ジョーン家の戦い
世界から戦争がなくなって数百年。
そこに竜王と名乗る好戦的なやつが現れる。
竜王がいると死亡者が後を絶たない。そこで力のあるジョーン家が戦うことになる。
その戦いは長く、何度も何度も戦ってきた。
そして今、長年の決着が付こうとしている。
どこかの荒野。剣と剣が交じり合う音が響き渡る。音からして戦っている二人はほぼ互角。そうなればいずれは消耗戦になる。
一人は勇者のような防具をまとった男性。歳は30代半ばだろうか。しかし、その顔にはまだ少年のような感じも受け取れる。
もうひとりは重装備。とても重たそうな鎧を着ているのに軽々と動いているところを見ると相当の筋力の持ち主。
しかし、それを流している男性もすごい。力では圧倒的に負けているものの、それを技術で補っている。
「なかなかやるではないか、我が好敵手!」
「そっちこそ! 段々燃えてきたぜ!」
一層激しくなる金属音。しかし、これでは一向に勝負がつかないことは見ていればわかる。
ギン! と大きな音を立ててお互いに距離をとる。二人共肩で息をしている。
「なあ、ジョーンよ」
先に口を開いたのは重装備の竜王だ。
「なんだい、りゅうちゃん」
「まだその名で呼ぶか。お前も思っているだろうがこのままでは一向に勝負がつかん。そこでだ……」
と、竜王が指を鳴らす。すると、竜王から何かのフィールドが出現した。
「ま、まさか、これは……!」
恐怖と驚きで口がふさがらないジョーン。
「そう! まさにこれが『三色拳フィールド』!」
「なんでこんなもの、お前が使えるんだ!」
「がはは! 好敵手であるお前を倒すため、修行したのだ!」
「む、無理だ……勝てるはずがない……!」
「がはは! それでは参るぞ!」
勝ち誇ったような竜王の一方、恐怖で体の震えが止まらないジョーン。そう、この三色拳フィールドとは……
「「じゃんけん……」」
三回戦のじゃんけんで勝敗を決めるというものだ!
「「ぽん!」」
竜王:チョキ。ジョーン:パー。
「グヴァ!」
竜王の勝ち。しかし、このフィールドはただじゃんけんをするのではない。負けたほうが命を落とすという運ゲーdeathゲームなのだ。そのためジョーンには激痛が走り、吐血までしている。
「がはは! じゃんけんならお前には負けん」
「く、なんで俺はこんなにもじゃんけんが弱いんだ」
「さて、決めようか。じゃんけん……」
「「ぽん!」」
竜王:グー。ジョーン:チョキ。
どさっと跪くジョーン。
「何か言い残しておきたいことはあるか?」
しかし、ジョーンの目は虚ろだ。だが、ぼそぼそと何かを言い始めた。
「俺の……俺の息子に……お前を倒せ……と伝えてくれんか……」
「仕方ない。最高の好敵手の願いだ。叶えてやろう」
頼んだ。言葉にはできなかったがそう思って目をつむった。その近くで竜王は言い出した。
「俺を倒せだってさ~」
「そっちの息子じゃねえよ」
それがジョーンの最後の言葉だった。
父さんが死んでから十年後、俺の前に竜王が現れた。
「さて、勝負だ!」
そうして竜王から三色拳フィールドが展開する。わかっていた。コイツが来ることは。父さんの敵、ここで打つ!
「一回戦だ! 行くぞ! じゃんけん……!」
俺の得意技は相手が出す手をギリギリまで見れること。それを使ってこの勝負勝つ!
あいつは指二本が動いている。ということは出る確率が高いのはチョキ。ならばここはグーで立ち向かう!
「「ぽん!」」
竜王:パー。ジュニア:グー。
「な、なん……ぐわ!」
なんでだ? いや、あいつの方が上手ってことだ。ということほもう少し粘れるわけだ。今度は負けない。
「ゴヴァ!」
吐血。全身が痛い。
「うぐっ」
「がはは! どうだまいったか! あいつと同じくお前も負けるんだ!」
くそ、こんなんで集中できるか! でももう後がない。死ぬわけにはいかない。母さんを守るために。次は母さんをうちに来るはず。だから、負けない!
「さ、さあ、竜王、二回戦だ!」
「がはは! この死にぞこないが!」
「「じゃんけん!」」
これならどうだ! 二三九八年では消えたと言われている必殺技! これが読まれたら負ける。しかし一か八か! やつはパーだ。これはいいチャンス!
「「ぽん!」」
……。
「ぐるああああ!」
竜王:パー。ジュニア:チョキ。
「な、なんだ! それは!」
「ふ、これはな、男チョキ、別名昭和チョキだ!」
これが通ったってことはもしかしたら……。
「そ、そんなものがあったなんて。しかし、これで対等! 最後、行くぞ!」
「「じゃんけん!」」
まずこっちから動く。昔、じゃんけんと同じものが日本に存在した。名を虫拳。それを使う。やつは多分知らない。今、みんなが使っているチョキが女チョキ。しかし、あいつは男チョキの存在を知らなかった。ということはこの虫拳の存在は知らない。やつも相当粘れるようだ。さっきと同じ男チョキで誘って攻める!
「うおおお! 負けてたまるか! クソガキがあ!」
「父さんの敵! ここで取る!」
「「ぽん!」」
「ぐぴゃあああああああ!」
竜王:グー。ジュニア:パー。
「なんだ! それはあ! 小指を出しているだけなのに!」
「知らないのか? これはなじゃんけんの原型の虫拳ってやつだ。使うのは人差し指の蛇、親指の蛙、小指の蛞。これは順にグー、チョキ、パーと同じ。故にお前はグー、俺は蛞蝓のパー。つまり俺の勝ちだ!」
「ウヴァ!」
竜王が倒れ三色拳フィールドは消滅する。
「父さん、勝てたよ、俺……」
これで竜王がここ最近ランダムに勝負をふっかけて人を殺めるという事件はなくなった。
ジュニアは世界を救ったのだった。