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キロ城塞ダンジョン

俺たちはそれぞれ自分の馬に乗り、キロ城塞へ向かう。




俺は自分の馬をシルビアと名付けた。




若かりし頃に乗っていた愛車の車種だ。




ゲームで、いつも馬に名付ける名前でもある。




馬に乗った経験はないはずなのに、普通に操れるのは助かる。




ジーナは貴族なので騎乗は嗜みのひとつらしく、当然のように馬を走らせる。




俺たちはあっという間に城塞に到着し、馬を降りて中へ足を踏み入れる。




お決まりのように、スケルトンとワイトたちが出迎えてくれた。




「さぁて、とっておきの武器で、レベル71のあたしの実力を試そうかね」




ジーナが楽しそうに、真っ赤な二本の短剣を抜き、走り出す。




伝説武器《炎神の吐息》――通称フレイムダガー。炎の短剣か。




あの短剣は、相手を切ると、切り傷だけでなく火傷も負わせ、燃焼効果も与える。かなり厄介なシロモノだ。




俺はジーナのガチ装備を冷静に分析しつつ、それに続いた。




ジーナが正面からスケルトンを切り裂き、ニアがワイトを薙ぎ払う。




ジーナに切られたスケルトンは、倒れたあとも焚き火のように燃え続けている。




ミユも、相手が人間ではないから、本来の実力を発揮しているようだ。




大斧でスケルトンを豪快に唐竹割りにし、ワイトを二体まとめて叩き割る。




「みんな、凄いな」




思わず笑顔で呟く。




あのグレーターワイトも、今では敵ではなかった。




ジーナの無言の連撃が決まり、瘴気が霧散する。




「瞬殺か……」




俺は、レベルアップしたジーナの強さに、あらためて驚いた。




ジーナはレベル70代だが、ゲームで見かけたカンストプレイヤーと遜色はない。




経験と度胸か。




三人だけで地上の敵をほぼ掃討するのに、時間はかからなかった。




「ここから先は、少し厳しくなりますよ」




ミユが大斧を担ぎ、笑顔で言う。




その視線の先には、礼拝堂らしき廃墟があった。




女神像の前に立ち、俺は両手を胸の部分に当てて押す。




お決まりのギミックだ。誰が考えたんだ、これ。




壁の円形部分が、緑の水を湛えたように輝く。




ダンジョンへの転移装置だ。




ゲームと同じ仕様だろうか――




俺は一瞬、不安がよぎるが、意を決して中へ足を踏み入れる。




三人も俺に続いた。




転移先に広がった見慣れたダンジョン内部を見て、俺はほっと安堵する。




同時に、スケルトンとワイトが、ゲームと同じように湧き出した。




俺以外の三人は、すぐに戦闘へ入る。




「しかし昔の人も考えたもんだねぇ。女神様の胸なんて、普通は絶対に触らないからね。すけべなゼロ以外はさ、だろ?」




ワイトを切り裂きながら、ジーナがニヤニヤと俺をからかう。




冗談が言えるほど、戦闘には余裕があった。




敵は瞬く間に片付く。




さらに進むと――




蛍光色に輝く、薄気味悪いピンクの巨大なスケルトンキングが、ハンマーを構えて現れた。




「任せな」




ジーナが前に出る。




正面から攻撃を仕掛けつつ、相手の反撃をかわす。




背後からミユ、さらにニアが襲いかかる。




三人の連携には、もう言葉は要らなかった。




最後は、ジーナの一撃で決まる。




巨大なスケルトンは、蛍光ピンクの光を失い、崩れ落ち、その場所から新たな光が生まれる。




よし、アイテムドロップだ。




ドロップ品は、伝説武器のハンマーだった。




「私がしまっておきますね」




ミユが馬に載せながら、満面の笑みを浮かべる。




「みんなで協力、これぞ冒険ですね」




完全に、PvEプレイヤーの笑顔だった。




さらに進み、扉を抜ける。




そこには、だだっ広い部屋が広がっていた。




青、赤、黄、紫、緑、ピンク。




淡く輝く六つの扉が見える。




それぞれ、怪しげな紋章が刻まれている。




ここは、――審判の間。




ゲーム通りだ。




各色の扉を潜り、最深部のフロアボス六体を倒すと、ここにダンジョンボスが降臨する。




「まずは青ですかね? 敵が弱いですし」




ミユは、ピクニックにでも行くような口調で言った。




このダンジョンは、レベル上げ・武器・装備・素材集めで、ゲーム有数の名所だ。




ミユにとって、通い慣れた場所なのだろう。




もちろん、俺もだが。




俺たちは、青の扉、氷のフロアの扉を潜った。




行く手には雪狼、イエティ、マンモス、アイスゴーレム。様々な寒冷地モンスターが出てくる。




俺以外の三人が連携し、順調に倒していく。




俺は一度も敵を倒さず、三人に経験値を譲る。




ニアの横で動きを指示し、危機には刀で攻撃を遮る。




あっという間に最深部に到達した。




フロアボスは、アイスドラゴンだ。




今の戦闘特化スキルと黒刃の刀があれば、俺一人でも楽に倒せる相手だ。




それくらい、このダンジョンはやり込んでいる。




「これがドラゴンかい。初めてお目にかかったよ。倒せるのかねぇ。武者震いがするよ」




ジーナは、初めて見るドラゴン種の巨大さと悍ましさに、圧倒されたのか、珍しく弱音ともとれる口を開いた。




「二手に別れましょう。正面から牽制しつつ、ドラゴンの意識を集中させ、主攻撃は背後から行いましょう」




ミユが、最適解の攻撃方法を提案する。




もちろん、このゲームを知っていれば、それが一番効率がいい。




俺とジーナが正面から牽制し、背後からミユとニアが近接攻撃を仕掛ける。




四人の連携攻撃に、アイスドラゴンは、みるみる消耗していく。




ニアがアイスドラゴンの背中側に登り、剣を突き立てようとした時、アイスドラゴンの背中の鰭が、不意にニアに向かって動いた。




危ない!




鰭から発射されるあの鱗の先は弾丸のようになっていて、直撃すればかなりのダメージを負う。




俺はジャンプしてニアを押し倒す。




その刹那、氷の鱗が発射される。




氷の鱗が、ものすごいスピードで俺の顔を掠り、血が滴る。




危なかった。




「怪我はないか、ニア?」




「ありがとう、ゼロ。大丈夫みたい」




幸い、二人とも直撃は免れたらしい。




ニアが無事で本当に良かったと、安堵する。




そうこうしているうちに、ジーナが二本の短剣を喉元に突き立て、勢いよく切り裂いた。




ドラゴンが崩れ落ちる。




ジーナの腰の測定器は、レベル80を示していた。




「やったよ。やった。これで私も伝説の昇魂者だ」




小躍りしながら、代わる代わる皆に飛びつくジーナ。




俺たちは素材を回収し、宝箱の中身を取り出して、馬に積み込む。




「次は黄色にしませんか?」




ミユの表情が、以前より明るくなっているのが分かって、俺は嬉しくなった。




俺たちは来た道を引き返し、再び審判の間へ向かう。







ちょうどその頃。




ダンジョン入口には、赤い鎧の男が、武装したサイを連れて立っていた。




「モンスターが死んでいる……誰かいるな」




男が、薄気味悪く笑う。




「ここは、レベル上げのメッカだからな」




男は、ゆっくりと審判の間へ進み出す。




足元に転がるスケルトンやワイトの残骸を、わざと踏み散らし、蹴り飛ばしながら歩いていく。




「もしかしたら、あのメガネか?」




「プレイヤーなら、お楽しみの対人戦だ」




この時、俺たちは――


最大の危機が迫っていることを、まだ知らなかった。


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