桜譁祭 準備編
6月下旬には桜譁祭がある。
その準備で、生徒会の仕事もますます忙しくなっていた。生徒会としての初めての大きな仕事だ。気を引き締めないと。
といっても、桜譁祭当日はあまりすることがないんだけど…。
2人組の女達に叩かれた次の日、
桜譁祭について先生から説明があった。
2人のクラス委員が前にでて話している。私はただ、ボーッと聞いていた。
眠い…
あまりにも眠いので、私は頬杖をしながらウトウトしてしまっていた。
「では、A組は、メイド&執事カフェでよろしいですね。」
「いいでーす!」
一体、何事!?
あまりにもクラスの歓声がすごくて、眠さが吹っ飛んだんだ。
私はクラス委員のいる前方へ視線を向けた。
…え…
黒板に書かれた文字を見て、驚いた。
だって…
よりによってメイドカフェだったから。
なぜ喜ぶのか?
まぁ私は裏方だと思うからヨシとしよう。
裏方だと思っていた。
そう思っていた……
しかし裏方と接客担当はなんと、クジで決める事になったんだ。
はぁ…
クジを引き終えた私はため息しかでなくて。
だって、何度紙を見ても「接客担当」の文字なんだ。
おかしい。
私、クジ運良いはずなんだけどな。何かの陰謀か?
「リンは何だった?」
クジを引き終えた伊吹がやってきた。
昨日のあの事件から、よく私の所へきて話しかけてくれる。
『接客だった…。』
「マジ?俺も接客だった…」
『伊吹はかっこいいから、絶対執事服似合うよ!!』
「そ、そ~かな…?」
『そうだよ!!』
伊吹は照れているのか顔が赤くなっている。かわいい。
「俺、リンのメイド服楽しみにしてる!」
『あ、ありがとう…。』
そんな事言われると、プレッシャーが…
メイド服は着なれてるけど、絶対似合わないもんな…
放課後、伊吹と一緒に生徒会室に行く。
『こんにちわ~』
「何だ、チビ共か。」
蓮はソファに座り、携帯を弄りながらチラリと私達に視線を向けた。どうやら、まだ蓮しかきていないようだ。
「蓮!?チビ共ってひどい!!」
伊吹は、ほっぺを膨らまし怒っていた。
『そうだよ!!私は兎も角、伊吹はすごく大きいよ!!』
身長が低い私には、みんな大きく見える。伊吹は、165cmほどか?
「ぶはっ」
「すごく大きいってさ~良かったね。い・ぶ・きくん」
私がフォロー(?)すれば、蓮は吹き出しゲラゲラ笑いだしたのだ。
…あれ?
私変な事言ってないよね?
ちらりと伊吹を見る。
う…怒っているっぽい?
すごい大きいは、言いすぎたか…
あはは。
伊吹…ごめん。
私は苦笑いを浮かべる事しかできなかった。
そんな時ガチャリとドアが開き、悠斗、翔、隼人が入ってきた。
「なになに~?楽しそうだね?」
そう言いながらソファーに座る隼人。
「まぁ…な……大き…いって…っ…」
ゲラゲラ笑い続ける蓮。
笑いのツボにはまったのか?誰か止めてあげて
「べつに」
伊吹はまだ頬を膨らませ、不貞腐れていた。
いつまで笑い続ける蓮に怒っているようだが、その姿も、もはや可愛いとしか言えなかった。
悠斗は、そんな伊吹と蓮を不思議そうな表情で見た後、私に視線を向け口を開いた。
「リン。クラスの出し物決まったか?」
『うん。メイド&執事カフェになった』
「そうか。……メイド服着るのか?」
私がコクリと頷けば、悠斗は眉根を寄せた。
どことなく不機嫌そうな悠斗。
急にどうしたのだろうか?
…あ
ま、まさか、私のメイド服姿を想像して気分を害したとか…
ありえるかも。
似合わないって分かっているけどさ、かなりショックである。
私がショックをうけていると、隼人が口を開いた。
「え~!リンちゃんメイド服着るんだ?楽しみだな~。みんなで見に行くよ」
嬉しそうにする隼人だったが、私をフォローしてくれているに違いない。
隼人の言葉に対し伊吹は、すかさず「くるな」と言うものの「ぜった~い。行くもんね~。なっ。蓮?」と蓮に同意を求めていた
「は?なんで俺がチビ共を見に行かなきゃなんねぇんだ。」
「またまた~」
「ねぇ、蓮」
「…んだよ?」
隼人が蓮の耳元で何かコソコソ話しだした。
「チッ、行けばいいんだろ」
どことなく蓮の顔が赤い気がするのは気のせいだろうか?
隼人は悠斗と翔に視線を向ける。
「悠斗も翔ももちろん行くだろ?」
「あぁ。」
「いいよ。」
悠斗と翔が答えれば、隼人は満足そうに「楽しみだね」と微笑んでいた。
結局、みんな来るらしい。
「悠斗たちのクラスは何やるの?」
驚く事に、悠斗、翔、隼人は同じクラスだ。絶対このクラスは女性が殺到しそうだ。
「クレープ屋だ」
『そうなんだ』
イケメン悠斗たちには何て似合わない食べ物…想像つかない。
「あぁ。きっとうまいぞ?リン食べに来い」
「ゆうとは食べれないけどな」
嬉しそうに話す悠斗に、呆れ顔の隼人。
「わかってる」
眉をよせながら話す悠斗は、どことなく残念そうだ。
「蓮のクラスは確かお化け屋敷だったな?」
「あぁ。何でお化け屋敷なんだか。チッ。めんどくせぇ。」
翔が蓮に尋ねれば、舌打ちしながら蓮が答えた。余程、嫌らしい…
「れんれんのお化けも見たいな~」
「ケッ。誰が、んなもんやるか。俺は受付だ。受付。」
隼人は悪びれもなく言う。
確かに蓮はお化けよりも受付のがいいかもしれない。そりゃあ、蓮のおばけ姿見たいけどね。
でも、イケメンの蓮が受付にいれば、それだけで呼び込みになるだろう。
それから毎日忙しかった。
クラスでの準備。生徒会、バイト…。
あいかわらず嫌がらせの手紙は入っていたが、今のところ、あの2人組は何もしてこない
まぁ相変わらず、罵声や侮辱の笑い声が針のように常に刺さっていたが。
クラスでは伊吹は私の所へよく来てくれる。
伊吹も私なんかより、友達といたいだろうに
この前泣いちゃったから、きっと気にしてくれてるんだよね?
なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
それでも伊吹のおかげで、何事も起らず平穏の日々を過ごす事ができたのだ。