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ギャップ彼女  作者: 星川瑠月
第1章
2/16

出会い

入学して1か月すぎ。

気づけば5月中旬になっていた。バイトも学校の生活にも慣れた。


これといって何事もなく平穏に過ぎていく。


お昼休み。



いつもの様にお弁当を持って屋上に行く。

この屋上に通い続けているが、誰かがこの屋上にくるなんて事は1度もなかった。


いつもの様にお弁当を食べ、仰向けで大の字になって寝ころんだ。

まぁ、足はそんなに開いてないけど…


気持ちいい〜♪


食後にゴロゴロ寝転ぶのって、本当に最高だと思う。日陰になっているので、日焼けする心配もない


そのまま意識を手放した…







あれ…誰かの声がする?


ヒソヒソ話。



しかも一人じゃない。2人?いや3人?

会話はよく分からないが声がする。



でもまだ眠い。

頭が働かない。


「おい」


誰かを呼んでる?


「お前」


また別の声がする。

ってかうるさい。人の睡眠を邪魔しないで欲しい。


私じゃないよね?友達なんていないし…。

それよりも眠いんだけど。


「そこの女!!」


……え…女って…あたし…?


怒りと苛立ちを含んだ声に恐怖を感じ、目が覚めた。はい、覚めましたとも。


恐る恐る目を開けると…

誰…この人?


知らないんだけど。


なぜか私の目の前に、ヤンキー座りをする目つきの悪い金髪くんがいるんだ。


不機嫌な様子で、私を睨んでいるように見えるのは気のせいだろうか?

顔が整っているが、なんだか怖そうだ。


そして金髪くんの後ろには、赤髪くんと黒髪くんがいる。この2人もまたイケメンで…

でも私には、こんなイケメンの知り合いはいないし。


本当、この人達は誰なんだろうか?



そんな事をぼんやりと考えていると、赤髪くんが口を開いた。


「いや~女の子が、まさかこんなところで大の字で寝てるなんて…ねぇ…。」


赤髪くんが、クックッと喉を鳴らして笑っている。


『……。』


……え?




あ!?


私は、自分がありえない態勢で寝ている事を思い出した。


『いやぁぁぁぁ~』


「……っ!?」

『……っ!?』


……い、痛い


慌ててがばりと起き上がった私の頭が、なんと金髪くんの顎に、見事にクリーンヒットしてしまったんだ。


金髪くんは、顎を押さえ悶絶中…



『…だ、大丈「痛ぇじゃねぇか!?」


大丈夫ですか?と言葉を続ける前に、目じりを吊り上げた金髪くんに、睨まれた。



『ごめんなさ~い~!!』



マジで怖い…

睨まないで…こっちも痛かったのよ〜!


「まぁまぁ」


金髪くんをなだめるのは赤髪くん。

そう言いながらヘラヘラと笑ってるし。


助ける気あんのか? 赤髪くん。

思わず正座をしてしまっている私。


何か用なのだろうか?

それとも知らない間に、何かやらかしてしまったんだろうか?


私は、自分のギュッと握った拳を見つめながら考えていた。しかも何か、怖くて顔があげられない。


とりあえず聞いてみよう。


『あの~何か用でしょうか?』


視線を恐る恐るあげ尋ねた。しかし、


「…あ゛?」


と、金髪くんが眉を寄せ低い声で言う。


ヒ~ッ!!

怖いんですけど!?


そんな睨まなくても…


「お前」


そんな時、黒髪くんに呼ばれたので彼に視線を向けた。


背も高く、切れ長の瞳、スッと通った鼻筋、形の良い唇……イケメン部類でも、綺麗系の男の人だ。


でも…この人どこかで見たことあるような。

どこだろう…

記憶の糸をたぐりよせてみる



あ!

バイト先に食べに来てた気がする…多分…


「……。」

『……。』



お~い黒髪くん?

それにしてもなぜ次喋らない?しかも、なぜそんなに私を見つめる?


にらめっこか?どちらか笑うまで勝負か?

それか、先に目をそらした方が負けか?

よし。その勝負受けてたつわ


私も負けまいと、黒髪くんを見つめ返した。


でも、なんだろう…

この瞳を見ていると、不思議な感覚に陥ってくる。



この綺麗な瞳…どこかで…



「…お前は、俺のだ。」



……は?



私が綺麗な瞳に見入っていると、黒髪くんがこんな事を言ったんだ。


私は、自分の耳を疑った。


「………俺のだ」

『……っ』


し、しかも、もう1度言った!?


ポカン。

開いた口が塞がらないとはまさしくこの事だろう。


私が面食らってぽかんとしていると、赤髪くんがクスリと笑い口を開いた。


「ゆうと~それじゃぁ凛ちゃんに伝わらないよ~」


赤髪くんって、なんだか口調がかるい感じがする。もしかしてチャラ男なのだろうか?


赤髪くんは少し短めの髪をワックスで自然に流してあり、顔立ちも整っている。だまっていればさわやか系のイケメンなのに…


なんだかもったいない。


しかもこの人、笑い方が胡散臭い。

本気で、笑ってるのか?

どうも作った感じがして嫌だ…


その横で大爆笑している金髪くん。


「…そうなのか?」


赤髪くんに、視線を向け不思議そうな顔で答える黒髪くん。


はい。

普通に意味分かりませんけどーー…




……あ、もしかして黒髪くんて、天然!?


うん。

きっとそうに、違いない。


そんな失礼な事を思っていると、私に視線を戻した黒髪くんが口を開いた


「お前は特待生の花菜月 凛だな?」

『はい…。そうですけど』


黒髪くんは、真剣な顔つきで見つめてくる。何が言いたいんだろうか?

私が首を傾げているとーー…


「花菜月 凛。お前は、俺が決めた女だ。俺のところへ来い」

『…へ??』


あまりの衝撃の言葉に変な声がでてしまった。今まで、そういうセリフ言われた事なかったから、不覚にもドキンと心臓が高鳴ってしまった。


しかし、


その後ろで、赤髪くんと金髪くんは、ヒーもう無理~と言いながら地面を揺るがすほどの大爆笑をぶちまけていた。


『……。』


なんだ。からかわれたのか。

バカにして~!!

無駄にドキドキしちゃったじゃないか。


ひとり無音の溜息を吐いた。


こんなイケメンくんが私なんか相手するわけないよね!!


本当馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。

イライラした私はキッと黒髪くんを睨んだ。


私に睨みつけられた黒髪くんは、何で私が怒っているのか理解不能な様で、キョトンとしている

そんな時、やっと笑いが落ちついてきた赤髪くんが口を開いた。


「ゆうと~もう俺から説明するけど良い~?」

「あぁ」


黒髪くんは気分を悪くしたように、眉間に皺を浮かべている。


「この前、生徒会役員を決める人気投票あったよね?」

『そんなのあったんですか?』


赤髪くんが、さも知ってて当たり前みたいな口調で話しかけてきたが、当然知らない私は平然と答えた。


すると赤髪くんは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたのだ。


「……。」

『……?』


赤髪くんはポカンとしたまま固まっている。

黒髪くんに視線を移せば、黒髪くんもまた、きょとんとした顔をしていた。



何その、反応…

知らないもんは、知らないんだけど


チッと舌打ちしたのは、金髪くん。

不機嫌オーラが漂っている


何だかこの雰囲気イヤだ…

何、この微妙な雰囲気は?

これじゃぁ、私KYみたいじゃん。


誰も口を開いてくれなかったので、意を決して私から話しかける事にした。


『……あの~?』


すると、ハッとした赤髪くんが苦笑しながら


「あんなに騒がれていたのに知らなかったんだ?友達とかとそういう話しなかったの?」と言った


『あ~いや私、友達いないので』

「……。」


私がそう言うと、赤髪くんは再び固まった。その憐れみの目で見つめるのは、やめておくれ


「じゃ~さ~俺と友達になろ~!!俺は隼人。黒崎隼人~隼人って呼んで!!凛ちゃんの友達一号ね~」


私の両手を握り、ヘラヘラしながら赤髪くんがいう。 赤髪くんは隼人というらしい。

「ねっ?」と隼人は、コテンと首をかしげている。


何で、いきなり私なんかと友達になりたいなんて言うの?しかも今初めて会った人だよ?


やっぱりこの人、胡散臭い。 そんな偽の友達、私はいらない…。

ぐっと拳に力が入った


『……あ、いや「ごちゃくちゃうっせんだよ!!話それてるじゃねぇか!!早くしろよ!!」


お断りします。と言おうとしたところ、金髪くんの怒鳴り声に遮られた。


金髪くん短気だね。

もはやキレキャラだね。


「ごめんごめん。じゃ単刀直入にいうよ~」

『…はい』



隼人の言葉に、コクンと頷き返事した。

すると、隼人はニヤリと笑って口を開いた


「花菜月 凛ちゃん。あなたは生徒会役員に選ばれました~!!」

『…。』



は?



『……はぁ~~?』


意味わからない。

ってかこれはドッキリか?

いつも目立たない私をおちょくって、あとでみんなで笑うのか?


「おめでとう。同じ生徒会役員同士頑張ろうね。ちなみに俺は副会長。ちなみに2年だ」


金髪くんを指さして 「あっちの金髪が、書記の一之瀬いちのせ れん2年生。」


黒髪くんを指さして 「そして最後にあいつは生徒会長の神崎かんざき 悠斗ゆうと。あいつも2年だ。」


「覚えた?」


隼人の説明に私は、コクリと頷いた。

何と、3人のイケメンさん達は、生徒会の方々だったのだ。本当、驚きだ。


あ!?


リン。流れに飲まれれちゃダメよ!?

私は忙しいんだ。バイトもあるし。生徒会なんてやっている場合ではない。


それに、人とあまり関わりたくない。


『生徒会なんて私には無理です!!ごめんなさい!!』



確かに私は、はっきりと断った。

だがしかし、私を見つめる隼人の目の色は勝利の色そのもの。


もしかして、何か企んでる…?

私がビクビクしていると、ニヤリと口角をあげた隼人が口を開いた。


「そんな事いっていいのかな?断る事はできないと思うよ。リンちゃんは、キャンディカフェって知っている?もちろん知ってるよね?」


『……っ!?』



なぜその名を今ここで?

バレたのか?


変装はバッチリだったはず。

いや人気店だし。ここで慌ててはいけない。


『その、キャンディカフェがどうしたのでしょうか?』



平静を装って尋ねる。

うん。

絶対大丈夫………だと思ったのに、


「そこのバイトの凛音りおんちゃんって凛ちゃんでしょ~?」

『……』




チーン。終わった。


凛音はバイト先での名前だ。

店長にお願いして偽名を通している。


「証拠は、あがってるんだ!!」


金髪くんが、にやりと口角をあげたまま正座した私の前に、その写真を落とす。金髪くんは、どこか楽しげだ。


『あっ…』


その写真は、私が接客中の写真と、制服姿の私が店の裏口に入っていく姿の写真。なぜこんな写真が…?


警察に事情聴取されている気分だ。


終わった。

私の高校生活終わった…


こんな事バレたら、特待生の権限である授業料免除がなくなってしまう。貧乏だから当然、私立の高い授業料なんて払えない。


そしたらやめなくちゃいけないよね…

はぁ。


転校ってどうしたら良いんだろう。

また新しい制服買うのか?そしたらかなりの出費だ。



下を向きながら、顎に手をあててそんなことをブツブツ言ってると、


「だから、言ったでしょ?」


いつの間にかしゃがみこんで、私の目の前にい

た隼人。目線が同じで、視線が絡みあった。


『……。』


ちっちかい〜!?顔近いんだけど!!

ってか、何が言いたいんだ?


すると、隼人は私の顎をクイッとあげ、フェロモンたっぷりの表情で見つめ


「もう逃げられないんだよ」と言った


そんな近くでフェロモン放出しないでよ!!

このフェロモン男め!!



はぁ~

逃げられないか…。

どうするか。



すると「隼人」と低い声で黒髪さんが呼んだ。

チロリと視界にはいった黒髪さんは、眉間にシワを寄せ黒いオーラを放っていた。


断ったから怒っているのだろうか?


「あ~悪ぃ。」


フッと笑った隼人は顎から手をどけ、離れてくれた。


『あの~?選ばれたとは一体どういう事か教えて下さい。』


どうやって生徒会役員を決めるのかも私にはさっぱり分からない。


隼人は説明してくれた。


生徒会役員といのは、重要職務の5人は、学校内の人気投票で決める。

みんなの支持は大切だからと…。


つまりベスト5が生徒会役員になるという事。残りの庶務1人は生徒会長の権限で決められるらしい。



ちなみに、4月末に人気投票を行い、任期は6月から来年の6月までという事。



うん?


会長と知り合いでもないぞ?

しかもなぜこんな目立たない私なのか?


『なぜ、私なのですか?』



私よりもっと、社交的な方がいると思うのだけど…。しかも、よりによって私だよ?


「それは、生徒会長の悠斗に聞いてくれ。決めたのは悠斗だ。」


隼人は、ニタニタしながら神崎先輩に視線を向けたので、私も神崎先輩に視線を移した。私がジッと見つめれば、神崎先輩は私を見つめ返して来た。


絡み合う視線。


神崎先輩の真剣な眼差しに、どきり、と心臓の鼓動が大きくなる。


しばしの沈黙後、神崎先輩は口を開いた。


「…気になったからだ。」

『……っ!?』



それって、どういう意味!?

そう言いたい言葉を飲み込んで、神崎先輩を凝視した。


相変わらず、真剣な表情の神崎先輩。

どうやら、からかってはいなそうだ。


まぁ、特に深い意味はないのだろう。

なんせ、天然男だから…。


さっきの俺のだ宣言の事もあったし、真剣にとらえちゃだめだね。


「イヤか?」


こちらをジッと見つめてくる彼。

吸い込まれそうな、この漆黒の綺麗な瞳を見ていると、やっぱり不思議な感覚に陥るわけで。




…なんだろう。


懐かしいような、胸が温かくなるようなこの感覚は…



でも、私なんかで本当にいいのだろうか?

まぁ断ったところでバイトの事はバレてるんだし、今さら転校なんてそれも厄介だ。


生徒会を引き受ければ、バイトの事はだまっててくれるという事だよね?


よしっ。決めた!?


『私、やりますね。生徒会』


不安が隠しきれないが、引き受けるしかないんだ。


「そろそろ飯行こうぜ~腹減った。」


話が終わった直後、一之瀬先輩はダルそうに屋上の扉に向かって歩き出した。


そうか、お腹が空いていたから、イライラしてたんだ…

一之瀬先輩は、案外可愛いかもしれない。


「あぁ」


一ノ瀬先輩の背中を見つめていれば、私の右斜め前にいた神崎先輩が「リン」と呼んだので、視線を移した。


「放課後、生徒会室に来いよ」


私がコクリと頷けば、神崎先輩は満足そうに、フッと笑って、一之瀬先輩の後をついて行った


今、笑ったよね?一瞬だけど…。

なんか、会った時からずっと無愛想だった彼


しかもたまに、イライラしてたし。

今、笑ったのは意外だった。


「そういや~まだだったねー」


ヘラヘラしながら後につづく隼人。


バタンと屋上の扉が閉まり、やっと1人の空間に安堵した。


はぁ。疲れた。

久しぶりに、学校で会話したかも…。


引き受けたけど、私なんかが上手くやっていけるのかな…?


それに、あの隼人。

ヘラヘラしてるけど、あの作った笑顔…はっきりいって苦手だ。ヤンキーちっくな一之瀬先輩より、ある意味恐い。


はぁ。


壁にもたれかかったまま、空を見上げた。


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