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27 作戦会議

 カルロを含めた騎士たち四人は、こんがりと焼かれた鶏肉を口に運んだ。


「うっま!」

「脂と旨味が染み渡るぅ!」


 焼きたての肉を豪快に頬張る騎士達を暫し眺めて、ふと大丈夫か気になってアマンダを見る。


 元想い人への恋心を無理やり封じ込めて、さぞ複雑な表情をしているのでは……と想像したセレスティーヌだが、全くもって杞憂であった。

 腰に手を当て、飲むかのように食べる様子をジト目で見ている。


「ガッツいてばかりいないで、他の騎士達は?」

 呆れたようにため息をつくと、そう四人を順番に見てはそう言う。


「この件には我々王太子付き騎士団が当たっております。多数がヴィオレント川の河口近くの検査に。数段階に検査を重ね、川を使って逃亡できないように包囲する計画です」


 モグモグと口を動かしながら報告する。

 ……失礼というか、食べながらの報告で大丈夫なのだろうかと心配するセレスティーヌであるが。


 ジェイによれば、腹が減っているのにお預けというもの不憫だということと、体裁を取り繕うよりも早く状況確認をという超効率化ゆえに許されている行為だという。よって王太子付きの騎士団にはよくあることなのだそうだ。


 もちろん他の人間の目がある場所では、ちゃんとしているとのこと。

 感心は出来ないが、他でもしていないのなら……である。


「分隊を選抜し、我々四名と他六名の二隊に分かれています。六名は先程の河口担当よりやや上流で、検査に勘づいて急遽船を降り逃げる等、おかしな様子を見せる者を確認・捕縛します。我々はこのまま警護及び指揮下に入ります」

「陛下は人質に取られていると思われる子どもの安全を最優先に考えています。大人数だと討伐には良いですがひと目に着き易いため、このような形となりました」


 カルロが最後にそう説明する。


(……陛下……)


 了承したと頷くアマンダを見ながら、セレスティーヌは聞こえて来た不穏(?)な言葉を心の中で繰り返す。


 王太子付きな彼らが、王家の方々の意向を持って動くのはおかしいことではない。

 国王様なのか王妃様なのか『陛下』と呼ばれる存在が、平民の子どもの安全を第一に考えてくださるのは、非常にありがたいことであり、人柄が偲ばれるというもの。


 セレスティーヌが考えに沈んでいると、もうひとりの騎士が頬に肉を詰め込みながら口を開いた。


「まあ、こちらがどんなに目立たない体制を取ったとしても、そのような恰好をされていては否応なく目立ちますが……」


 ピンクのドレスがこれほど似合わない人間もいないであろう。

 ジト目でアマンダを見る騎士に、同意とばかりに三人の騎士とアンソニーが大きく頷いた。ジェイはいつもの如くニヤニヤとしている。


「……うっさいわね。どんな格好をしようが個人の自由でしょ!」


 いやそうな顔をしたアマンダに、ポツリとひとりの騎士が零した「品位……」という言葉が響く。


「言えた義理じゃないでしょ」


 拗ねたように口を尖らすが、拗ねているのではなくて、実は内心困っているのであるが。

 ……改めて言われると、気になるセレスティーヌの前で立つ瀬がないということなのだろう。


 そんなアマンダの気持ちを知ってか知らずか、トコトコと近付いて行ったキャロが、ポンと小さな手を座る足の辺りに置いて小さく鳴いた。


『……うきゅ』

 全員が小さき者と大きな者のやり取りを見つめている。


「キャロ……!」


 キラキラと瞳を輝かせたアマンダが素早くキャロを抱きしめると、高速で頬を擦りつけた。嫌そうな、迷惑そうな顔をしたキャロがジタバタしているのは言うまでもない。



 全員が持てる情報を出し合い、どのように動くか確認し合う。


「何処にどういう情報網を持っているか解らない相手だ……ヴィオレント川の検問に関しても直ぐに伝わると考えた方がいいだろう」


 アンソニーが念を押す。ゆっくり構えていては取り逃がす可能性があるということだ。

 偽金を作るということもありすぐさま移動することも考え難いが、早急に事を運ぼうとしているのは想像に難くない。


「移動はヴィオレント川を使って行われていたことは間違いないっすね? 川岸を根城にしている奴らが、見慣れない人間が夜の闇に紛れて下って行くのを見てます?」


 時間を置いて複数の見慣れない人間が舟を使い移動しているのを見たそうだ。基本は視界の良い時間帯に舟を使う為、特別な漁以外、闇に紛れて移動するのは後ろ暗い者たちが多いのだという。


 つい先日、老人と中年の男が一緒に舟で下って行くのを見た者がいるという。

 ジェイの言葉に、アマンダとセレスティーヌが顔を見合わせた。


「既に何人かは他の場所に移動している可能性もある……大人数であれば戦力としては大きいが、逃げるには目立ちやすい。今まで他国で逃げおおせたのも何重にも対策を講じているからだ。非常に慎重な連中だといえる」

「犯罪に慣れているということだから、万一に備えてどんな逃げを打っているか解らない……四方を固めて囲い込むわよ」


 アンソニーの言葉を受け、アマンダが重々しく告げた。

 地面に今回アジトとなっている工房を描くと、それぞれの配置を説明した。

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