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痛みの代償


川沿いの藪の奥で、淡い青白い光が――


こちらを探すように、揺れながら近づいてきていた。




「……来るぞ」




俺がそう言った瞬間、光は加速した。




水音を踏み潰すように、影が跳び出す。




見なくても分かる。


皮膚は黒い硬質な結晶に覆われ、胸部の赤黒い核が不規則に明滅している。




――ブラスターグール。




「下がれ、ニア」




言い終わる前に、俺はニアの石斧を握ると駆け出していた。




こいつは楽勝だ。


何度も倒してきた、はずの相手だった。




発光直後に爆ぜるが、爆心を外せば致死には至らない。


中心核を砕けば、それで終わりだ。




石斧を振り上げ横に切り払う。




硬い。


だが、想定内。




中心核に刃が食い込み、粉砕される――




よし――やった。倒した。




中心核が砕けた――はずだった。


だが、内部で、見覚えのない別の光が膨張する。




「……っ?」




視界が、白に染まった。






爆発?何故だ??




衝撃が全身を叩き、爆風で吹き飛ばされた身体が宙を舞う。


背中から地面に叩きつけられ、息が詰まった。




「――がっ!」




焼けるような痛みが、遅れて押し寄せる。




腕。


脚。


胸。




どこも、焼けるように熱く、


触れた瞬間、意識を持っていかれそうな痛みだった。




「くっ……!」




歯を食いしばり、起き上がろうとして――失敗する。




体がいうことを聞かない。




「ゼロ!」




爆風で麻痺した耳にニアの声が微かに聞こえる。


だが、返事をする余裕すらなかった。




違う。


知っているはずだった。




「……ゲームと、違うのか……?」




血の味が口に広がる。体中の痛みが消えない。




夢だ。


ゲームだ。


そう思っていた。




でも――痛い。




はっきりと。


現実と同じように。




「……夢、じゃない……?」




胸の奥が、冷えていくのが分かった。




視界の端で、まだ核が光っているのが見えた。




二体目。




「……まずい」




この距離、この体勢。


避けきれない。




そのときだった。




爆発音が――しなかった。




代わりに、ブラスターグールの首が落ちる。




「……?」




何が起きたのか分からず、目を見開く。




俺たちの背後に、


いつの間にか青い人影が立っていた。




長い髪。


女だ。




いつからそこにいたのか分からない。


気配も、足音もなかった。


気づいた時にはそこに立っていた。




女はグールの首をボールのように蹴り飛ばすと、


次に、俺とニアを見る。




「あんたたち、大丈夫なのかい?」




落ち着いた声だった。




感情が読めない。


評価するような、値踏みするような視線。




「あの手のバケモンはね、


考える前に首を落とす。


高い授業料になったねぇ。まぁ、死ななかっただけめっけもんさ。」




女は両手の短剣を腰の鞘に仕舞う。




「ほら、この火傷薬を使いな」




女は腰の物入れから木製の小さな壺を取り出し、投げてよこした。




「……まだ追放されて間もないようだねえ」




女はそう言って、かすかに口元を緩めた。




名前も名乗らないまま、女は連れていた馬に跨る。




「それじゃあ、せいぜい生き残るんだね。


こんな幸運は何回も続かないよ」




女は馬を勢いよく走らせ、颯爽と視界から消えていった。




俺はまだ、


この出会いの意味を知らなかった。


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