いつもの感覚
消えた――。
背後から、鋭い痛みが走る。
「――っ!?」
何が起きたのか理解する前に、衝撃が体を突き抜けた。
痛みだけが遅れてやってきて、脇腹をえぐる。
白い鎧のプレイヤー。
さっきまで、確かに正面で間合いを取っていたはずだ。
(……ワープ?)
いや、そんなスキルはない。
次の瞬間、脳裏に嫌な言葉が浮かぶ。
――ラグスイッチ。チート使いか。
攻撃が連続で叩き込まれる。
ヒットポイントが、目に見えて削れていく。
振り向くと、白い鎧の男が黒光りする片手剣を構え、
まるでこちらの反応を読んでいるかのように斬りかかってきた。
反撃する。
だが、当たらない。
「……くそっ、チート野郎め」
確実に捉えたはずの一撃が、空を切る。
次の瞬間、再び脇腹に衝撃を受ける。
焼けるような痛みが全身に走り、思わず大きな悲鳴が漏れた。
(……やばい)
このゲームで、こんな感覚はありえない。
なのに、痛みは現実そのものだった。
(誰だこのプレイヤーは? ゴミ野郎め……)
視界が、白く塗り潰されていく。
(……キルされたな)
*
「……うぅん」
娘の寝返りの声で意識が戻る。
柔らかい娘の肌の感触が、頬に触れた。
目を開けると、ダブルベッドの上。
腕の中には小さく丸まった娘。
その隣で、妻が静かな寝息を立てている。
(……夢、か)
心臓の鼓動が、やけに早い。
あまりにもリアルな夢だった。
特に、あの痛み。
(最近、ゲームやりすぎてるな……)
俺は娘の頬にそっとキスをして、再び目を閉じた。
家族のいる、この日常。
それを守るために、明日も仕事だ。
そう思いながら、深い眠りに落ちる。
――そして。
次に目を開いた瞬間、世界は再び変わっていた。




