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それからたっぷり2時間も歩いて、何個目かの目印までたどり着いた時、私はちょっと苛々しながら親友に連絡した。
次に出た親友の声は、優しかった。
『オーケー、お疲れさま。あんたが今いる建物の裏に回ってみて。そしたら、どこに来たのか分かると思う。絵がある場所は、そこの人が必ず教えてくれるから。帰りは迎えにくるから』
それから、親友は言った。
『えらいよ、悠生。本当に頑張った。だから、あんたは大丈夫だよ』
私は不思議に思いながら、建物をぐるりと一周した。そして、分かってしまった。
お寺があった。それから、その奥に霊園があるのも見えてしまった。
私がその場で立ち尽くしていると、お寺から僧侶が出て来た。
「福山悠生さんですか?」
私はうなずく。僧侶は、親友から話を聞いていたらしい。事情を説明するまでもなく、「ご案内します」と言った。
お墓が沢山ある中を歩いていると、妙な気分になる。先生のことを殊更に思い出そうとしたけれど、初めて上手くいかなかった。
そして、そのお墓の前に来た。私は石に刻まれた名前を見た。苦い気持ちでいっぱいになる。その名前だけで蘇る顔があるからだ。
お墓の前に、新しい花と、白い紙に包まれた絵が置かれていた。私は絵を持ち上げる前に、手を合わせ、目を閉じた。涙は出なかった。悼むべき時を誤ったのだとやっと悟った。せめて、お線香でも、持ってきていれば。
僧侶は私に、優しく言った。
「また、何度でもいらしてください。きっと喜ばれることでしょう」
お寺の前で、親友が待っていた。