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喫茶店に悪魔と秘密基地を  作者: 夜ノ烏
序章 猫が頑張る話

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神様と猫

不定期更新です。

 むかしむかし、神様が動物たちに言いました。


「元日の朝、私のところへ早く来た者から十二番目までを、一年交代でその年の大将にする」


 動物たちは、我こそが一番乗りだと。

 それぞれ張り切って準備を始めました。


 猫には、それがわからなかった。

 動物たちが、なぜあんなに張り切っているのか。


 猫には興味がなかったから。


 一番になろうと頑張ることも。

 仲間に入れてもらうために集まることも。


 全部どうでもいいことだった。


 だから、ネズミが何を言っても。

 そもそも関係なかったのだ。


 次の日、神様に猫は呼ばれた。


「猫、お前はなぜ来なかったのか」


「にゃ~。ネズミに嘘をつかれまして」


 これは本当のことだ。

 ただ、最初から嘘だと知っていただけで。


「残念だが。お前はもう遅れてしまったから、十二支には入れないよ」


 猫には神様の言葉もわからない。

 なにが残念だというのだろう。


 そんなもの、初めから興味はなかったのに。


 全部どうでもいいことだ。

 猫は独りが好きだった。


 日々をのんびりただ過ごす。


 お腹が空いたらご飯を食べて。

 行きたいところへ歩いて行って。

 眠くなったら寝ればいい。


 なにも気にせず気にされない。

 自由気ままにただ生きること。


 そうして最後に、ただ死んでいく。


 猫はそれでよかったのだ。

 それなのに。


 ――猫に最期はこなかった。


 一年が経ち、十年が過ぎ、百年を超え。

 いつまでたっても終わりはこない。


 数えきれないほどの四季が巡り。

 猫の尻尾は増えていく。


 それは、あまりにも退屈な日々だった。

 食べることも、散歩することも、寝ることも。


 みんなとっくに飽きていた。

 だから猫は、面白いことを探して、周りを見るようになった。


 人間たちの営みを。

 動物たちの一生を。


 ずっと眺め続けていた。

 そして、尻尾が八つに増えたとき。


 ふと、猫は思った。


『どうして、あちしは独りなんだろう』


 みんな誰かがそばにいた。

 つがいだったり、仲間だったり。


 普段は独りの神様でさえ、年に一度は集まった。


 喧嘩をして。笑いあう姿。

 抱き合うつがい。子が産まれたところ。


 みんな、独りではなかった。


 ――一生懸命生きていた。


 人間も動物も。

 あちしだけが独りで。独りぼっちで。


 視界が歪んでいた。

 眼からなにかがあふれていた。


 ――あぁ。これが涙なんだ。


 百年生きて、初めて泣いた。

 こんなことさえ、猫は知らなかったのだ。


「八つの尻尾とは珍しい。君はずいぶん長生きしたんだね」


 突然、声を掛けられる。

 自分に向けられた声なんて、とうの昔のことだった。


 ――これが、あちしと同じ。

 独りぼっちの、神様との出会いだった。

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