第54話 あなたはニンゲンをやめますか? その2
☆☆☆
ダンジョン名 みりあのいえ
媒介 ダンジョン創造の巻物
レベル 2
マスター みりあ
魔力 1000
家来 3
階層 1F~B2
評価 もっとがんばりましょう
☆☆☆
ここは、みりあのいえ。
もふもふが、侵入者(ダンジョン国家調査員)を倒したことで発電機をつけることができた。ミリアは、これから快適なダンジョンライフを満喫できる。そう思っていた。だが、ダンジョン国家調査員にこのダンジョンの変わり果てた現状が知られた事で、冒険者が次々とこのダンジョンを調査しに現れだしたのだ。
さすがに家来3人ではきつい。
ダンジョンの管理はミリアの本。
金策はレオニード。
ダンジョンの守りに入るのはアカネギともふもふ。
ミリアは踊っているだけ。
実質、二人だけで守っているため余裕がなかった。
☆☆☆
どうやら「エレベータ」が起動しはじめたようだ。
魔力を消耗して、みりあのへやにエレベータを設置した。その扉の奥に入ると部屋があって出っ張ったスイッチを押す事で部屋が上下に移動を始める。入口からミリアの部屋まで直通で行けるようになったのだ。
「うん?」
『エレベータが起動しておるのう。レオニードが帰ってきたようじゃ』
「そと、でたい」
「忙しくて今は無理じゃ」
ミリアはHPが1のため、ダンジョンを歩き続けると疲労がたまり死んでしまう。またダンジョンが冒険者のせいで騒がしくなった。それらの事もありエレベータを取りつけたのだが、ミリア一人では結局、外に出れない。誰かが同伴しないとダメだった。
『ついたようじゃ』
ミリアの部屋にエレベータが停止した。
すると、扉から出てきたのはナタリーとレオニードだった。
「うん、ナタ?」
「ガウッ?」
「ネギィ?」
『どうして、ナタリーを連れてきたんじゃ?』
皆、ナタリーをじっと見ている。
なぜか、ナタリーの顔が真っ青になっている。
「…………」
レオニードを見てナタリーは身を震わせている。
「がうっ!」
「ひゃああああ!!」
ナタリーは、レオニードともふもふを見ては、ぶるぶる震えているようだ。
「どした?」
「み、みりあ、さん、グリーンドラゴンとフェンリルがいるんですよ。怖くないんですか!!」
「金に困ってるらしくてな。衣食住つきでこいつを飼うことに決めた。我には仕事が立て込んでいる。だからここまで飛んで、連れてきてやった」
「そか」
『いや、かわいそうじゃろう。さすがに怯えておるではないか』
「あ、あのキャンセルできませんか?」
「ダメだな、この契約書にサインしたからには、ただでは帰さんぞ」
ナタリーがサインした契約書をレオニードはミリアに手渡した。
すると――
“登録しました。ナタリーはミリア様の下僕となりました”
「うん?」
『それにサインしてもうたか、まずいぞい』
「本から声が聞こえるんですけど?」
『ナタリーよ、わしはミリアの本じゃ。心して聞くのじゃぞ。お主は神の、猫神の下僕となったのじゃ』
「はぁ~?」
「このアホ猫が行きたい、行きたい、外行きたいと、毎日うるさくてな。我の仕事の邪魔になる。いい子守が見つかった。これで仕事に専念できる。大きな取引があって我は忙しい。孤児院への寄付、衣食住の世話をするだけの微々たる金で、こいつは死ぬ気で働いてくれるらしいからな。安い命だ。我のために命つきるまで、いや、違うな、永遠に働けよ。では我は街へ戻る」
「そ、それはたとえで、ちょっと、待ってくださいよ」
ナタリーを置き去りにして、アスレイの街に戻るレオニードだった。
死ぬ気で頑張って働きます、と言ったナタリーだったのだが、本当に死ぬまで、いや、神の眷属となったナタリーは死ぬことさえできない、どうやら、言葉一つで永遠に働かされる運命になったようだ。人間の冗談がドラゴンには通じなかった。
ナタリーは、給金が高額で衣食住つきもあって誘惑に負けてしまったのだ。ミリアの護衛だけだと聞いて、こんな大事になるとは思わなかった。
それとは別になるが、商人という職業にハマってしまったレオニードはいつの間にか商人ランクAを取ってしまい、実業家ドラゴンが誕生してしまったのだ。
『すまんのう、アカネギといい、おぬしといい、今の現状を理解するために、おぬしにも自分のステータスを見れるようにしてやろう、ほれ、見てみるがいい』
「な、なんですか、これは?」
【名前】ナタリー
【職業】猫神の下僕
【種族】天使族
【ステータス】ケッコウ、ツヨイ
【情報】
猫神様の下僕となってしまったナタリー、
戦闘能力が通常の10倍以上になってしまった。
神の祝福を受け、人間族から天使族に進化した。
猫神様が消滅するまで死ぬことさえできない。何度でも蘇る。
☆☆☆
「これって冗談ですよね」
『本気と書いてマジじゃ』
天国にいるお父さん、お母さん……、死んではいませんが、私は天使になってしまったようです。
……悪いドラゴンに騙されて。
って嘘ですよね?
「にゃん、にゃん、にゃん~!」




