第51話 ギルド試験 その6
「もぐもぐ」
条件付きではあるが、ギルドカードの発行が認められたミリアは、冒険者ギルドの待合室で一人、待たされていた。
「もぐもぐ、ごっくん」
ミリアはソファに座りながら、イワシ缶をもぐもぐしていた。これは、待合室の戸棚の奥に隠されていたものだ。
『また、なくなってやがる、あいつだな。妙に勘がききやがる、普段はアホなくせに。はぁ~、だが、ここなら大丈夫だろう』
もちろん、大丈夫ではなかった。猫の勘というものだろうか。缶詰を見つけては、ミリアはすぐさま食べていた。
デービットとエレノアはまだ現れない。
「こいつには特別な手続きが必要だ」と言ってデービットはギルド本部がある街へと向かった。かわりにエレノアが、ギルドカードの手続きをしてくれるようだ。
時間がゆっくりと過ぎていく。
☆☆☆
「ごみ、すてる、おく、かぶせる、さくせん、しゅうりょう」
ミリアはコンバット気分になって、偽装工作を行った。もちろん、デービットに盗み食いしたことをばれないようにするためだ。
「うむ、これで、だいじょうぶ」
しばらくして、エレノアが戻って来た。
「みこ!?」
「ど、どうしたの!?」
エレノアの服装が女性用スーツから巫女服に変わっていた。
彼女は白の小袖に赤の袴を着用していた。長い黒髪をおろし、後ろに一本で束ねていた。彼女は東方の国、神楽出身だった。
「用紙の記入はこれで大丈夫ですね。ええっ、30分以上もかけましたし、それと職業はどうしましょう。神託による職業と無しのどちらかを選択できますが、神託による職業を選択すると状況に応じて変化しますので取り消すことができなくなります。そのかわりですが、特殊な職業とステータスボーナスが大幅に付与されますが、どうしましょうか?」
「うむ、まかせた」
「そ、そうですか、なら神託にいたしましょう。では、水晶の中を覗き込んでください」
「うむ」
ミリアが水晶を覗き込むと、激しい光が周囲を包み込んだ。
「めがああぁ!!」
まぶしい。
猫は目に光を当てると以下省略――
「め、いたい」
「すごいです。これほどまでの光が水晶から放たれるなんて、これは期待できるかもしれません。では、あなたの職業をお伝えいたします」
「むむっ!!」
自分の職業が神によって決められるらしい。いつも、ぼーとしたミリアも緊張しているようだ。今にも踊りそうだ。
「えっ! いや、これは、まさか!?」
エレノアがあたふたしている。困惑の色を隠せないようだ。
「うそ、でも、確かめてみるしか……」
エレノアの手がミリアの頭へ。ミリアは、つぶらな瞳でじっとエレノアを見ていた。エレノアは、ミリアの帽子に手をかけて……とってしまった。ぴょこんっと、ミリアのネコミミが現れた。
「…………」
「うん!?」
「ミリアさん、あなた様は、もしかして……」
「むむっ!?」
エレノアが真剣な表情をしている。
まさか、戸棚に置いてあったイワシ缶を食べたのがばれてしまったのだろうか。
ゴミ箱の奥につっこんで、さらにゴミで隠して見えないように隠したはずなのに。
このままでは、まずい、おこられる。
「こまった、どうしよう」と、ナイ頭で考えるミリアだった。




