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欲望の魔の手

俺たちはスケロリアを倒し、ルーンブレードを手に入れた。


「ゼロ、大丈夫?毒は平気?」


ニアは、俺の元に心配そうに走り寄ると、腰から解毒薬を取り出した。


「あぁ、大丈夫だ。ありがとう、ニア。皮袋、あったんだな。落としたんだろ?あの時本当に焦ったよ」


「え、えぇ、そうなの。ごめんなさい、今回も迷惑をかけて」


「気にするな、それよりこれが、ニアの新しい武器、ルーンブレードだ。伝説武器の片手剣の中でも、攻撃力は指折りさ」


俺はニアに手に取るよう促す。


「でも、私、こんな凄い武器、使いこなせるかどうか‥‥‥」


「大丈夫さ。ニアは十分強い。ジーナ姐さんが保証するよ」


「よかったですね、ニアさん。ルーンブレードは特にアンデッドや死霊系に無類の強さを発揮する神聖系最強の片手剣の一つです。」


ジーナとちょうど俺たちのところに辿り着いたミユの祝福の言葉に、にっこりするニア。


恐る恐る祭壇からルーンブレードを取り、豪華な装飾が施された鞘から刀身を抜く。


少し反りのある薄い片刃の片手剣、先の方は両刃になっている。


刃の中程から柄にかけて、神々のレリーフが彫られていて、柄の先には赤く輝く大きな宝石が埋め込まれている。


「‥‥‥凄い‥‥‥」


ニアは伝説武器の荘厳さに息を呑んでいる。


「みなさん、奥の宝箱から物資とアイテムを集めてください。私はスケロリアの体液を集めてきます」


ミユが提案する。


「ゔぇ、なんであんな気持ち悪いバケモノの体液なんか必要なんだい?」


ジーナが驚いた声を上げる。


「スケロリアの体液は、魔法素材や錬金素材として貴重なんです。私の魔法生成に必要ですし、売ればものすごく高値で売れます」


俺たち三人はミユにスケロリアの体液採取を任せて、祭壇のさらに奥、宝物庫に向かう。


宝物庫には宝箱がひしめいていた。


各々宝石や、金貨、錬金素材、レベル測定器に使用する貴重なレアメタルなどを大きな皮袋に入れていく。


俺たち三人が宝物庫から戻ると、ミユもスケロリアから体液を採取し終わってこちらに戻ってくる。


「よし、外に出よう」


ゲームでは、この先に転移装置があり、そこに入ると、最初の遺跡の部屋に転移できるはずだ。


転移装置の部屋には予想通り床に丸い大きな転移装置があり、銀色の水面が輝いていた。


俺たちは転移装置に入る。


目の前が一瞬で暗転したようになり、再び明るくなるとそこは古代遺跡の水の仕掛けがあるあの部屋だった。


四人でそのままサークルピラーに向かい、今度は悪魔の丘に転移する。


青い光が俺たちを包むと高速で光が流れ、景色が止まると、悪魔の丘のサークルピラーの前に立っていた。


だがいつもと様子が違う気がする。


何かあるな。


俺のPvPで培った危機察知センサーが危険だと告げている。


案の定、思いもかけない奴らと遭遇する。


「いたぞ!メガネ女だ!!」


「仲間がいるぞ!全部で四人だ!」


「隊長に知らせろ!黄色い首領にも報告だ!」


四方八方から何かの紋章が中央に描かれた黄色い旗を掲げ、武装した集団が、どんどん集まり、こちらに迫って来る。


明らかにミユを狙っている!


しまった、サークルピラーは転移する時、激しく発光する。


転移してきたことが光でバレたんだ。


俺は集まって来る武装集団を品定めする。


鎧は達人の鎧と騎士団の鎧、二線級だな。


装備は、剣、斧、ハンマー、短剣、種類はスターメタル、伝説武器もいくつか混じっている。


鎧と装備からして、レベルは、50から60ってところか。


戦闘力としてはそこそこだが、二十人‥‥‥。


「こいつらみんな、女の敵みたいだねぇ」


ジーナは素早く二本の短剣を抜き、戦闘体制に入っている。


「ミユ、こいつらがもしかして、ミユを探している奴らか?」


ミユは突然の出来事に呆然としていたが、黄色い旗を見て頭を押さえて叫びながらしゃがみ込む。


「いやーーー」


「男は殺せ。女は捕えろ。黄色い首領への手土産にする。メガネ女は絶対に逃がすな!俺たち第三偵察隊の手柄を立てる時だ!かかれ!」


大斧を持った一際大きい髭面の男が叫ぶと、一斉に襲いかかってくる。


一瞬、こいつらを殺せば殺人になると脳裏によぎる。


しかし、こいつらを殺さなければ、ミユだけでなく、ニアやジーナも連れ去られて大変なことになる。


既にヒヨマの村で山賊どもを殺している俺だ。


俺は意を決して、片手を鞘に添え、もう片方の手で刀の柄を握る。


足を大きく開き、居合い抜きの姿勢をとる。


片手斧を振りかざして迫ってきた一人の男が俺に斧を振り下ろそうとした刹那、一気に刀を抜き斜めに斬り上げる。


片手斧の男は、俺の背後で二つの肉塊となり地面に崩れ落ちた。


続けて襲いかかってくる三人の片手剣使いの一人を袈裟懸けにし、一人の首を刎ね、さらに一人の男の胴を横に踏み込みながら斬り抜ける。


周りの様子を確認すると、ジーナは、呆然と立ち尽くすミユの周りで、ミユを守りながら持ち前の戦闘技能で無双している。


一人の喉笛を切り裂くと、バック転で二人の攻撃を避け、そのまま二本の短剣で薙ぎ払い、二人の敵を倒す。


ニアもルーンブレードの初陣とばかりに、あっという間に一人を倒し、三人と互角以上に戦っている。


よし、いい感じだ。


俺は髭の大男に向かって刀を構える。


大男は大斧を力任せに俺に振り下ろす。


鋭い斬撃が迫るが、俺はバックステップで避けると、そのまま勢いよく踏み込み、大男の首に突きをお見舞いする。


首に刺さった刀を横に引き斬ると、勢いよく血が吹き出す。


大男は首筋を押さえて倒れていく。


「ふふふ、首領は全てお見通しだ」


死に際に不気味なセリフを言い放つ。


そのまま激しい戦いが続く。


しばらくして辺りを見回すと、立っているのは俺たち四人だけ。


どうやら全員を倒したようだ。


だが、また、人を殺してしまった。


手や顔についた返り血を見て、また、漂う血の匂いを嗅いで俺はあらためて人の命を奪ってしまったことを実感する。


慣れない。いや、慣れたくない。


ふと血のついた手を見ると、小刻みに震えてるのが見えた。


俺は、家族の元に胸を張って帰れるのか。


突然、大男の腰のあたりから、眩い黄色い光が迸ると、あたり一面が一瞬光で覆われて何も見えなくなる。


しまった、チクリ玉か!


チクリ玉、正式なアイテム名は『ことづての宝玉』、この通信アイテムを使えば、予め登録している場所に、使用した周囲の様子を画像として送信できる。


「みんな、悪魔の丘に俺たちがいることがバレた。すぐに増援が来る。馬を回収して、悪魔の丘から撤退だ」


俺はそう叫ぶと、呆然とするミユの手を取り、俺たちの家に向かおうとする。


「いやーーー」


ミユが突然叫ぶ。


「どうした?ミユ?大丈夫か?」


「嫌です、あいつの元に帰るのは、絶対に嫌です。あいつは女の子のことを、おもちゃとしか思ってないんです。下品で最低の男です。あんな奴らに捕まるくらいなら、死んだ方がマシです!」


ミユは泣き叫びながら訴える。


声は裏返り、震えている。


「落ち着け、ミユ。とにかく家に帰ろう。」


俺が再びミユの手を取ろうとすると、いきなりニアがミユの手を掴む。


「私がミユを連れて行きます。ゼロはジーナと先に行って準備して」


確かにニアの言うとおりだ、一刻を争う。


俺はジーナと先行して家に向かうことにした。


家の中に入ると、慌ただしく荷造りをする。


ニアがミユを連れて戻って来る。


三人で荷造りをする間中、ミユは呆然と立ち尽くしていた。


「ミユ、俺たちが絶対に守る。約束だ。絶対にミユを守るから、安心してくれ。そのためにここも離れる。ミユも荷物をまとめてくれ」


「ゼロさん、私、本当に皆さんとご一緒していいのか‥‥‥。これからも、こういうことが、‥‥‥起こるかもしれません」


ミユは呼吸が浅く、目に涙を溜めて、まだ震えている。


「構わないさ。女の敵はこのジーナ様が残らずやっつけてやるよ。ミユ、これからもずっと一緒だよ。とにかく急いで準備しな」


ジーナが笑顔で急かす。


やっと踏ん切りがついたのか、ミユは慌てて、自分の部屋に向かっていく。


俺たちが馬に必要なものを満載し、出発準備ができたのは、それからしばらく時間が必要だった。


運よく未だに追っ手はここには現れていない。


四人はそれぞれ馬に跨り、慌ただしく走り出す。


サークルピラーを利用したいが、おそらくさっきみたいに見張られている可能性が高い。


「ゼロ、どこへ行くんだい?」


ジーナが馬上から叫ぶ。


「アリカラの街に陸路で向かおう。あそこに向かう陸路は特にダンジョンもレシピもない、ただの草原と森林だ。奴らと遭遇する可能性も低いだろう。それに、アリカラはサークルピラーから最も離れた街だ。さっきみたいな、いきなり転移の不意打ちは防げる」


俺たちはアリカラに向けて馬を進める。


しかし、この先、またあの恐怖に出会うとは、この時の俺たちには予想ができなかった。






















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