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ギャップ彼女  作者: 星川瑠月
第1章
1/16

偽りの姿

 学校での姿は、偽りの姿。





「友達なんていらない。」


ほっといてよ 一人が好きなの!!





学校では地味なメガネ女子が出会ったのは


イケメン5人がいる生徒会 



「俺が決めた女だ」

「俺が守る」

「大切な仲間だ」

「俺といい事しよ?」

「こいつは俺の女だ。」





それと、再会した 昔好きだった 

幼馴染の彼




「俺は諦められね~」

「覚悟しとけよ?」










彼女が失っている過去とは?








今、始まる…



「リンちゃんおつかれさま~」


笑顔で話しかけてきたのは、バイト先の店長

崎川昴さんだ。


短めの明るいブラウン系のヘアーの店長は、おしゃれメガネをかけたイケメンさん。



見た目年齢は20代前半に見えるが、実際は分からない。年齢不詳だ。



『お疲れ様でした。お先に失礼します』



ぺこりとお辞儀し、更衣室に向かう。



軽くウェーブがかかったミルクティブラウンの長めのフルウィッグを外し、黒髪をいつものようにふたつにしばる。


仕上げに眼鏡をかければ、普段の姿の完成だ


ここ「キャンディカフェ」でバイトをするのは、私立桜譁高校に通う高校1年生の花菜月かなつき りん15歳だ。


キャンディカフェはちょっと変わっていて、女の子はメイド服、男の子は執事服である。


しかし「おかえりなさいませご主人様…」

などというセリフは、もちろんない。


接客はごく普通のカフェなのだが、半年に一度お客様による人気投票みたいなものがある。その人気投票で上位に選ばれると、ボーナスが貰えるという仕組みだ。


お客様も、女性だけではなく男性も多い。


スタッフも皆接客には丁寧だし、何よりも料理がおいしいからだ。


リピーターが増えに増え、かなりの人気カフェだ。


しかも、時給がかなり良い。


お金がたくさん必要な私にとって、本当にありがたい働き場所だ。



店の裏口のドアを少し開け、誰もいないかそっと覗き、確認できたら素早く出て自転車に乗る


なんとまぁ、はたからみたら、あやしい行動ですね。


本当。


なんでこんなにビクビクしなきゃいけないって?


そりゃぁ…


私の通う桜譁高校はバイト禁止だからだ。

校則を破ったことがバレたら…と思うと怖い


普通の生徒だったら校則ぐらい~と思うだろうが、私には重要だ。



特待生の私にとっては。


***



「ただいま』


バイト先から自転車で10分のところに我が家がある。


「お姉ちゃんおかえり~」


そう答えたのは、小学4年生弟の凛久リクだ。


「おかえり」


ニッコリ笑うのは、母、麻理。


『パパ…ただいま』


仏壇の前に座り、手を合わせながらボソリと言う。


8年前、天国に行ってしまったパパ。交通事故だったらしい。


らしいというのは、私は知らないからで…


……というよりその頃の記憶がない。


すっぽりと記憶が抜け落ちていて、気付けば病院のベットの上だったんだ。


最後の記憶は、確か夏休みに入ったばかり(そのあたりもうろ覚え)だったのだが、目を覚ました時には季節は変わり、なんと秋になっていて…


軽くタイムスリップした感じで、自分でも不思議な感覚だった。


記憶のない私には、パパが亡くなったなんて信じられなくて、その当時たくさん泣いた。


なんせ、パパのお葬式にでた記憶もない。薄情な娘なんだ。



"どうして私は病院に寝てたの?"

"どうして私は記憶がないの?"


小さい頃、1度だけお母さんに聞いた事がある。でも、その直後「リン…ごめんね…」と涙を流した母の姿を見てからは、聞けなくなってしまったんだ。


いつも笑顔の母でいてもらいたい…そう思ってたから。


それまでずっと、専業主婦だった母は、慣れないパートを始めた。


昼は、スーパーで働き、夜は居酒屋で。


それまで家の手伝いなんてした事があまりなかったが、少しでも母の負担を減らしたく、家事など頑張った。


お金がないので高校も諦めようと思ったが、


母に猛反対され、先生が勧めてくれた授業料免除の桜譁高校を受けた。


一生懸命勉強し、はれて授業料免除の桜譁高校の特待生になれたんだ。




「じゃぁ、行ってくるわね」


女手一つでここまで育ててくれた母には感謝している。


2人の子供を子育てしながら、お金を稼ぐ事がどんなに大変かという事は、自分なりに理解しているつもりだ。


だから私は、高校生になったら働いて少しでも生活費を稼ぎたかった。


少しでも、母の力になりたい。

母を楽にしてあげたい。


そう思ったんだ。


『行ってらっしゃい。あまり無理しないでね!!』

「ありがとう」


柔らかく微笑んだ母は、仕事に向かった。


* * *


ピーピッピー


カーテンからこぼれる陽の光に目が覚める。目覚まし時計を見ると6時。


ヤバッ、ちょっと寝坊した。

急いで起きてお弁当と朝食を作り始める


遅くまで働いている母の為に、朝は私が料理をするようにしている。と言っても簡単なものだけどね。


お弁当も、もちろん自分で作る。

ついでに母の分も。時間がないから昨日の残りのから揚げも入れちゃうけどね。


アハハ~。


6時30分に、急いでリクを起こす。


『リク、おはよう。起きて?』

「……お…は…よう…」


リクは朝が苦手だ。

毎朝の事だが、ボーッとしている。


『リク、遅れちゃうよ?』

「…………う……ん………」


とにかく動きが鈍いんだ。


「…いた……だきま…す」

『リク、箸がバラバラだよ?』

「…あ………まいっか…」


リクは、本当マイペースだなぁ。

ま、それでも弟が可愛くて仕方が無い。




「リン、リク、おはよう。」

『おはよう。お弁当ここに置いておくね?』

「リン。いつもありがとうね」


起きてきた母に私がそう言うと、母は申し訳なさそうに笑みをこぼした。



『いいって~昨日も遅かったんでしょ?もうちょっと寝てればいいのに…。』


すぐに無理をする母。

そんな母を、私はほっとけない。


『それに、家事は結構好きだよ』


それは本当だ。

特に料理は、好き。


おいしいって言われると、嬉しくなちゃうんだ。





「「行ってきま~す」」

「行ってらっしゃい。気を付けてね」


母に見送られ、リクと一緒に玄関をでる。


『リク、車に気をつけるんだよ?』


車というのは危険だ。

居眠り運転、余所見運転、飲酒運転、暴走車…


ニュースでよく、色んな事故を耳にする。

いつどこでそういう車と出くわすなんて分からないんだ。


だから、リクにはいつもこう言っている。


"少しでもおかしな車がいたら、その車から離れる事。"


"車が止まってくれると思い込まない事"


"たとえ信号が青でも、横断歩道を渡る時は確認する事"


心配性だって分かっている。

でも、これ以上大切な家族を失いたくないんだ


「うん。お姉ちゃんこそ、自転車気をつけてね?」

『ありがとう』


私は自転車で、リクは歩いて、家から別々の方向へ向かう。


小学校は割と近いが、桜譁高校は自転車で20分ほどの距離。


電車で通うのはお金がかかるので、自転車で通っている。


***


始まる5分前に教室に入る。


今日も絶妙なタイミングだ。

あんまり早くても、特に話す相手もいないからつまらないしね。


誰とも挨拶をかわす事なく、窓際の一番後ろの席に座る。



席は、クジで決めた。

クジ運がいい私は、一番いい席だ。

ちなみに2~3か月に1回クジびきで席が変わるらしい


先生が来るまで、ぼんやりと窓の外を見ていた。窓からは中庭が見え、桜の花びらが春風に乱れるように美しく舞っている。



…綺麗



ここで少し学校について説明しよう。

各学年、A組からF組まである。

ちなみに、私はA組だ。


体操服やシューズは学年ごとに色が違う。

1年は赤、2年は黄色、3年は青の信号カラーだ


建物は南校舎と、北校舎がある。


各学年の教室があるのは南校舎。

1年は1階、2年は2階、3年は3階にそれぞれクラスがある。


反対に視聴覚室や理科室などがあるのは、北校舎。


渡り廊下で繋がっているが、授業や用事がないかぎり北校舎には行かない。




クラスの担任がやってきた。


伊藤先生。

少し小柄の先生で、40代の男性教諭。

基本ニコニコ顔だが、怒ると意外と怖い



さっそくHRが始まった


「入学して1週間たったがもう慣れたか~?

ここで生徒会役員を決める投票について話をするーー…」


私は、先生に視線を向けたまま、


"今日の夕飯は何にしようかな…?"


などと、ぼんやりと考えていた。

まぁ視線はちゃんと先生に向けているので、聞いていますアピールはできている。


先生も、まさか私が実は何も聞いていないなんて思わないだろう。


今日はバイトが休みだから、夕飯は私が作るんだ。


昨日は、お母さんがオムライスを作ってくれたから、今日は………う〜ん。


あ、忘れてた。

オムライスで思い出したけど、今日は、確か卵が安かったんだ。帰りにあそこのスーパーに行かないと。


4時だっけタイムサービスは。

早めに行って並ばなきゃな…


ちなみに毎朝、広告チェックをしている私。

自転車で通う家と学校の間に、スーパーが4店舗、ドラックストアが2店舗もある。


ドラックストアもお菓子が安いので、意外とあなどれない。

私の大好きなチョコも大抵ここで買っている


少しでも安く買いたいんだ。

たった1円。されど1円。

1円を笑うものは1円に泣くんだ。


すでに主婦の心得が身についている私。

いつでも結婚できそうだ。





……って、相手いないし。


まぁ、今のとこ恋愛なんて興味ないし、する気もない。恋愛には女のトラブルが付きものだしね。


彼氏いない歴=実年齢の私が言うのも変だけどさ。


もうこりごりだ。

今は、ただ平穏に学校生活を送りたいだけだ



それはもう、ひっそりと。

目立たないように。

空気みたいな存在でいい。


卒業アルバムを見て、こんなやついたっけ?

ぐらいの立ち位置でかまわないんだ。


「… … …以上だ。」


…あ…


すぐに自分の世界に入り込んでしまう私。

気付けば、先生の長話は終わっていて、結局何にも聞いてなかったんだ。


まいっか。

どうせ大したことないだろうし。


そう思う事にした。



午前の授業が終わり昼休み。

お弁当を持って北校舎の屋上へ向かう。


この屋上は私が学校で唯一心休まる場所だ。

私には、1人でくつろげる場所が必要だった


それは、初めての昼休み時の事。


一人でお弁当を食べようとすると、周りの女の子たちが、こちらを見ながらヒソヒソ話をしているのが目に入った


人を馬鹿にしたような薄笑いを浮かべているクラスメイト達。


どうせ、けなしているのだろう。


はぁ…

ひとり無音の溜息をついた。


友達とあまり深く関わりたくないのは事実。

中学の時は友達関係で散々な目にあった。いじめ、陰口、裏切りなど。


友情なんて、こんなもんだと思い知らされたんだ。もう、友達ごっこなんてまっぴらだ。


親友?友情?その言葉に吐き気がする。

気持ち悪い…


一見、仲よさそうにしてるけどさ、あなた達本当に仲良いの?


誰かしら我慢している子はいる。心の中では、お互いどう思ってるんだろうね?


一人なら気楽だよ?

嫌われないようにビクビクしなくていいし。


人にどう思われようが私は何も感じないが、ジロジロ見られるのは、いささか不快なわけで…


大好きなご飯くらい、くつろいで食べたいと思った私は、別の場所で食べようと心に決めたんだ。


で、見つけたのは北校舎の屋上。

クラスがある校舎からは離れているので、わざわざこんな所にくる人もいない。


ガチャリと屋上のドアを開けた。

気持ちのいい四月の風が首筋を撫でる


『ふふ。良い場所みっけ!!』


誰もいないから本当落ち着く。

穴場スポットだね♪


右人差し指で床を指し、左手は腰に当てた。


『ここを私のオアシスに任命よ!!』


嬉しさのあまり、変なキャラ演じてしまう。

しかも声がでかかったので、屋上に自分の声が響き渡った。


……やば


だ、大丈夫だよね?誰もいないよね?

キョロキョロと見渡し、誰もいないことを確認する。


ふー。やれやれ。

誰かにこんな姿見られたら、もう恥ずかしくて明日から学校来られないよ。


ってか、あの場所いいじゃん。


ちょうど日陰になっているタンク前。

私はさっそくそこに座り、お弁当を広げた。


『いただきまーす』


さぁ、リンちゃんお手製お昼ご飯を食べるとしよう。やっぱり、から揚げちゃん最高だね


フフン♪


あっという間に食べ終えた私。

でもまだ昼休み時間は充分あるので、携帯のアラームをセットし、メガネは邪魔だから胸ポケットにしまって、寝る準備をした。


最初、壁にもたれ掛って寝ようとしたが、首が痛いので迷わず寝ころんだ。コンクリートがひんやりとして気持ちが良い。


柔らかい春の風が頬をなで、あまりの心地よさに、すぐに睡魔がやってきた。


意識が遠のく前に、誰かが小さくククッと笑った様な気がしたが、半分寝ていた私は特に気にすることもなく眠りにおちていった。


***


「ピーピーピー」


携帯のアラームが鳴る。

少しボーッとしながらアラームを止めた。



午後の授業まであと10分。


「よしっ」


気合を入れ立ち、屋上を後にした。



…あれ?


教室に向かう途中、何か忘れている気がして歩みを止めた。


えー…っと…




あ!

メガネ!メガネ!


慌ててメガネを装着。

メガネは実はダテメガネである。変装する為の必須アイテムだ。


いまだメガネの存在になれない私。

うっかりである。


***


午後の授業を終え、自転車に乗りスーパーへ行く。タイムサービスの卵もゲットできて気分がいい。


今日はバイトが休みだ。

バイトは、週4日程やっている。もっと稼ぎたいが、特待生の私には勉強も妥協できない


帰って夕飯を作った後、予習、復習をし、だいたい寝るのは23時頃。


そして朝は5時30分に起きる。


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