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ギャップ彼女  作者: 星川瑠月
第1章
4/16

生徒会

ぼんやりと空を眺めていた。


「り~んちゃん」

『うわっ!!』



目の前には、さっき出ていったばかりの隼人が私を見下ろしていたのだ。

思わず、本気でびっくりしてしまった私。


いつの間に!?

全然気づかなかった…


「驚いた~?」


ヘラヘラと笑いながら腰をおろし、私の横にどかりと座った隼人。

はい。驚きましたとも…まだ心臓バクバクいってるよ…。


それにしても、なぜ座るのさ?

この人、微妙に苦手なんだけど…。


『まだ何か用がありますか?』

「リンちゃんと2人で話したいなーと思って」

『私は、別に話す事ないですが…。』


依然、ヘラヘラ胡散臭い笑顔で見つめてくる隼人に、少しイライラした。

しかも、2人きりなんてとんでもない。

そんなの気まずいに決まってる。


『それでは、私はこれで』


この場から立ち去るのが一番だと思い、スッと立ち上がりスカートをパンパンとはらった。生徒会の仕事はきちんとこなすつもりだが、人と深く関わるつもりはない。


「そう、あからさまに嫌な顔しないでよ~」


そう言いながら隼人も立ち上がった。


すると、


「俺さ~」と言いながら私の顔の横にドンと片手をつき目の前に現れた隼人


これはいわゆる壁ドンというやつなのでは?


何なの?この体勢は!!

キッと睨みつけた


「リンちゃんの事、好きになっちゃったんだよね。だから、引き受けてくれて嬉しいんだ~」


そんな作った表情で言われても…


やっばり胡散臭い

さっきから、言ってる事も、その笑顔も…


何考えてる?企んでる?

何か陥れようとしているのか?

それとも、バカにしているのだろうか?


何かイラっとした。こういう作り笑顔は大嫌いだ。見ていてイライラする。

だって本心が見えないんだ。


それよりも、顔近いんだけど!!


プチ

自分の中で何かが切れる音がした。


『…うざいよ』


私は怒りのあまり、つい本音をこぼしてしまっていた。


「え」


目を見開き、私を驚きの表情で見つめたまま、固まってしまっている隼人。


私は隼人の目を見据え、言葉を続けた。


『好きなんて少しも思ってもいないくせに、軽々しく言わないで。いつもこうやって女の子を口説いているの?』


私をまっすぐ見据えた隼人の瞳が、静かに揺れた。否定しない隼人に、溜息がこぼれそうになる。


…やっぱり


所詮、私なんかを好きになるはずないんだ。


中学の時、何度か告白された事がある私。でも決まって1人じゃ辛いだろ?俺がそばにいてあげるよ。と言われる始末。


どうやら、ひとりぼっちでいる私が可哀想に見えるらしい。


そんなのいい迷惑だ。

同情なんていらない。


同情するなら金をくれ!

同情するならーー…





ってちがーう!?

こんな昔流行ったフレーズは、どうだっていいんだ!


何、私も昔思い出してるのよ…

今、関係ないじゃん。


とにかく、偽りの言葉で女の子をいつも口説いてるって事は、つまり女の敵なのだ。



『そんな事は、やめた方がいいよ。言われた方はさ、相手の本心に気付いた時ものすごく傷つくんだよ。


そんなの、何の意味もないじゃない。無駄なだけ


そもそも偽りの言葉はさ、相手を傷けるだけなんだよ……それに心の傷ってさ、そんな簡単に治らないんだ。ジクジクと膿んじゃって目に見えない分、厄介なんだ。


だから、心にもない事は言ってはいけないの。ましては、好きなんて…そういう言葉は、本当に好きになった相手に言うべきだよ』


私は一気に話したが、ここで一旦一息つき、再び言葉を続けた。


『それに、 私なんかに無理やり笑顔作ってて疲れない?』


これは、隼人に会ってからずっと思っていた事だ。


『自分を偽っても疲れるだけだよ…。』


視線を床におとし、足元を見つめた。

自分が、イヤというほど理解している言葉だ


「……。」


さっきから目の前の隼人は無言だ。

沈黙が痛い…。


何だか気まずくて、顔を上げられないでいる

視線は依然と足元のまま。


ってか私、初対面の先輩に対してものすごく失礼な事を言ったのでは?


怒ってるよね…

うざいって言っちゃった

しかも、なぜか説教しちゃったし。



よくよく考えれば、人の事とやかく言えるほど、私は出来た人間ではない。


隼人は、私なんかよりずっと人に愛されているだろう(人気投票で上位になるぐらいだから)。


それなのに、友達すらいない私なんかがでしゃばってしまった。もしかして、受け流せば良かったのかもしれない。


どうしよう…

後悔ばかりがおしよせてくる。


よしっ!謝ろう


『あの「ぶはっ」』


言い過ぎましたごめんなさいと言おうと、顔を上げ隼人と目がパチリと合えば、いきなり吹き出したのだ。


~隼人 side~


リンちゃんと目が合った瞬間、俺は思わず吹き出してしまったんだ。


だって、さっきまでの説教していた勢いはすっかり消え、リンちゃんの目は狼狽の表情を浮かべていたから…

申し訳なさそうに上目遣いで見る彼女。いやいや、その態度煽ってんの?


それじゃ、可愛いだけだから。

メガネをはずした彼女の上目遣いは、もはや最強だと思う。


それにしても俺の事見破られたのには驚いた

何もかも予想外だ。


ましては、ウザイって…

女の子にこんな事言われるの初めてだ。


今までの女の子は、俺が好きって言えば頬を赤く染めて嬉しそうにしていた。


なのにこの子は、喜ぶどころか心底イヤそうに顔をしかめたんだ。


しかも、説教しやがるし。


それに最初から、反応はおかしかった。

普通の子だったら喜んで俺たちのいる生徒会に入るだろう。


写真もまさか使う事になるとは、思ってもみなかったんだ。



確かに、さっき彼女に言った言葉は嘘だ


好きになったなんて、ありえないだろ?

俺はただ、悠斗が気になった子がどんなやつか知りたかっただけだ。


だってあの悠斗が、俺のだ宣言した子だよ?

もしかして、悠斗が自分から関わろうとするなんて、初めての事なんじゃないか?


今までだって、何度も綺麗な女に言い寄られているのを見た事があるが、どの女も相手にしてなかった。


それなのに、絶対あの子がいいと言うくらいリンちゃんに惹かれている悠斗。


どんな女か気になるじゃん。


所詮、俺たちを顔でしか見てない女なんか興味はない。女なんてみんな一緒だ。


俺達の周りには、たくさんの女達が寄ってくる。 媚をうる女、計算高い女、とにかく俺達そのものを見やしない。


きっと、俺達の見た目が好きなのであろう。 甘い声で囁けばイチコロになる女を見て、騙されてやがると心の中で笑ってた。


だから、どんな女が選ばれてもどうでも良かった。この女も、どうせ他の女と同じだと思っていた


なのに、想定外のこの反応…


学校と外ではギャップがありすぎる変な女だ 。だがこいつは、今までの女とは違う気がする


それなりに楽しめそうだ


……面白い。

リンちゃん、俺は気に入ったよ  


~隼人 side end~




クスクス笑い続ける隼人を見て戸惑った。

何がおかしくてこんなに笑い続けているんだろうか?


失礼な事を言っちゃったのは事実。

とりあえず謝るべきだよね?


『あ、あの…』

「ごめんごめん何?」


私が戸惑いながらも口を開けば、笑いを落ち着かせて私を見つめてきた隼人。


『言い過ぎました。ごめんなさい』

「いいよ~。俺もからかってごめんね」


きちんと頭を下げて謝れば、私の頭をポンと撫でて


「リンちゃんが謝る事ないよ。俺がいけないんだし。だから頭上げて?」


その言葉に私は頭をあげれば、隼人は柔らかく微笑んでいた。


…あれ?


仮面なくなった…?


い、いつの間に!?

ガラスの仮面か?


…もしかして笑いすぎて壊れたのだろうか?

そうか。

隼人の仮面は脆いガラス製だったのか。


フフ。

思わず笑みがこぼれた。


「リンちゃん……俺は……ガラスの仮面じゃないよ?」


何故か、私の事をジトーッとした目で見つめてくる隼人。


自分でガラスの仮面って言ってる!

認めちゃったよ!


マジで、ウケるんだけど!?


そんな事を思っていると、隼人は苦笑いしながら口を開いた。


「リンちゃん…声…でてるよ?」


へ?


って声でてたの?!




『い、いつのまに!!』

「…リンちゃんって、実は天然ちゃん?」

「いやいや、天然って言ったら私より、生徒会長様でしょ?』


「ぶはっ!」

『だよねー!』


2人でケラケラ笑いあった。こんなに笑ったの久しぶりだ。


最初は隼人の事苦手だと思ったけど、案外話しやすいやつだったんだな~と思い直した。


***


放課後になり、生徒会室に行こうとすぐに教室をでた。でも、どこにあるか分からない…


とりあえず、先生に聞いて、ようやくたどり着いたのだが…


やばっ。


何だか緊張する。


いかん、いかん。

リン、平静を保つのよ!


ドアの前で深呼吸をしてみたりして。


落ちついたところで、ガチャリとドアを開ければ目の前の光景に息を呑んだ


…ひ、広い


一言で言えば、豪華だ。

ソファや、ミニキッチン、冷蔵庫、そして何故かテレビまである。


充分、ここで生活できそうだ。

というよりここに住みたいくらいだ。


「遅かったな。迷ったか?」


神崎先輩の声に、視線を窓際の机に座っている彼に向ける。


どうやら、待たせていたらしい…


『はい。ちょっと迷ってました…ごめんなさい』

「いや、いい。それよりも適当に座ってくれ」


私が謝れば、神崎先輩は私に座るように促した


でも、一体どこに座ればいいのだろうか…?


室内の右側にはテーブルがあり、その周りにはL字型のソファと2人がけのソファがある。


神崎先輩が座っている左側スペースには、机が並んでいて


なんだか会社みたいだ。

そんな事をぼんやりと思っていると


「リンちゃ~ん」


私を呼ぶ声が耳に届き、彼に視線を向けた。


悠斗の机の横に置いてある椅子に座りながら笑顔で手をヒラヒラ振っているのは隼人で、私も手を振り返してみる。



「僕の膝の上に座りなよ」


そんな隼人の言葉はスルーだ。


「チッ」

「…って悠斗痛い!蹴るなよ」


…とにかくどこかに座らないと


一之瀬先輩はドカッと2人がけのソファに座って携帯を弄っていて


オレンジ色のヘアーの可愛らしい男の子がL字型のソファの端に座り、ニコニコとこちらを見ている


悠斗とは違う並べられた机の上で、パソコンをしたままチラリと視線を向けたのは茶髪の彼。


……ここは、芸能事務所ですか?


オレンジくんと、茶髪くんもまたイケメンだったんだ。


とりあえず私は、オレンジくんの座るL字型ソファの端にちょこんと座った。



神崎先輩がオレンジくんに視線を向け口を開いた。


「まずは自己紹介だな。俺たちは、もうやったから、伊吹お前からやれ。」


「……おぅ。」

「俺は、会計の佐野伊吹さの いぶきだっ。」


甘い笑顔だ。かわいい系だね。


「リンって呼んでいい?俺のことも伊吹ってよんでね?」


私がコクリと頷けば、満足そうに極上スマイルをくれた。


か、かわいい…

あまりの可愛さに笑みがこぼれた


「初めて笑った顔見た~!リンって笑うと可愛いじゃん!!」

『…そ、そんな事ないよ…』


いやいや、伊吹のが断然可愛いですから…

男の子に可愛いって言うのも失礼だけどさ、本当に可愛いんだもん。


女の私でさえ、こんな可愛くできないよ…


それよりも、伊吹は年上?

それとも同じ学年?

でも年上には見えない気が…


『伊吹って1年生?』


同じ学年だといいな…なんて思って問いかけた瞬間、伊吹はホッペを膨らませた。




『あ、ごめん!年上だった?』


「リンちゃん、最高!」

「チビだから目立たねぇってよ!」

「隼人も蓮も五月蝿い!」


私は1年と間違われた事に怒っているのかと思ったので謝ったのだが、なぜか隼人と一之瀬先輩に爆笑されたんだ。


「俺、リンと同じクラスだよ。リンと出席番号も近いのに…」

『……え?』


ま、まさかの同じクラス!!もう1か月以上たつのに私ったら…


「どうせ…俺なんか…」


伊吹くん、ちょっと拗ねちゃってます。


『伊吹、ごめんね…』


本当に申し訳ない。

クラスの子の顔や名前とか全く覚えていないんだ。別に記憶力は、いいほうだと思う。


ただ、必要なもの以外覚えないだけで…


『でも私、伊吹が同じクラスで心強いな!これからよろしくね?』

「…おぅ!」


笑顔に戻った伊吹に、ホッと胸を撫で下ろしたんだ。



「俺は…」


茶髪くんが口を開いたので茶髪くんに視線を向けた。


「副会長補佐の水島みずしま しょう2年だ。」


茶髪の彼は話し方も落ち着いていて、大人な雰囲気のイケメンだ。


「俺も翔でいい。堅苦しい言い方は嫌いだ」


コクンと頷けば、一之瀬先輩が「ちなみにー」と口を開いたので一之瀬先輩に視線を移す


すると、


「俺の事は蓮さまって呼べよ?」


ニヤニヤしながら、こんな事を言ったんだ。


……は?



何?蓮様って?

いやいや。ありえないから!


私は、イヤイヤと首を横に振り


『レンって呼ぶ』


と言った。怖いけど、言ってやった!


俺様口調のあいつには、蓮でいい。

誰が様なんてつけるか!?


「チッ」


舌打ちきた~!!


すると今度は、みんなが私に注目してきた。これって、次は私の番っていう事だよね?


『……花菜月 凛15歳です…。ふつつかものですがよろしくお願いします。』


緊張しながらも、何とか自己紹介をした。

こういうのは慣れていない。


それよりも、ふと気になったことがある。生徒会長に聞きたい事があったので、神崎先輩の方へ顔を向けた


『あの~神崎先輩…。』


私が名前を呼べば、グッと眉間に皺が寄った神崎先輩。

急に不機嫌になってしまった彼を見て不安になり視線を外した。


もしかして、名前で呼んじゃいけなかったんだろうか?やっぱ会長って呼んだ方が…


『・・・。』

「・・・。」


怒っていそうなので言葉が続かない。

どうしたらいいの…?



「…ゆうとだ。俺の事も、ゆうとと呼べ。」


困っていると、そんな声が聞こえたので視線を悠斗に戻した。


少し呆れ顔をしている悠斗に、私は『はい』と頷き返した


生徒会長まで、呼び捨てでいいのだろうか?

嬉しいやら恥ずかしいやらでいっぱいだ。


『…ゆうと、生徒会の仕事というのはいつやるの?毎日?バイトの日はバイトに行ってもいい?』


気になったことを聞く。


「基本放課後だが、授業中の時もある。バイトはもちろん今まで通りでかまわない。生徒会の仕事がある時は連絡する。後で、皆と連絡先を交換するといい」

『はい。』


「ところで、明日さっそく生徒総会がある」

『生徒総会?』


「あぁ。生徒会役員の紹介みたいなものだ」

『そっか…。』


いよいよ明日か。


その後…

家族とバイト先以外の連絡先が5件も増えた


5月末。

生徒総会が行われた。


ザワザワする体育館。

生徒会のみんなが壇上にあがる。


それと同時に湧き上がる歓声。


「ゆうとさま~!」

「伊吹くんかわいぃ~。」

「隼人さまこっちむいて~」

「翔さま今日も素敵~。」

「蓮さまおしゃれ~!!」


コンサートかよっ!


様つけちゃうのね。

何気に伊吹だけは「くん」って…。


俺はかわいくねぇなんて言って、伊吹は拗ねている。


でもそんな姿の、伊吹も可愛くて…


あ…私も思っちゃったわ

ごめんね伊吹。


みんな人気なんだね。イケメンだもんね。


「なにあいつ?」

「え~なんであの子なの?ブスじゃん」

「ありえな〜い!」

「本当、ブス。怜奈様とは大違い!」


そんな罵声も飛び交っている。


平穏に過ごす事などもうできない事実に、失墜感を覚えたのだった。

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