。から揚げちゃんってなんだよ。キモい」
『蓮の意地悪。から揚げちゃんはからあげちゃんでしょ?』
「意味わかんねぇ」
蓮は呆れ顔のまま、焼きそばを食べていた。からあげくんじゃパクリになっちゃうから、からあげちゃんと、命名したのに…。
じゃぁ、からあげ皇子とか?
うーん、それは微妙だよね。
そんな事を考えていると、
「リン…」
伊吹に呼ばれたので彼に視線を向けた
「また、から揚げ食べるの?」
驚いた表情の伊吹。そうさっき、伊吹に半分もらっていたのに、なんと翔からは丸々1パックだ(ちなみに3串入りだ)
『うん。さっきいっぱい動いたからお腹すいちゃって…』
「そ、そっか…」
伊吹が驚きのあまり、目をパチクリさせていると
「じゃぁ、これもあげるね~」
隼人が差し出したのは、つまようじに刺さったたこ焼きだった。
ん?
えっと…これは?
「はい。リンちゃん。あ~んして」
『…っ』
あ〜んって!?そんなのムリ!!
「恥ずかしいの?さっき悠斗にも食べさせてもらったでしょ?」
そう言いながらクスリと笑う隼人。
隼人さん、からかっているわね…
パクっ。
私が反応に困っていると、隼人の手をグイッと引っ張った悠斗が、たこやきを食べた。
「うまい」
「あーぁ」
楽しそうにクスクス笑う隼人に、やっぱりからかわれていたのだと確信した。
「リン。これ食え」
たこ焼きを頬張りながら、悠斗がさしだしたのは、プリン。
『ありがとう!』
プリンを受け取り、さっそく蓋を開けた。
スプーンですくうと、トロトロした柔らかさ…口に含むとトロリンと溶けてなくなった。
『なめらかでおいし~』
デザートまであって幸せ…。しかも私の好きなとろけるプリンだ。
あまりにも幸せすぎて、頬が緩んだ。
そんな私を見て、悠斗は満足そうに微笑んでいる。
プリンを食べ終え、またもや翔に貰ったシュークリームを食べていれば、
「お前食ってばっかだな。太るぞ。チビで、デブになったら最悪だぞ」
蓮が呆れ顔でこう言った。
『成長期だから上に伸びるもん』
それに、デザートは、別腹よ♪
「どうだか」
みんなでワキアイアイと過ごしていた。