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14 一案

 セレスティーヌは稚拙だと思いつつも、自分の案を述べることにする。


 改善点ばかりの素案のため口に出すのが恥ずかしく思うが、足りないところはアマンダやジェイ、そして実際に動く村の人々に意見を仰げばいいと開き直る。


 腕の中にいたチンチラが、励ますように小さく鳴き声をあげた。


「さっき村の方に伺ったときに、何十年も炭焼きをされていた方がいらしたじゃないですか」


 詳しく聞けば農業の傍ら、規模はそれほど大きくないが長いこと従事していたそうだ。年を取り双方続けるのはしんどいため、数年前に炭焼き作業を辞めたのだという。


「山間部で木が大量にありますし、炭を作ってみてはと思うのですが……」


 ラヴァーレ・グロッソでバーベキューをしたとき、ジェイが食材を炭火で焼いていたのだ。

 開放的な気分なのか、採れたて新鮮な高級食材のなせる業か。なぜだか普通に食べるよりもずっと美味しく感じたのである。


「ああ、それは気のせいじゃないですね? 炭は水分を微量しか含んでいないので、表面がカリッとした上、中がふんわりと仕上がるんだそうです?」


 どこかの料理人の受け売りらしい。加えて香ばしい香りがつくこともあり、満更気分だけでもないのだという。


「土地に根差した方々がその土地にあるものを使って製品を作る……材料費も少ない上に、特産品になる可能性もあると思うのですが」

 炭は鍛冶仕事にも使用するため、それなりに需要があるともいえるだろう。


「いいじゃない、いいじゃない!」

 アマンダが両手を合わせて大きく頷いた。


 ただ、幾つか懸念もある。

 販路と、力仕事をどうするかだ。


「それもやりようは幾らでもあるわ。宿屋や屋敷に直接納品でもいいし、店に卸してもいい」

 自信満々にいうが、伝手などがないであろう山間部の村の人々の製品をどうやって売るというのだろうか。


「何より販路は適任者が身内にいるから、そっちにお願いしましょ。人の生活が懸かってるんだもの、使えるものは何でも使えってね」


 任せておけとばかりに、逞しい腕で厚い胸板を叩いた。


「そして力仕事に関しては、木を切り倒したりバラしたりってことよね?」

「はい」


 農作業すら辛い人々だ。木を切り倒した上処理するのは難儀なことであろう。一番の懸念事項である。


「ギルドへ定期的に様子見を兼ねて御用聞きに来るように依頼を出してもいいと思う。危険は少ないから、若い冒険者見習いにでも来てもらえば安く済むはずよ。マロニエアーブル公爵に言って何とかしてもらうのも一案ね。勿論木こりに依頼してもいいと思う」

「資金が……」

「必要経費よ。まあ、何事も初めは不慣れだし。ある程度軌道に乗るまではこっち持ちでも」


 色々繰り返す内に自分達の中にも方法が確立されていくだろうとのことだった。

 いわば、その練習代のようなものだと。


「あと懸念はある?」

「いいえ。後は木の処理の時に出る木くずを種類ごとに分けるくらいでしょうか」

「何かに使うの?」


 セレスティーヌは頷く。

「女性方にお手伝いしていただいて、無駄なくもう一製品」


 アマンダとジェイが首を傾げる。

「木くずで製品? ……厩舎の床敷きにでも使うんですか?」

「なるほど。それもありですが、他にも製品に出来そうなものがあるのです」

「……へえ。無駄がないのね。凄いじゃない」


 元々木自体はタダ同然であるが、木くずすら無駄にせず活用しようというのがセレスティーヌらしくて思わず吹き出しそうになった。


 セレスティーヌはといえば、褒められてきまり悪く困り顔をしながら、ジェイに聞く。


「布とリボンを何種類か、そこそこ大量に欲しいのですが」

「どんな感じの布がいいですか? 後で調達して来ますよ?」


 ジェイは好奇心旺盛な表情でセレスティーヌを見て、サムズアップをしたのだった。


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