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  作者: 六福亭(テレンス・ブレーク)
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 私は今、アパートの自室から一歩も出られないでいる。

 異常気象でも、鍵をなくしたでもない。大学の講義ももう始まっている。だけど、どうしても家から出られない。それどころか、携帯を触って外の世界と繋がる気にもなれなかった。


 私はその理由を勿論知っている。


 先週、ある一通のメッセージが、高校時代の親友から届いた。そのメッセージは、私のいる世界をめちゃくちゃに壊してしまった。


 高校の一番の恩師が、突然死した。


 彼は美術教師だった。私は美術部に在籍していて、彼から沢山のことを教えてもらった。絵を上達するこつ。美術の歴史。面白い作品。おすすめの美術館。人生について。__本当に、何でも。そして私は、その先生に密かに恋をしていた。


 死因は不慮の病らしい。葬儀には行かなかった。先生の真っ白な顔を、乾いた骨になった先生を見ることがどうしてもできなかった。先生の死を認めてしまったら、きっと私も死んでしまう気がした。


 私の家の中は、時間が止まっている。何もかも、あの忌まわしいメッセージが届く前と同じだ。きちんと片付いて、本や画材の位置は少しも変わっていない。


 だけど、そこから一歩でも外に出たら、そこはもう、先生がいない世界だ。だから、私は絶対に家から出ない。


 先生との思い出は山ほどある。それを一つ一つ思い起こすだけでも、一日は過ぎていく。それを毎日繰り返している。


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