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勇者の飼い猫になりました。  作者: 眠れる森の猫
第一章 飼い猫ミリア編
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第8話 飼い猫ミリアはミミを守る。

「ノー、ネコミミ、サワル、キンシ!!」

 

 ミミ、たいせつ、まもる!!

 あれから10分経った、数々の誘惑にも負けず必死に耐えた。ねこじゃらし、ねずみのおもちゃ、それでもミリアは負けなかった。自分をほめてあげたい。ミリアはそう思った。

 

「うん?」


「どうしたんだい。ミリア?」


 クライシスがボールのおもちゃでミリアを誘惑しようとしたとき、ミリアはある事に気づいた。クライシスの背後に特大のクローゼットが置いてあったのだ。よく見ると、ミリアのトレードマークの黒のゴスロリドレスがハンガーにかけられていた。


「あれ、ふく、ちがう?」


 ミリアは知らないうちに、黒猫さんのパジャマに着替えていたようだ。とても、不思議だった。首をヒネリながら、クエスチョンマークを浮かべるミリア。そんなミリアを見て、クライシスはニコリと微笑んだ。


「君が眠っていたとき、着せてあげたんだ。もちろん、そのパジャマは君のためのオーダーメイドさ。君に似合う服はたくさんあるからね。神官服にメイド服、これは、危ない水着じゃないか、な、なんてことだ。いけない。君にはフリルが付いた白い水着が似合うはずなんだ。どうやら間違って宅配されてきたようだ。でも、これはこれで、いいかもしれないね。だが、しかし」


 クローゼットの中には、女性向けの下着から洋服までかなりの数がそろっているようだ。これらの服をどのような顔をして彼は購入したのだろうか。彼は勇者であって変態だ。きっと平然とレジに向かったのだろう。さわやかな笑顔をしながら……。


「僕は、たまに夢を見るんだ。未来の夢をね。君の姿だけはおぼろげで見えなかった。だけど、そのネコミミだけはハッキリと見えていた。君と出会うことは運命だった。僕の夢が現実になったんだ。そう、君を飼うことだよ、ミリア。何か欲しいものはないかい。最近、通販と呼ばれる便利なものができたんだ。レオニード商会が運営しているお店らしくてね。君のためのグッズが、そこで販売されているらしいんだ。勇者の職業は便利なのものでね。国境というものがないんだ。でもそれも必要なくなったね。君を見つけてしまったからね。それとも君だけの勇者になってしまうのもありかもしれないね。そうそう、君の服のサイズはバッチリOKさ。僕の目にくるいはないからね」


 さわやかな笑顔で微笑むクライシス、勇者の鋭い観察眼は、どうやら危険な方向に使われてしまったようだ。


「うむ、そか」


 ミリアはとりあえず、うなづくことにした。


『いやいや、ダメじゃろうて』


「うーん? わたし、ふとん、かぶってる、どして?」


 どうやら、クライシスと話しこんだせいで、大切なことを忘れてしまったようだ。

 そうネコミミを守る使命を。

 やはり、知力が4だとここまでが限界らしい。


「ミリア、話は終わりだよ。そろそろ僕も本気を出させてもらおう。ファイアウォール!!」


 クライシスは火の精霊魔法を唱えた。


「これ、なに?」


 ミリアの周りに火の壁が突然現れた。

 それが、どんどん大きくなって増えてくる

 そして……ミリアを囲いだしたのだ。

 あまりの暑さに汗がだらだらと滝のように流れてしまう。

 あつい、あついのだ、このままでは、しぬぅ。 


「さぁ、ミリア、布団から出ておいで」


『ふむ、精霊魔法まで使いおったか。ここまで手段を選ばぬとは、今のおぬしは猫好きにはたまらない存在になってしまったようじゃのう。勇者をここまで狂わせるとは、ほんと、恐ろしい猫じゃ』


「ううっ、まけない」


 この布団をとってはいけない気がする。

 このままでは、だめっ。

 ミリアは、ない頭で考えた。


「たたかう、にげる、かんがえる?」


 かんがえることにした。


「わかった。よし、あつい、ふとん、とる」


 猫は欲望に忠実だった。

 ミリアは我がまま気ままなネコさんだから、仕方ないのだ。

 暑い、なぜ? 

 それは布団をかぶっているから、ならどうする。

 それなら出てしまえばいい。

 なんだ、簡単なのだ。

 クライシスというネコミミハンターがいるとも知らず、暑さに負けてミリアは布団から、もぞもぞと出てしまったのだ。今まで頑張ってきた努力が無駄になってしまった。


「きもちいい」


 頭をぼぉーとさせながらも暑さから解放されたことで幸せそうな顔をするミリアだったが、油断しているミリアにクライシスの魔の手がゆっくりと迫ってくる。


「きしゃぁ!!」


 ミリアは危険を感じたのか、クライシスに威嚇をはじめたのだ。

 なんだ、このやろぅ、くるんじゃねぇ!!

 両手を挙げてお怒りなのだ。

 だが、ひょろひょろのミリアでは、威嚇しても全く効果がなかった。

 その威嚇した姿を見て、興奮して喜んでいる男がいた。

 まさに逆効果だった。


「ああ、ミリア、怒った顔も素敵だよ。君と僕をはばむものは、もう何もない。さぁ、その素敵なミミを、今度はハムハムさせてもらうよ」


 クライシスは、またミリアに抱きつこうとする。

 ま、まずい。


「に、にげる!!」


 このままではヤラレル!!

 ミリアは部屋の扉に向かって、スタコラ逃げだしたのだ。


「だめだよ、ミリア、なによりも、速さがたりない」


 だが、勇者の速さは伊達じゃない。

 背後に回り込まれてしまった。

 ミリアの背後から、そっと優しくおおいかぶさるクライシス。


「は、はなして!! はにゃ~!! だめぇ、みみ、かまないで……ああっ、あっ……」


 死ぬことはなかった。

 でも結局、抱きつかれてしまった。

 それだけじゃない、大切なミミをお口で……はむはむされてしまった。

 もう、だめ、動けない。

 クライシスが満足するまで愛でられてしまった。


「あぁ……ぅ……っ……だめ……や……めて……かまないで……」


『いやいや、こまったもんじゃのう』

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