第零層
「ッ───」
ある一室で叫び声と共に辺りにビチャッという水が撒かれるかのような音が鳴り響く。
その部屋にいるのは椅子に拘束されている男とその男の目の前で立っている男の2人だけだった。
地面には凶器のようなものが乱雑に放置されている。
「なぁ、あんちゃん。そろそろ話した方がええんとちゃうか?」
男がそう問いかけるが拘束されている男は下を向き声を出すどころか、身動きすら取ろうとしていない。
ゴゴゴゴ───
「なんや、地震かなにかか?」
音はすぐに止み、それ以上何も起こらなかったので男は特に気にした様子もなく拘束されている男に目をやる。
「はよ話さんかいっ」
そういい、男は手に持っていた木刀と思われるもので拘束されている男の頭部を殴りつけた。
殴られた衝撃により椅子と共に倒れて動かなくなる。
───ア───ま──
その直後、辺り一面が青白く発光した。
「なんだよ、眩しいな」
まぁ、いいか。そういい男は、倒れた男と椅子を元の位置に移動させるために近付いていく。
男が、倒れ込んだ男の肩を掴んだ瞬間先程まで動かなかったにもかかわらず縄を引きちぎり男の首に噛み付いた。
「───ッッイッッッテ、てめえ何しやがる。放しやがれっ」
首に噛み付かれた男は必死に振りほどこうとするが痛みにより力が入らない。
ブチッグチャという嫌な音と共に男の首が噛みちぎられた。
男が噛みちぎった勢いで後ろに倒れ込む。
「───ッッあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
熱い、痛いと口にしながらのたうち回る男。
その男に対し追い打ちをかけるかのように、首を噛みちぎった際に倒れ込んだ場所から少しずつ男に近寄っていく。
男から1mという距離に達した瞬間男に近付いていた男が木刀を踏み倒れ込む。
倒れ込んだ先にあった釘が眉間に刺さり、男の元に駆け寄ろうとしていた男は黒い霧となり消え去った。
消え去ったあとコツンと地面に紫色の石が落ちる。
─世界のレベルアップが完了しました─
頭に直接響き渡る透き通るような綺麗な声を世界中の人間が聴いた。