表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第2話 強くならなければ

ブックマークして頂きありがとうございます!読んで頂いた皆様もありがとうございます!稚拙な文書ですが少しでも楽しんでいって貰えたら幸いです。

日が昇る頃、ルーシャとロイは防衛都市ラベッタに向かっていた。馬には逃げられてしまったため、並んで道沿いに歩いていた。


ロイは隣を歩くルーシャをなんとなく見る。改めて見ると綺麗な娘だ。手入れの行き届いた銀髪は息を飲むほど美しく、顔もまるで人形のように整っている。ロイは今まで見た中で1番美しい存在だと確信していた。


少し不躾に見すぎてしまっただろうか、ルーシャが視線に気づき首を傾げる。


「ロイさん、どうかしましたか?」


「ああ、いや、すまない。なんでもないんだ」


ルーシャは小さく、そうですか……?と返事をすると口元に手を当て思考を巡らせた。このロイという人間の視線はおそらく監視をしているのでしょう。魔族領から1番近い村で記憶も身元も分からないのですから、警戒して当然ですか。やはり少し設定に無理が……しかし私に剣を向けないということは確信的な何かを掴んでいるわけではないと言ったところでしょうね。


ロイはルーシャに見惚れているだけであったがルーシャは自分の推測が外れているとは気づけなかった。


数刻ほど歩いていくと防衛都市ラベッタに到着した。ロイの案内で騎士団詰所へと向かうと1人の男が出迎えた。


「団長!ご無事で何よりです!」


「あぁ、だが他の騎士たちは死んではいないと思うが連れ去られてしまった。俺が弱かったせいで……」


ロイの返事を聞いた男は悲壮な表情をしたが、ロイの両肩を掴み力強く言った。


「団長のせいなんて誰も思っていないはずです!それより早く身体を休めてくださいボロボロじゃないですか。って、ん?後ろの子は?」


ルーシャの存在に気がついた男はしゃがんでルーシャの目線に合わせて声を掛けた。


「こんにちは、俺は副団長のライヤって言います!団長!すっごい綺麗な子ですねー。この子は例の村で保護したんですか?」


ロイはその場で答えずにライヤに手招きするとルーシャから少し距離を取り小声で話し始めた。


「村のはずれでオークに襲われているところを保護した。幸い怪我は無かったが相当怖い思いをしたはずだ。」


「そんな……14歳かそのくらいの女の子が……怖かったでしょうね」


「本人は襲われた時の記憶が曖昧だと言って平静を装っているが、おそらく俺に少しでも罪悪感を感じさせないための嘘だろう」


ライヤは罪悪感という言葉に引っ掛かりを覚えロイに聞くとロイから事の顛末を教えられた。


「オークは何故団長とあの娘をおいて行ったのでしょう」


「それについては分からない。まあ……とにかく俺は敗北し、あの娘をこの手で守ることが出来なかったんだ、それなのに俺の為に嘘をついてくれるとは、あの歳で本当に優しい娘だよ」




ルーシャは2人が話している間に街を囲う城壁を見上げていた。


「前に来た時よりも随分頑丈そうな壁ですね……壊すのは出来そうですが時間がかかりそう……その間無防備になってしまうので壊すのは得策とは言えませんね」


ルーシャがこの城壁をどう攻め落とそうか考えていると話が終わったのかロイとライヤがルーシャの元へ歩いてきた。


「ルーシャ、すまないが俺は少し外す。必要な物などあったらライヤに言ってくれ」


「はい、色々とありがとうございました」


ロイが建物の奥へと消えていくと、ルーシャは急にライヤに抱きしめられた。


「!?」


まさかこのまま絞め殺す気ですか!?やはり正体がバレていましたか!?


ルーシャは抜け出そうとするが自分の力の弱さに驚いた。魔力は魂準拠のため健在だが、力はオートマタの身体の物だったのだ。


しかし、そんなわけはなくライヤは優しく声を掛けた。


「怖かったよね。ここに居れば安全だからね」


その言葉でライヤが本気で自分のことを心配しての行動だと分かりルーシャは抵抗していた腕の力を抜いた。


こんなことされると騙していることが申し訳なくなりますね。とルーシャはバツが悪くなった。


「あの……私は大丈夫ですから……」


ルーシャがおずおずと告げるとライヤは慌てて離れた。


「ごっ、ごめんね?突然知らない人に抱きつかれて嫌だったよね?ただ大変な思いをしたと聞いて、居ても立ってもいられなくて。そうだホットミルクを入れてくるよ!その辺の椅子に座ってて」


ライヤは早口で捲し立てると厨房の方へと向かった。また1人になったルーシャはライヤの背中が見えなくなるまで見ていた。


人間はその日初めてあった相手の為に命を張って戦い、話を聞いただけの相手を本気で心配するのですね。剣を交えるだけでは気づきませんでした。何か作戦に役立ちますかね……いや、それを逆手にとった作戦はしたくないですね。


ルーシャの結論は彼の中に残った騎士道なのか、はたまた人間と触れたことによって生まれた別の「何か」なのかルーシャ自身分からなかった。


「お待たせ~。はいホットミルク。熱いから気をつけてね」


「ありがとうございます」


ルーシャは食事をしなくても生きていけるが断って空気を悪くしてもいけないと思い礼を言って受け取った。デュラハンの時は味覚など無かったし、なんなら頭も無かったため、初めて飲んだホットミルクは暖かくて美味しかった。夢中になって飲んでいるとライヤが呆気をとられてこちらを見ていることに気がついた。


「どうかしましたか……?」


ルーシャが困惑しながら聞くと、ライヤがワナワナと震えながらルーシャに詰め寄った。


「熱いって言ったよね!?というか熱くないの!?舌見して!べーってしなさい!」


ルーシャは突然の剣幕に困惑しながら舌を見せた。


「ほらあ!火傷してるよ、ちょっと待ってて氷菓子があったはず」


ライヤが走って厨房に消えていったと思ったら直ぐに戻ってきてルーシャの舌の上に氷菓子を置いた。


「これで少しでも痛みが引くといいんだけど……」


ルーシャとしては痛みなど感じていないためライヤの慌てようがなんだか面白かった。




ロイ団長の話を聞いた感じだとしっかりした子なのかと思っていたけどちょっと抜けてるなとライヤは微笑ましい気持ちになる。


とても綺麗で、人の為に優しい嘘をつけて、危なっかしくて。思わず守りたいって思わせるような娘だ。皆で守るんじゃなくて、俺が守りたい。ロイ団長には悪いけど俺が独占したい。


でも俺一人の力じゃ攻めてくる魔王軍からこの子を守れるか?到底無理だ。さっきロイ団長も悔やんでいた。もっと強くなりたいと。副団長に就任してから全体の訓練とは別に自主訓練をしたのはいつだったろうか?


強くならなければ


この子を独占したいから


「君が安心して暮らせるように頑張って強くなるから」


「ありがとうございます……頑張ってください」


ライヤに笑顔でそう言われたルーシャは貴方に強くなられては困るのですが……と心の中では思いつつも口では弱々しくエールを送った。少しでも戦力を減らそうとルーシャはライヤの手をとった。


「でも、無理はしないでください。私を安心させるためとか考えなくてもいいですから」


ルーシャはライヤの訓練量を少しでも減らすために言ったが、ライヤはより一層この少女を守りたいと決意を固くしてしまったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ